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Ⅷ 変わるべきは……<Sideライ>
⑦
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病院と同じ一番街に建つウルイの家族邸宅は歩いて数分だった。門の前には警備兵が付いている。ライたちを見ると警備兵が敬礼をして門を開けた。
門の前でウルイの足が止まった。
「ウルイ、大丈夫だよ。俺がいるから、ね」
「うん。ちょっと、会うのが怖くなった。けど、大丈夫」
深呼吸して一歩を踏み出すウルイの背をしっかり支えた。
「ウルイ! あぁ、アルファ様もいる! 聞いてくれ。無実の罪だ。オアシスの奴らも王都の奴らも分かっていない! 我らはオメガ様の家族だぞ! あいつらに誰が偉いのか知らしめてやろう!」
玄関を入るとウルイの父母が凄い剣幕で縋りついてきた。しかし、ライの前に居た護衛兵に阻まれる。
ライの家族の後ろには副長がいて、ライたちに丁寧にお辞儀をした。
「手を離せ! 我らはオメガ様であるウルイの家族だぞ!」
ウルイの父が行く手を阻んだ護衛兵に凄んでいる。この状況でも相変わらずなウルイの家族に頭が痛くなる。
少し懲りているのかと思ったが見当違いのようだ。ウルイがそっとライに寄りかかる。震えるウルイから不安が伝わって来る。
(頑張れ)
そんな気持ちを込めてウルイを支える手に力を込めた。
「ウルイのご家族、出迎えご苦労。本日は話をするために来ている。室内に案内を」
「はい、はい! 今すぐに」
平伏すようにウルイの父が反応する。
失踪した息子が帰って来たのに、ウルイの心配をしない彼らに憎しみに近い様な感情が沸き上がる。
この瞬間にライの心は決まった。彼らには相応の処罰が必要だ。
客間に通されて邸内の静かさに気が付く。
「使用人はどうしました?」
以前はいた使用人たちが見当たらない。控えているのは副長だけだ。
「皆、来なくなりました。アルファ伯爵様。どうかオアシスの者どもに罰を与えてください。貴族となったウルイの父に逆らうのです。我らは邸に閉じ込められているのです。こんな横暴、許されることではありません!」
捲し立てるように話ながら、この場で一番上位であるライより先にウルイの父が着座した。
明らかな無礼行為だ。ライの周囲の護衛やサードが怪訝な顔をする。
ウルイを見れば、恥ずかしそうに下を向いている。
ライが着座すると、ウルイが着座する。それに続いてサードたちは壁際に待機の姿勢をとった。
「アルファ伯爵様、我らをお助けください」
懇願するウルイの父に何から伝えるべきか考えていると、ウルイが話し出した。
「父さんは、どうしてオアシスの人や王都から来た人を罰してほしいって思うのかな」
「そりゃ、当然だ! 我らをバカにしたのだ! 奴らは我々をここに閉じ込めた。暴力と同じだ!」
机でも叩きそうな剣幕だ。けれどウルイは静かにそれを見ていた。
「父さんは、自分が悪かったこととか思い当たらない?」
「悪いとかは関係ない! 我々に逆らうことがおかしいだろう! 我らをオアシスに入れずに苦しい思いをさせた奴らだぞ」
ウルイの言葉を遮るようなウルイの父の発言だった。ウルイは深呼吸をしてから言葉を発した。
「オアシスに入れなかったのは、オアシスに入ることを拒否していた父さんのせいだ。オアシスの人たちのせいじゃない」
「な、なんだと!」
「いつも僕は思っていた。父さんは先祖からの暮らしを守るって言いながら、家族を守ろうとしなかった。母さんも僕も働き出ているのに、父さんは小さな畑を耕して自己満足していた。小さな畑の野菜じゃ生きていけないのは分かっていたのに。父さんは嫌な事から逃げて、見ない振りをしていたんだ」
「ウルイ! お前は親に向かって何てことを言うんだ!」
顔を真っ赤にしたウルイの父が怒りのままに席を立とうとする。
