55 / 80
Ⅶ ガリイ国の奴隷<Sideライ>
⑫
しおりを挟む
暗闇に動く影は徐々に距離を詰めてきているように思う。遠目に見る限りでは数頭だ。だが、体格が犬ハイエナより大きい。馬に乗って逃げ切れるのだろうか。
どうしていいのか分からず腕が震えた。考えても生き延びる策が思い浮かばない。ライの額に汗が流れた。
「ブルル」
急に馬が鼻を鳴らした。馬を見れば、つぶらな瞳が一瞬ライを見た。そのまま、鼻をライの身体に押し付ける。まるで「行け」と言う様な仕草だ。
「お前……」
馬の考えが分かってライは涙が流れた。その時、馬の気持が流れ込んできたような気がした。
『外を自由に走りたかった。願いが叶ったから、いいよ』
馬の黒い瞳が輝いていた。
悲しみと悔しさで止まらない涙を拭えないまま、ライは数歩ずつ距離をとった。
馬は徐々に離れるライを見ることは無く、真っすぐに獣と向き合っていた。
「ヒヒ~~ン」
急に鳴き声を上げ、馬が勢いよく走り出した。
その瞬間を逃さず、ライは馬と反対方向に全力で駆けた。
後ろに獣たちの鳴き声と足音が聞こえていた。けれどライは振り返ることは無く走った。
(ごめん。アドレアでもっと幸せな馬人生にしてあげたかった。お前が居なければガリイ国から出られなかった。ごめん、ごめん)
溢れる思いのままに泣いて走った。遠くに馬の嘶きが聞こえた。ライは走りながら祈りを捧げた。
(どうか、あの馬に幸せな来世を)
静かになった砂漠にライの願いが吸い込まれるようだった。
そのまま一時間も走っていると流石に足が動かなくなってきた。アルファにも限界がある。
それでも今度は倒れるものかと歩みを進めた。腕の中のウルイを守り切る。あの馬の雄姿に恥じてはならない。夜の獣はいつ襲ってくるのか分からない。絶対に生き延びる。その思いで必死に歩いた。
一歩一歩が重くなってきたとき、遠くにキラリと何かが見えた。光が速いスピードで移動している。あれは、浮遊移動車の灯だ。それに気が付いて心が歓喜で沸き立った。オアシスが近いのだ。とうとう、帰って来られたのだ。
「ウルイ、聞こえるか? 浮遊移動車だ。もう、大丈夫だ!」
嬉しくて気絶しているウルイに必死に語りかけた。語りかけながら光の方に進むと、偶然にも浮遊移動車が一台こちらに向かってくる。ライは逸る気持ちを抑えきれず叫びを上げた。
「お~~い! 助けてくれ! こっちだ!」
声を上げながら浮遊移動車に向かって足を進めた。
(こっちだ! 気が付いてくれ!)
そのライの願いが通じたのか、浮遊移動車がライの傍に停車した。それを見て、喜びでその場に座り込んだ。
もう、動けなかった。夢じゃないよな、と何度も思った。
「ライ様! ライ伯爵公ですか⁉」
ドアが開いた瞬間の声を聞いて、安堵にライの意識が遠のいた。
「ライ様! ウルイ様!」
どこかで聞いた声だ。誰だったかな、と考えて一人の人物が思い浮かんだ。これは、オアシスの副長の声だ。
懐かしくて頬が緩んだ。そこでライの意識が完全に途切れた。
どうしていいのか分からず腕が震えた。考えても生き延びる策が思い浮かばない。ライの額に汗が流れた。
「ブルル」
急に馬が鼻を鳴らした。馬を見れば、つぶらな瞳が一瞬ライを見た。そのまま、鼻をライの身体に押し付ける。まるで「行け」と言う様な仕草だ。
「お前……」
馬の考えが分かってライは涙が流れた。その時、馬の気持が流れ込んできたような気がした。
『外を自由に走りたかった。願いが叶ったから、いいよ』
馬の黒い瞳が輝いていた。
悲しみと悔しさで止まらない涙を拭えないまま、ライは数歩ずつ距離をとった。
馬は徐々に離れるライを見ることは無く、真っすぐに獣と向き合っていた。
「ヒヒ~~ン」
急に鳴き声を上げ、馬が勢いよく走り出した。
その瞬間を逃さず、ライは馬と反対方向に全力で駆けた。
後ろに獣たちの鳴き声と足音が聞こえていた。けれどライは振り返ることは無く走った。
(ごめん。アドレアでもっと幸せな馬人生にしてあげたかった。お前が居なければガリイ国から出られなかった。ごめん、ごめん)
溢れる思いのままに泣いて走った。遠くに馬の嘶きが聞こえた。ライは走りながら祈りを捧げた。
(どうか、あの馬に幸せな来世を)
静かになった砂漠にライの願いが吸い込まれるようだった。
そのまま一時間も走っていると流石に足が動かなくなってきた。アルファにも限界がある。
それでも今度は倒れるものかと歩みを進めた。腕の中のウルイを守り切る。あの馬の雄姿に恥じてはならない。夜の獣はいつ襲ってくるのか分からない。絶対に生き延びる。その思いで必死に歩いた。
一歩一歩が重くなってきたとき、遠くにキラリと何かが見えた。光が速いスピードで移動している。あれは、浮遊移動車の灯だ。それに気が付いて心が歓喜で沸き立った。オアシスが近いのだ。とうとう、帰って来られたのだ。
「ウルイ、聞こえるか? 浮遊移動車だ。もう、大丈夫だ!」
嬉しくて気絶しているウルイに必死に語りかけた。語りかけながら光の方に進むと、偶然にも浮遊移動車が一台こちらに向かってくる。ライは逸る気持ちを抑えきれず叫びを上げた。
「お~~い! 助けてくれ! こっちだ!」
声を上げながら浮遊移動車に向かって足を進めた。
(こっちだ! 気が付いてくれ!)
