発情期アルファ貴族にオメガの導きをどうぞ

小池 月

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Ⅶ ガリイ国の奴隷<Sideライ>

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 パンっと銃を打つと「ギャウ!」と鳴き声が聞こえた。倒れた一匹を見て、周囲の犬ハイエナが下がった。

 追い打ちをかけるようにもう一匹を撃つと、犬ハイエナたちは諦めたかのように走り去って行った。
 ライは緊張から解放されて、その場にへたり込んだ。

「良かった。死ななかった。ウルイを守れた」

 過度の緊張から解放されて目に涙が滲んだ。しかし感傷に浸っている場合ではない。すぐに意識を切り替える。

「ウルイ! ウルイの怪我は!」
 すぐに後ろを振り返りウルイを確認する。腕の拘束を解いた。

 闇の中に死んだように白い顔のウルイが横たえている。ウルイに触れると体温が低くなっている。触れて分かる。小刻みに震えている。

 それもそのはずだ。アドレアの砂漠は夜間十度以下になる。ウルイは部屋着のままだ。今まで動いていたライとは違う。

 すぐにライの上着をかける。ウルイの下肢の噛み跡はじわじわ出血している。

 ライは自分のシャツの裾を裂いてウルイの傷に巻いた。ついでに自分の傷にも巻く。

 ライは身体を鍛えていて良かったと思った。犬ハイエナの牙や爪は筋肉層で止まっていて大怪我には至っていない。筋肉の鎧がライを守ってくれた。

 それでも出血したままでは、また肉食獣に狙われる。


 ライは静かになった暗闇の砂漠を眺めた。
 犬ハイエナは何とか倒すことが出来たが、このままここに居るのはまずい。犬ハイエナの死体を嗅ぎつけて獣たちが集まるだろう。この場から早く離れなければいけない。

 それに日が昇ったら暑さで身動きが取れなくなる。それこそ野垂れ死ぬ。

 しかし、浮遊移動車まで行けば何とかなる。浮遊移動車を動かせば車内温度はコントロールが効き、外敵に襲われることは無い。生きる望みは浮遊移動車にたどり着く事だ。

 ライは疲労で朦朧としたが、ここで倒れるわけにはいかずウルイを背負い砂漠を歩いた。がむしゃらに走って来たから方向など覚えていなかった。

 遠くに光が見えるほうへ向かった。きっとオアシスの光だと思えたから。その方向に浮遊移動車があるはずだ。


 砂漠の夜は寒い。戦いで汗をかいた後で一気にライの体温が奪われた。徐々に一歩を出すのがやっとになった。息が苦しかった。

 歩き慣れている砂漠の砂が重く感じた。膝がガクガクして感覚がおかしかった。動かなくてはいけないのに動けなくて、そうなると噛まれた傷の痛みが増幅してライを苦しめた。

 前のめりに膝をついて砂地に座り込んだ。ライはもう、立てなかった。背負っていたウルイを降ろして腕の中に抱きしめた。

 ウルイの浅い呼吸を肌で感じて目の奥が熱くなった。悔しくてウルイを抱きかかえて泣いた。守れなくて涙が溢れた。

「ウルイ、ごめん。ウルイ、俺を許して。俺の運命に巻き込んで、苦しめて、ごめん」

 ウルイへの謝罪が砂漠に消えていった。目の前がかすんで、冷たい砂に倒れたのが自分で分かった。

 神様に『ウルイを助けてください』と祈り続けた。

 気を失う前に口から出た言葉は「ウルイ、愛している」だった。
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