しかし、壁際に待機していた護衛がすぐさまライとウルイの周囲に立つ。それを見てウルイの父が怯んだ。
張り詰めた空気になった。
門の前でウルイの足が止まった。
「ウルイ、大丈夫だよ。俺がいるから、ね」
「うん。ちょっと、会うのが怖くなった。けど、大丈夫」
深呼吸して一歩を踏み出すウルイの背をしっかり支えた。
「ウルイ! あぁ、アルファ様もいる! 聞いてくれ。無実の罪だ。オアシスの奴らも王都の奴らも分かっていない! 我らはオメガ様の家族だぞ! あいつらに誰が偉いのか知らしめてやろう!」
玄関を入るとウルイの父母が凄い剣幕で縋りついてきた。しかし、ライの前に居た護衛兵に阻まれる。
ライの家族の後ろには副長がいて、ライたちに丁寧にお辞儀をした。
「手を離せ! 我らはオメガ様であるウルイの家族だぞ!」
ウルイの父が行く手を阻んだ護衛兵に凄んでいる。この状況でも相変わらずなウルイの家族に頭が痛くなる。
少し懲りているのかと思ったが見当違いのようだ。ウルイがそっとライに寄りかかる。震えるウルイから不安が伝わって来る。
(頑張れ)
そんな気持ちを込めてウルイを支える手に力を込めた。
「ウルイのご家族、出迎えご苦労。本日は話をするために来ている。室内に案内を」
「はい、はい! 今すぐに」
平伏すようにウルイの父が反応する。
失踪した息子が帰って来たのに、ウルイの心配をしない彼らに憎しみに近い様な感情が沸き上がる。
この瞬間にライの心は決まった。彼らには相応の処罰が必要だ。
客間に通されて邸内の静かさに気が付く。
「使用人はどうしました?」
以前はいた使用人たちが見当たらない。控えているのは副長だけだ。
「皆、来なくなりました。アルファ伯爵様。どうかオアシスの者どもに罰を与えてください。貴族となったウルイの父に逆らうのです。我らは邸に閉じ込められているのです。こんな横暴、許されることではありません!」
捲し立てるように話ながら、この場で一番上位であるライより先にウルイの父が着座した。
明らかな無礼行為だ。ライの周囲の護衛やサードが怪訝な顔をする。
ウルイを見れば、恥ずかしそうに下を向いている。
ライが着座すると、ウルイが着座する。それに続いてサードたちは壁際に待機の姿勢をとった。
「アルファ伯爵様、我らをお助けください」
懇願するウルイの父に何から伝えるべきか考えていると、ウルイが話し出した。
「父さんは、どうしてオアシスの人や王都から来た人を罰してほしいって思うのかな」
「そりゃ、当然だ! 我らをバカにしたのだ! 奴らは我々をここに閉じ込めた。暴力と同じだ!」
机でも叩きそうな剣幕だ。けれどウルイは静かにそれを見ていた。
「父さんは、自分が悪かったこととか思い当たらない?」
「悪いとかは関係ない! 我々に逆らうことがおかしいだろう! 我らをオアシスに入れずに苦しい思いをさせた奴らだぞ」
ウルイの言葉を遮るようなウルイの父の発言だった。ウルイは深呼吸をしてから言葉を発した。
「オアシスに入れなかったのは、オアシスに入ることを拒否していた父さんのせいだ。オアシスの人たちのせいじゃない」
「な、なんだと!」
「いつも僕は思っていた。父さんは先祖からの暮らしを守るって言いながら、家族を守ろうとしなかった。母さんも僕も働き出ているのに、父さんは小さな畑を耕して自己満足していた。小さな畑の野菜じゃ生きていけないのは分かっていたのに。父さんは嫌な事から逃げて、見ない振りをしていたんだ」
「ウルイ! お前は親に向かって何てことを言うんだ!」
顔を真っ赤にしたウルイの父が怒りのままに席を立とうとする。
しかし、壁際に待機していた護衛がすぐさまライとウルイの周囲に立つ。それを見てウルイの父が怯んだ。
張り詰めた空気になった。
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