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Ⅷ 変わるべきは……<Sideライ>
⑧
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「父さん、親としてって言うけど、親として僕を大切にしてくれた? 僕は誘拐されて大変な目に会った。ライも巻き込まれて、大きな事件になったんだ。そこには全く触れないのは、なんで?」
ウルイの言葉にウルイの父が愕然とする。
「いや、ウルイには、アルファ様がいるじゃないか。全部大丈夫なはずだろう。我々ができる事など無いはずだ。お前はオメガになったのだから、な」
ウルイの父の声は、先ほどまでと打って変わって弱弱しかった。
「僕がオメガとか関係ない。家族として心配はしなかった? 死んでいたかもしれないし、戻れなかったかもしれない!」
ウルイの父が無言で下を向く。
「僕は、王都でも苦労した。礼儀も知らない貧乏人が、誰も味方のいない王都で教育を学ぶ苦痛がわかる? 父さんが逃げ続けた壁を超えるために必死で努力したんだ! 父さんたちが幸せに笑っているのなら耐えようって思っていたのに。人を苦しめて反省もしない父さんたちにガッカリだ!」
ウルイの声が悲鳴のようだった。
ライはこれほど激しく怒りの感情を出すウルイを初めて見た。腕がブルブル震えている。
興奮で息が上がるウルイとは対照的に、ウルイの父は青ざめた。
ウルイの勇気に見惚れてしまったが、ライもこの場で言わなければならないことがある。
処罰について勧告しなくてはいけない。
「俺からも言わせてもらう。ウルイの立場を利用して、権力を振りかざし、まるで自分たちが偉くなったような行動をして、恥ずかしくないのか。なぜ、あなたたちが謹慎処分になっているのか分からないのか? オアシスは民主的統治で成り立っている都市だ。長はオアシスの治安を保つ責任を担う。その責任を遂行したのか?」
ウルイの父が震えながら口を開く。
「いや、その、政治的なことについては、副長がやっていまして……」
「これは長の責務なのだ。人に任せて良いものではない。それを放棄していたのなら、あなたは国法違反となる。人の上に立つというのは、ふんぞり返る事ではないのだ」
ライの厳しい声にウルイの父がビクリと身体を震わせる。下を向いて叫ぶような声を出した。
「……仕方が無いじゃないか。オアシスに入れて嬉しかったさ! 神の助けだと思った! だが、『これだから貧乏人は』とか『番地外が偉そうに』とか毎日言われてみろ! 店に行っても怪訝な顔をされて、少しの作法を笑われる! 生きる道が開けたと思っても、辛い思いは変わらない。悔しくもなるだろうが!」
ウルイの父が泣き崩れた。
思ってもいなかった言葉に何と言おうか考えた時に、控えていた副長が口を開いた。
「そうでしたか。あなた方の行動はまるで憎しみをオアシスにぶつけるようでした。その意味が分かりました。本当はオアシス追放を国に願い出るつもりでした。ですが、このオアシスでやり直してみませんか?」
副長の提案にウルイの父が声を上げて泣いた。
「ウルイの父は今後失脚となり、長を含む支配階級に着任する権利を失う。ウルイの家族として生活の保障は俺がする。ただ、贅沢は出来ない程度と思ってほしい。そして、このオアシスの今後を副長に頼んでいいか? 長として都市の安寧を任せる」
ライの言葉に副長が膝をついて頭を低くする。
「ライ伯爵公のお言葉、ありがたく承ります」
その場を副長に任せて帰ろうとしたときに、ウルイがウルイの家族に声をかけた。
「父さんたちを、信じている。生きる意味が分かる日が、きっと来るから」
優しいウルイの声だった。
「……ウルイ、父さんが、悪かった」
小さな声が届いてきた。
その声にウルイがボロボロ涙を流した。涙を流しながらウルイはコクリと頷いた。
そんなウルイをライは誇らしく思った。
その場を副長と警備に任せて席を立つと、周囲にいたライの部下たちが泣いていた。強靭な男たちの男泣きに驚いた。サードを見ると、やはり涙を拭いていた。
「ウルイ様……」
「あぁ、ウルイ様は、素晴らしい‥…」
小さな声が聞こえて、慌ててウルイの腰に手を回して密着して歩いた。
こいつら全員ウルイに好意を持ったかもしれない。変な危機感がライの心に芽生えた。
ウルイはキラキラと輝くものがある。それに周りが気付いていくのが嫌だった。
(俺だけのウルイだ!)
