発情期アルファ貴族にオメガの導きをどうぞ

小池 月

文字の大きさ
62 / 80
Ⅷ 変わるべきは……<Sideライ>

しおりを挟む
 病院と同じ一番街に建つウルイの家族邸宅は歩いて数分だった。門の前には警備兵が付いている。ライたちを見ると警備兵が敬礼をして門を開けた。

 門の前でウルイの足が止まった。

「ウルイ、大丈夫だよ。俺がいるから、ね」
「うん。ちょっと、会うのが怖くなった。けど、大丈夫」

 深呼吸して一歩を踏み出すウルイの背をしっかり支えた。


「ウルイ! あぁ、アルファ様もいる! 聞いてくれ。無実の罪だ。オアシスの奴らも王都の奴らも分かっていない! 我らはオメガ様の家族だぞ! あいつらに誰が偉いのか知らしめてやろう!」

 玄関を入るとウルイの父母が凄い剣幕で縋りついてきた。しかし、ライの前に居た護衛兵に阻まれる。
 ライの家族の後ろには副長がいて、ライたちに丁寧にお辞儀をした。

「手を離せ! 我らはオメガ様であるウルイの家族だぞ!」

 ウルイの父が行く手を阻んだ護衛兵に凄んでいる。この状況でも相変わらずなウルイの家族に頭が痛くなる。

 少し懲りているのかと思ったが見当違いのようだ。ウルイがそっとライに寄りかかる。震えるウルイから不安が伝わって来る。

(頑張れ)
 そんな気持ちを込めてウルイを支える手に力を込めた。

「ウルイのご家族、出迎えご苦労。本日は話をするために来ている。室内に案内を」

「はい、はい! 今すぐに」
 平伏すようにウルイの父が反応する。

 失踪した息子が帰って来たのに、ウルイの心配をしない彼らに憎しみに近い様な感情が沸き上がる。
 この瞬間にライの心は決まった。彼らには相応の処罰が必要だ。

 客間に通されて邸内の静かさに気が付く。
「使用人はどうしました?」

 以前はいた使用人たちが見当たらない。控えているのは副長だけだ。

「皆、来なくなりました。アルファ伯爵様。どうかオアシスの者どもに罰を与えてください。貴族となったウルイの父に逆らうのです。我らは邸に閉じ込められているのです。こんな横暴、許されることではありません!」

 捲し立てるように話ながら、この場で一番上位であるライより先にウルイの父が着座した。

 明らかな無礼行為だ。ライの周囲の護衛やサードが怪訝な顔をする。

 ウルイを見れば、恥ずかしそうに下を向いている。
 ライが着座すると、ウルイが着座する。それに続いてサードたちは壁際に待機の姿勢をとった。

「アルファ伯爵様、我らをお助けください」
 懇願するウルイの父に何から伝えるべきか考えていると、ウルイが話し出した。

「父さんは、どうしてオアシスの人や王都から来た人を罰してほしいって思うのかな」

「そりゃ、当然だ! 我らをバカにしたのだ! 奴らは我々をここに閉じ込めた。暴力と同じだ!」

 机でも叩きそうな剣幕だ。けれどウルイは静かにそれを見ていた。

「父さんは、自分が悪かったこととか思い当たらない?」

「悪いとかは関係ない! 我々に逆らうことがおかしいだろう! 我らをオアシスに入れずに苦しい思いをさせた奴らだぞ」

 ウルイの言葉を遮るようなウルイの父の発言だった。ウルイは深呼吸をしてから言葉を発した。

「オアシスに入れなかったのは、オアシスに入ることを拒否していた父さんのせいだ。オアシスの人たちのせいじゃない」

「な、なんだと!」

「いつも僕は思っていた。父さんは先祖からの暮らしを守るって言いながら、家族を守ろうとしなかった。母さんも僕も働き出ているのに、父さんは小さな畑を耕して自己満足していた。小さな畑の野菜じゃ生きていけないのは分かっていたのに。父さんは嫌な事から逃げて、見ない振りをしていたんだ」

