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Ⅶ ガリイ国の奴隷<Sideライ>
⑪
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夜二十三時前にライはトイレに行くために床を出た。
寝る前に腹の調子が悪いと周囲にアピールしておいた。これで戻りが遅くても怪しまれないだろう。
それに戻らなければ破棄処分になったと思ってもらえる。夕食時に一つ残して隠し持っていたパンを持ち外トイレに急いだ。
トイレに着くと偶然にも誰もトイレに居なかった。個室に入ってウルイが来るのを待つ。数分でカタンと人が来る気配がした。すぐに個室から出ると、顔色の悪いウルイが居た。
「ウルイ」
直ぐに駆け寄り支えた。身体に触れると夕食時より熱が上っているのが分かる。
「しんどいな」
ウルイは答えずにライを見てニコリと微笑んだ。
「正直に言うと辛い、かも。痛いし、フラフラする。もし、ワガママ言っても良いなら、僕はライと帰りたい。連れて行って」
食事時とは違って、弱弱しいウルイの言葉に泣きそうになる。
「もちろんだ。あとは俺に任せていい」
誰もいないことを確認してウルイを背負い、闇を駆け抜けた。ライの速度なら馬小屋付近まで一瞬だ。監視が居ないところは暗いのが助かる。
すぐに畑で野菜を数個とる。これは馬の餌としてだけでなく、自分たちの食料にもなる。
アルファの威圧を出しながら馬小屋に入った。『騒ぐな』と威圧で馬たちを支配した。馬たちが一斉に下を向いて尻尾を垂れた。
馬小屋には監視用の飲水袋が保管してある。それに水を入れて持ち出す。そして、左耳の切れた馬を連れ出した。馬たちが騒がなくて安堵した。
「さぁ、俺と行こう」
声をかければ馬が小さく『ブルル』と鼻を鳴らす。
ライはウルイとともに馬に乗り、闇に溶け込んだ。アドレアに向けて一気に駆けた。幸いにも追手が来る様子はなく、難なく国境を超えることが出来た。
アドレアの砂漠地に入ると涙が零れた。
「アドレアだ! 戻った!」
喜びの声を上げてウルイを見たが、腕の中のウルイは完全に意識を失っていた。
ライは馬を止めることなく駆けた。ガリイ国の人さらいが近くに居るかもしれない。追手が来るかもしれない。少しでもガリイ国から離れないといけない。
星と月の位置から方角を定めて馬を走らせた。
(どうか野生動物に会いませんように)
そう願った。正直に言うと、武器がなくては犬ハイエナに負ける。他の大型肉食獣が現れたら勝機はない。
(今、襲われたらウルイを守れない)
そんな恐怖があった。気持ちが焦っていた。
しかし、一時間ほど駆けると馬のペースが落ちた。馬だって日中働いていたのだ。疲れもあるだろう。
今日が風のない夜で助かった。砂の上で一休みできそうだ。
「どうどう。疲れたな。ここまで一気に駆けてくれてありがとう。お前は良い子だ」
馬から降りて、まずは頑張ってくれた馬に水分と人参を与えた。馬はライに鼻をすり寄せてから飲食をした。愛らしい馬の仕草に緊張が和らぐ。
「ウルイ」
馬の綱を握りながら、腕の中のウルイに声をかけた。声掛けに眉を顰めてウルイが薄く目を開けてくれた。だが、焦点が合わない。
「もうアドレアだ。ガリイ国から脱出できた。だけど、ここからオアシスまで少しかかる。水を飲んで」
ライは自分の口に水を含み、ウルイの口に注ぎ込んだ。柔らかいウルイの唇を感じた。
ウルイが水を飲み下す動きを、唇を合わせたまま見守った。口腔内の水が無くなり薄く開いた唇をライの舌でこじ開けて侵入した。我慢できなかった。
「んぅ」と小さく漏れる声を舐めとるように夢中でウルイを貪った。ウルイは朦朧としていた。
熱く漏れる吐息を全てライが受け止めた。久しぶりにウルイに触れて、幸福感で胸がいっぱいだった。
ずっとウルイを味わいたいが、この場で時間をかけてはいけない。惜しみながら唇を離し、二度三度とウルイに水を与えた。
そしてライ自身も数口飲水した。ふと馬を見ると、黒い瞳をライたちに向けていた。先ほどのキスをこのつぶらな瞳が凝視していたのかと思うと、少し笑えた。
「お前、ちょっとは遠慮しろよ」
声をかければ『ブルル』と鼻を鳴らして応える馬に元気をもらえた。肝の座っている馬だ。
「さ、出来るだけ早く移動したい。もう行こうか」
腕の中のウルイを抱きなおした時、急に馬がビクリと身体を震わせた。耳をピンと立て、一方向を見つめ、鼻息を荒くする。
「なんだ?」
馬の視線を辿ると、砂の中に動物の黒い影が見えた。直ぐに黒い影が増える。
その光景に心臓が嫌な音を立てた。ライが恐れていたことが起きようとしている。
ウルイを抱き締める腕に力を込めた。
寝る前に腹の調子が悪いと周囲にアピールしておいた。これで戻りが遅くても怪しまれないだろう。
それに戻らなければ破棄処分になったと思ってもらえる。夕食時に一つ残して隠し持っていたパンを持ち外トイレに急いだ。
トイレに着くと偶然にも誰もトイレに居なかった。個室に入ってウルイが来るのを待つ。数分でカタンと人が来る気配がした。すぐに個室から出ると、顔色の悪いウルイが居た。
「ウルイ」
直ぐに駆け寄り支えた。身体に触れると夕食時より熱が上っているのが分かる。
「しんどいな」
ウルイは答えずにライを見てニコリと微笑んだ。
「正直に言うと辛い、かも。痛いし、フラフラする。もし、ワガママ言っても良いなら、僕はライと帰りたい。連れて行って」
食事時とは違って、弱弱しいウルイの言葉に泣きそうになる。
「もちろんだ。あとは俺に任せていい」
誰もいないことを確認してウルイを背負い、闇を駆け抜けた。ライの速度なら馬小屋付近まで一瞬だ。監視が居ないところは暗いのが助かる。
すぐに畑で野菜を数個とる。これは馬の餌としてだけでなく、自分たちの食料にもなる。
アルファの威圧を出しながら馬小屋に入った。『騒ぐな』と威圧で馬たちを支配した。馬たちが一斉に下を向いて尻尾を垂れた。
馬小屋には監視用の飲水袋が保管してある。それに水を入れて持ち出す。そして、左耳の切れた馬を連れ出した。馬たちが騒がなくて安堵した。
「さぁ、俺と行こう」
声をかければ馬が小さく『ブルル』と鼻を鳴らす。
ライはウルイとともに馬に乗り、闇に溶け込んだ。アドレアに向けて一気に駆けた。幸いにも追手が来る様子はなく、難なく国境を超えることが出来た。
アドレアの砂漠地に入ると涙が零れた。
「アドレアだ! 戻った!」
喜びの声を上げてウルイを見たが、腕の中のウルイは完全に意識を失っていた。
ライは馬を止めることなく駆けた。ガリイ国の人さらいが近くに居るかもしれない。追手が来るかもしれない。少しでもガリイ国から離れないといけない。
星と月の位置から方角を定めて馬を走らせた。
(どうか野生動物に会いませんように)
そう願った。正直に言うと、武器がなくては犬ハイエナに負ける。他の大型肉食獣が現れたら勝機はない。
(今、襲われたらウルイを守れない)
そんな恐怖があった。気持ちが焦っていた。
しかし、一時間ほど駆けると馬のペースが落ちた。馬だって日中働いていたのだ。疲れもあるだろう。
今日が風のない夜で助かった。砂の上で一休みできそうだ。
「どうどう。疲れたな。ここまで一気に駆けてくれてありがとう。お前は良い子だ」
馬から降りて、まずは頑張ってくれた馬に水分と人参を与えた。馬はライに鼻をすり寄せてから飲食をした。愛らしい馬の仕草に緊張が和らぐ。
「ウルイ」
馬の綱を握りながら、腕の中のウルイに声をかけた。声掛けに眉を顰めてウルイが薄く目を開けてくれた。だが、焦点が合わない。
「もうアドレアだ。ガリイ国から脱出できた。だけど、ここからオアシスまで少しかかる。水を飲んで」
ライは自分の口に水を含み、ウルイの口に注ぎ込んだ。柔らかいウルイの唇を感じた。
ウルイが水を飲み下す動きを、唇を合わせたまま見守った。口腔内の水が無くなり薄く開いた唇をライの舌でこじ開けて侵入した。我慢できなかった。
「んぅ」と小さく漏れる声を舐めとるように夢中でウルイを貪った。ウルイは朦朧としていた。
熱く漏れる吐息を全てライが受け止めた。久しぶりにウルイに触れて、幸福感で胸がいっぱいだった。
ずっとウルイを味わいたいが、この場で時間をかけてはいけない。惜しみながら唇を離し、二度三度とウルイに水を与えた。
そしてライ自身も数口飲水した。ふと馬を見ると、黒い瞳をライたちに向けていた。先ほどのキスをこのつぶらな瞳が凝視していたのかと思うと、少し笑えた。
「お前、ちょっとは遠慮しろよ」
声をかければ『ブルル』と鼻を鳴らして応える馬に元気をもらえた。肝の座っている馬だ。
「さ、出来るだけ早く移動したい。もう行こうか」
腕の中のウルイを抱きなおした時、急に馬がビクリと身体を震わせた。耳をピンと立て、一方向を見つめ、鼻息を荒くする。
「なんだ?」
馬の視線を辿ると、砂の中に動物の黒い影が見えた。直ぐに黒い影が増える。
その光景に心臓が嫌な音を立てた。ライが恐れていたことが起きようとしている。
ウルイを抱き締める腕に力を込めた。
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