そんな気持ちが強くなった。
帰り道にウルイに「ステーキ串、買っていく?」と聞いてみた。「今は食べられそうにないや」と赤い目でウルイが微笑んだ。
明日は両手いっぱいのステーキ串を買ってあげようと思った。甘い果実水やお菓子もたくさん買い与えよう。
きっと目を輝かせて喜ぶだろう。二人で楽しむ明日を想像して心がウキウキした。
ウルイの言葉にウルイの父が愕然とする。
「いや、ウルイには、アルファ様がいるじゃないか。全部大丈夫なはずだろう。我々ができる事など無いはずだ。お前はオメガになったのだから、な」
ウルイの父の声は、先ほどまでと打って変わって弱弱しかった。
「僕がオメガとか関係ない。家族として心配はしなかった? 死んでいたかもしれないし、戻れなかったかもしれない!」
ウルイの父が無言で下を向く。
「僕は、王都でも苦労した。礼儀も知らない貧乏人が、誰も味方のいない王都で教育を学ぶ苦痛がわかる? 父さんが逃げ続けた壁を超えるために必死で努力したんだ! 父さんたちが幸せに笑っているのなら耐えようって思っていたのに。人を苦しめて反省もしない父さんたちにガッカリだ!」
ウルイの声が悲鳴のようだった。
ライはこれほど激しく怒りの感情を出すウルイを初めて見た。腕がブルブル震えている。
興奮で息が上がるウルイとは対照的に、ウルイの父は青ざめた。
ウルイの勇気に見惚れてしまったが、ライもこの場で言わなければならないことがある。
処罰について勧告しなくてはいけない。
「俺からも言わせてもらう。ウルイの立場を利用して、権力を振りかざし、まるで自分たちが偉くなったような行動をして、恥ずかしくないのか。なぜ、あなたたちが謹慎処分になっているのか分からないのか? オアシスは民主的統治で成り立っている都市だ。長はオアシスの治安を保つ責任を担う。その責任を遂行したのか?」
ウルイの父が震えながら口を開く。
「いや、その、政治的なことについては、副長がやっていまして……」
「これは長の責務なのだ。人に任せて良いものではない。それを放棄していたのなら、あなたは国法違反となる。人の上に立つというのは、ふんぞり返る事ではないのだ」
ライの厳しい声にウルイの父がビクリと身体を震わせる。下を向いて叫ぶような声を出した。
「……仕方が無いじゃないか。オアシスに入れて嬉しかったさ! 神の助けだと思った! だが、『これだから貧乏人は』とか『番地外が偉そうに』とか毎日言われてみろ! 店に行っても怪訝な顔をされて、少しの作法を笑われる! 生きる道が開けたと思っても、辛い思いは変わらない。悔しくもなるだろうが!」
ウルイの父が泣き崩れた。
思ってもいなかった言葉に何と言おうか考えた時に、控えていた副長が口を開いた。
「そうでしたか。あなた方の行動はまるで憎しみをオアシスにぶつけるようでした。その意味が分かりました。本当はオアシス追放を国に願い出るつもりでした。ですが、このオアシスでやり直してみませんか?」
副長の提案にウルイの父が声を上げて泣いた。
「ウルイの父は今後失脚となり、長を含む支配階級に着任する権利を失う。ウルイの家族として生活の保障は俺がする。ただ、贅沢は出来ない程度と思ってほしい。そして、このオアシスの今後を副長に頼んでいいか? 長として都市の安寧を任せる」
ライの言葉に副長が膝をついて頭を低くする。
「ライ伯爵公のお言葉、ありがたく承ります」
その場を副長に任せて帰ろうとしたときに、ウルイがウルイの家族に声をかけた。
「父さんたちを、信じている。生きる意味が分かる日が、きっと来るから」
優しいウルイの声だった。
「……ウルイ、父さんが、悪かった」
小さな声が届いてきた。
その声にウルイがボロボロ涙を流した。涙を流しながらウルイはコクリと頷いた。
そんなウルイをライは誇らしく思った。
その場を副長と警備に任せて席を立つと、周囲にいたライの部下たちが泣いていた。強靭な男たちの男泣きに驚いた。サードを見ると、やはり涙を拭いていた。
「ウルイ様……」
「あぁ、ウルイ様は、素晴らしい‥…」
小さな声が聞こえて、慌ててウルイの腰に手を回して密着して歩いた。
こいつら全員ウルイに好意を持ったかもしれない。変な危機感がライの心に芽生えた。
ウルイはキラキラと輝くものがある。それに周りが気付いていくのが嫌だった。
(俺だけのウルイだ!)
そんな気持ちが強くなった。
帰り道にウルイに「ステーキ串、買っていく?」と聞いてみた。「今は食べられそうにないや」と赤い目でウルイが微笑んだ。
明日は両手いっぱいのステーキ串を買ってあげようと思った。甘い果実水やお菓子もたくさん買い与えよう。
きっと目を輝かせて喜ぶだろう。二人で楽しむ明日を想像して心がウキウキした。
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