「ウルイ! お前は親に向かって何てことを言うんだ!」

 顔を真っ赤にしたウルイの父が怒りのままに席を立とうとする。

 しかし、壁際に待機していた護衛がすぐさまライとウルイの周囲に立つ。それを見てウルイの父が怯んだ。

 張り詰めた空気になった。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

運命を知らないアルファ

riiko
BL
オメガ嫌いの西条司は女性アルファとしか付き合わない、そんな中やたらと気になるオメガを見つけた。 運命やフェロモンという不確かなモノではなく、初めて本気で惹かれた唯一のオメガにはとんでもない秘密があった!? オメガ嫌い御曹司α×ベータとして育った平凡Ω オメガ主人公がお好きな方は『運命を知っているオメガ』をお読みくださいませ。こちらはその物語のアルファ側のお話です。このお話だけでも物語は完結しますが、両方読まれると答え合わせが楽しめます。 性描写が入るシーンは ※マークをタイトルにつけます、ご注意くださいませ。 コメント欄はそのまま載せておりますので、ネタバレ大丈夫な方のみご覧くださいませ。 物語、お楽しみいただけたら幸いです。

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……

大嫌いなアルファと結婚しまして

リミル
BL
面倒見のいい隠れSなα×アルファから転化したΩ 久世優生と神崎基城はアルファの幼馴染みで、互いのスペックを競い合うライバル同士でもあった。 パーティーの最中、基城は原因不明の体調不良に襲われ、第二性がアルファからオメガに転化したと告げられる。 オメガになったことで、優生に馬鹿にされるかと思えば、何故かプロポーズを申し込まれてしまい──!?

僕の幸せは

春夏
BL
【完結しました】 【エールいただきました。ありがとうございます】 【たくさんの“いいね”ありがとうございます】 【たくさんの方々に読んでいただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます!】 恋人に捨てられた悠の心情。 話は別れから始まります。全編が悠の視点です。

ゆい
BL
涙が落ちる。 涙は彼に届くことはない。 彼を想うことは、これでやめよう。 何をどうしても、彼の気持ちは僕に向くことはない。 僕は、その場から音を立てずに立ち去った。 僕はアシェル=オルスト。 侯爵家の嫡男として生まれ、10歳の時にエドガー=ハルミトンと婚約した。 彼には、他に愛する人がいた。 世界観は、【夜空と暁と】と同じです。 アルサス達がでます。 【夜空と暁と】を知らなくても、これだけで読めます。 2025.4.28 ムーンライトノベルに投稿しました。

【完結済】極上アルファを嵌めた俺の話

降魔 鬼灯
BL
 ピアニスト志望の悠理は子供の頃、仲の良かったアルファの東郷司にコンクールで敗北した。  両親を早くに亡くしその借金の返済が迫っている悠理にとって未成年最後のこのコンクールの賞金を得る事がラストチャンスだった。  しかし、司に敗北した悠理ははオメガ専用の娼館にいくより他なくなってしまう。  コンサート入賞者を招いたパーティーで司に想い人がいることを知った悠理は地味な自分がオメガだとバレていない事を利用して司を嵌めて慰謝料を奪おうと計画するが……。  

【完結済】「理想の恋人 〜タイムリープしたので、全財産貢いだダメ猫と別れます

かすがみずほ@理想の結婚二巻発売中
BL
30歳の警察官、オメガの貴弘(たかひろ )は、猫獣人の不実な恋人・アルファの猫井司(ねこいつかさ)に裏切られたショックで家出をした矢先、埼玉山中の交通事故で事故死してしまう。 ところが、気付けば猫井と出会う前に時間が戻っていた。 今度の人生では猫井に振り回されるのをやめようと決心するが……。 本編「理想の結婚 俺、犬とお見合いします」のスピンオフです。 全く話が繋がっていないので、単体で問題なく読めます。 (本編のコミカライズにつきましては、日頃より有難うございます)

今からレンタルアルファシステムを利用します

夜鳥すぱり
BL
大学2年の鳴水《なるみ》は、ずっと自分がオメガであることを隠して生きてきた。でも、年々つらくなる発情期にもう一人は耐えられない。恋愛対象は男性だし、男のアルファに会ってみたい。誰でも良いから、定期的に安全に話し相手をしてくれる人が欲しい。でもそんな都合のいい人いなくて、考えあぐねた結果たどり着いた、アプリ、レンタルアルファシステム。安全……だと思う、評価も星5で良いし。うん、じゃ、お問い合わせをしてみるか。なるみは、恐る恐るボタンを押すが───。 ◆完結済みです。ありがとうございました。 ◆表紙絵を花々緒さんが描いてくださりました。カッコいい雪夜君と、おどおど鳴水くんです。可愛すぎますね!

処理中です...