そのライの願いが通じたのか、浮遊移動車がライの傍に停車した。それを見て、喜びでその場に座り込んだ。
もう、動けなかった。夢じゃないよな、と何度も思った。
「ライ様! ライ伯爵公ですか⁉」
ドアが開いた瞬間の声を聞いて、安堵にライの意識が遠のいた。
「ライ様! ウルイ様!」
どこかで聞いた声だ。誰だったかな、と考えて一人の人物が思い浮かんだ。これは、オアシスの副長の声だ。
懐かしくて頬が緩んだ。そこでライの意識が完全に途切れた。
71
あなたにおすすめの小説
運命を知らないアルファ
riiko
BL
オメガ嫌いの西条司は女性アルファとしか付き合わない、そんな中やたらと気になるオメガを見つけた。
運命やフェロモンという不確かなモノではなく、初めて本気で惹かれた唯一のオメガにはとんでもない秘密があった!?
オメガ嫌い御曹司α×ベータとして育った平凡Ω
オメガ主人公がお好きな方は『運命を知っているオメガ』をお読みくださいませ。こちらはその物語のアルファ側のお話です。このお話だけでも物語は完結しますが、両方読まれると答え合わせが楽しめます。
性描写が入るシーンは
※マークをタイトルにつけます、ご注意くださいませ。
コメント欄はそのまま載せておりますので、ネタバレ大丈夫な方のみご覧くださいませ。
物語、お楽しみいただけたら幸いです。
大嫌いなアルファと結婚しまして
リミル
BL
面倒見のいい隠れSなα×アルファから転化したΩ
久世優生と神崎基城はアルファの幼馴染みで、互いのスペックを競い合うライバル同士でもあった。
パーティーの最中、基城は原因不明の体調不良に襲われ、第二性がアルファからオメガに転化したと告げられる。
オメガになったことで、優生に馬鹿にされるかと思えば、何故かプロポーズを申し込まれてしまい──!?
僕の幸せは
春夏
BL
【完結しました】
【エールいただきました。ありがとうございます】
【たくさんの“いいね”ありがとうございます】
【たくさんの方々に読んでいただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます!】
恋人に捨てられた悠の心情。
話は別れから始まります。全編が悠の視点です。
雫
ゆい
BL
涙が落ちる。
涙は彼に届くことはない。
彼を想うことは、これでやめよう。
何をどうしても、彼の気持ちは僕に向くことはない。
僕は、その場から音を立てずに立ち去った。
僕はアシェル=オルスト。
侯爵家の嫡男として生まれ、10歳の時にエドガー=ハルミトンと婚約した。
彼には、他に愛する人がいた。
世界観は、【夜空と暁と】と同じです。
アルサス達がでます。
【夜空と暁と】を知らなくても、これだけで読めます。
2025.4.28 ムーンライトノベルに投稿しました。
【完結済】極上アルファを嵌めた俺の話
降魔 鬼灯
BL
ピアニスト志望の悠理は子供の頃、仲の良かったアルファの東郷司にコンクールで敗北した。
両親を早くに亡くしその借金の返済が迫っている悠理にとって未成年最後のこのコンクールの賞金を得る事がラストチャンスだった。
しかし、司に敗北した悠理ははオメガ専用の娼館にいくより他なくなってしまう。
コンサート入賞者を招いたパーティーで司に想い人がいることを知った悠理は地味な自分がオメガだとバレていない事を利用して司を嵌めて慰謝料を奪おうと計画するが……。
【完結済】「理想の恋人 〜タイムリープしたので、全財産貢いだダメ猫と別れます
かすがみずほ@理想の結婚二巻発売中
BL
30歳の警察官、オメガの貴弘(たかひろ
)は、猫獣人の不実な恋人・アルファの猫井司(ねこいつかさ)に裏切られたショックで家出をした矢先、埼玉山中の交通事故で事故死してしまう。
ところが、気付けば猫井と出会う前に時間が戻っていた。
今度の人生では猫井に振り回されるのをやめようと決心するが……。
本編「理想の結婚 俺、犬とお見合いします」のスピンオフです。
全く話が繋がっていないので、単体で問題なく読めます。
(本編のコミカライズにつきましては、日頃より有難うございます)
【完結】完璧アルファな推し本人に、推し語りするハメになったオレの顛末
竜也りく
BL
物腰柔らか、王子様のように麗しい顔、細身ながら鍛えられた身体、しかし誰にも靡かないアルファの中のアルファ。
巷のお嬢さん方を骨抜きにしているヴァッサレア公爵家の次男アルロード様にオレもまたメロメロだった。
時に男友達に、時にお嬢さん方に混ざって、アルロード様の素晴らしさを存分に語っていたら、なんとある日ご本人に聞かれてしまった。
しかも「私はそういう人の心の機微が分からなくて困っているんだ。これからも君の話を聞かせて欲しい」と頼まれる始末。
どうやら自分の事を言われているとはこれっぽっちも思っていないらしい。
そんなこんなで推し本人に熱い推し語りをする羽目になって半年、しかしオレも末端とはいえど貴族の一員。そろそろ結婚、という話もでるわけで見合いをするんだと話のついでに言ったところ……
★『小説家になろう』さんでも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる