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Ⅸ 王都への帰還
④
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ライの伯爵邸に戻るとササラたちはいなかった。
使用人の半分を伯爵家別荘と入れ替えをしたらしい。ササラたち意地悪な使用人がいないことに安心した。
王都に帰ってからライは毎日忙しい。朝早く仕事に向かい寝る前まで働いている。
国王陛下への報告や軍会議が続いているらしい。
ササラたちが居ないとウルイの教育がガラリと変わった。
ウルイは適度な運動として乗馬を習うことになった。まず触ることから始めているが、馬が可愛くて楽しい時間になった。
それに教養面の授業は邸の使用人ではなく、家庭教師の先生が来るようになった。高齢女性のローズ先生はとても優しくて丁寧に作法を教えてくれる。
何度聞いてもウルイが怒られることはない。何度でも聞いて正しく覚えたほうがいいのですよ、と言ってくれる。それにウルイのことをたくさん褒めてくれる。
一度、失敗してしまいササラたちにしていたように床に頭をつけて謝罪をしたら驚かれた。
そのような事は二度としなくていいのです、とローズ先生が涙した。先生が泣く意味がウルイには分からなかった。
そんなウルイにローズ先生は「歳を取ると涙もろくなるのです。お気になさらず」と言った。
ドラール伯爵家の当主であるライの父や兄、妹にも会うようになった。これまでウルイのストレスになると思い、出来るだけ会わないように配慮してくれていたと知った。
まだ貴族高等学校に通うライの妹ダリアはウルイをとても気に入ってくれた。ウルイのことを「可愛い」と言い、時々サロンでのお茶に誘われる。
ダリアはウルイより背が高く、弓と槍が得意な活発女性だ。運動全般が得意な方で、お茶を飲むときに目に入る腕はウルイの腕より太い。ライは家系的に大柄なのだと納得した。
自分が否定されることが無い日常が嬉しかった。毎日が楽しくなった。
気になった事や新たな発見をライに話すようになった。嬉しいことを話したかった。
ライと話をしたいから一緒にお風呂に入る時間を作った。ベッドの中でも眠くなるまで話をするようになった。
これまではライが仕事の話をしてくれて、ウルイには話すことなど一つもなかった。いつの間にかウルイの方が喋るようになっていた。
そんな日々の中で、事件が起きた。
その日はローズ先生が体調不良で教養の授業が休みになった。自己学習をしようと思い、授業で使っている部屋で一人過ごしていた。
一人になると色々な事が頭を過る。王都に帰って十日が経つ。そろそろライの発情期だ。
発情期にはウルイの身体でライに恩を返さなくてはいけない。そこでしかウルイはライに奉仕できない。
ウルイとしてはライに拒否されてしまうけれど、オメガとしてアルファの部分を満たすことは出来るだろう。これからは性的な学習をしてライに尽くすことを考えなくてはいけない。そう考えて外を眺めた。
オメガとしてしか価値の無い現実を考えると、心が割れそうに痛んだ。
本当はウルイとしても奉仕したかった。ライの役に立ちたかった。優しいライを独り占めしたかった。
ライに拒否された瞬間を思い出すと、泣きたい気持ちがウルイの心を占拠する。 目に溜まった涙が流れないように上を向いた。
『コンコン』
急にドアがノックされて慌てて目元を拭う。
「はい」
「失礼します」
声を聞いて(あれ?)と思った。ここに居るはずのない人の声に似ている。
入ってきた侍女から目が離せなかった。ゆっくりとした歩きでウルイに近づくのはササラだった。驚きで心臓が鳴り響いた。
何と声を掛ければ良いのか言葉が出なかった。
使用人の半分を伯爵家別荘と入れ替えをしたらしい。ササラたち意地悪な使用人がいないことに安心した。
王都に帰ってからライは毎日忙しい。朝早く仕事に向かい寝る前まで働いている。
国王陛下への報告や軍会議が続いているらしい。
ササラたちが居ないとウルイの教育がガラリと変わった。
ウルイは適度な運動として乗馬を習うことになった。まず触ることから始めているが、馬が可愛くて楽しい時間になった。
それに教養面の授業は邸の使用人ではなく、家庭教師の先生が来るようになった。高齢女性のローズ先生はとても優しくて丁寧に作法を教えてくれる。
何度聞いてもウルイが怒られることはない。何度でも聞いて正しく覚えたほうがいいのですよ、と言ってくれる。それにウルイのことをたくさん褒めてくれる。
一度、失敗してしまいササラたちにしていたように床に頭をつけて謝罪をしたら驚かれた。
そのような事は二度としなくていいのです、とローズ先生が涙した。先生が泣く意味がウルイには分からなかった。
そんなウルイにローズ先生は「歳を取ると涙もろくなるのです。お気になさらず」と言った。
ドラール伯爵家の当主であるライの父や兄、妹にも会うようになった。これまでウルイのストレスになると思い、出来るだけ会わないように配慮してくれていたと知った。
まだ貴族高等学校に通うライの妹ダリアはウルイをとても気に入ってくれた。ウルイのことを「可愛い」と言い、時々サロンでのお茶に誘われる。
ダリアはウルイより背が高く、弓と槍が得意な活発女性だ。運動全般が得意な方で、お茶を飲むときに目に入る腕はウルイの腕より太い。ライは家系的に大柄なのだと納得した。
自分が否定されることが無い日常が嬉しかった。毎日が楽しくなった。
気になった事や新たな発見をライに話すようになった。嬉しいことを話したかった。
ライと話をしたいから一緒にお風呂に入る時間を作った。ベッドの中でも眠くなるまで話をするようになった。
これまではライが仕事の話をしてくれて、ウルイには話すことなど一つもなかった。いつの間にかウルイの方が喋るようになっていた。
そんな日々の中で、事件が起きた。
その日はローズ先生が体調不良で教養の授業が休みになった。自己学習をしようと思い、授業で使っている部屋で一人過ごしていた。
一人になると色々な事が頭を過る。王都に帰って十日が経つ。そろそろライの発情期だ。
発情期にはウルイの身体でライに恩を返さなくてはいけない。そこでしかウルイはライに奉仕できない。
ウルイとしてはライに拒否されてしまうけれど、オメガとしてアルファの部分を満たすことは出来るだろう。これからは性的な学習をしてライに尽くすことを考えなくてはいけない。そう考えて外を眺めた。
オメガとしてしか価値の無い現実を考えると、心が割れそうに痛んだ。
本当はウルイとしても奉仕したかった。ライの役に立ちたかった。優しいライを独り占めしたかった。
ライに拒否された瞬間を思い出すと、泣きたい気持ちがウルイの心を占拠する。 目に溜まった涙が流れないように上を向いた。
『コンコン』
急にドアがノックされて慌てて目元を拭う。
「はい」
「失礼します」
声を聞いて(あれ?)と思った。ここに居るはずのない人の声に似ている。
入ってきた侍女から目が離せなかった。ゆっくりとした歩きでウルイに近づくのはササラだった。驚きで心臓が鳴り響いた。
何と声を掛ければ良いのか言葉が出なかった。
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