発情期アルファ貴族にオメガの導きをどうぞ

小池 月

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Ⅹ 想いが繋がって

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 ライが仕事に通い始めてどれくらいになったのか、ウルイには日数感覚が分からなくなってきていた。

 体温が低すぎると頭が回らない。手足が動かなくて、まるで冬眠中のカエルにでもなった気分だった。

 布団の中で温石とともに丸まっていると、このまま目が覚めなくてもいいかと思えてくる。

「失礼します。ウルイ様」
 どこかで声が聞こえて『ライ、お客さんが来たみたいだけど、どうする?』と心で聞いた。

「ウルイ、布団をとるよ」
 ライの声が聞こえて『なんだ、そこに居るじゃないか』と安心した。

 布団がなくなり、寒さに体を丸めたが、同時にゾクリと背筋を走る強烈な感覚にハッと目を開けた。

「あぁ、よい。そのままで構わん」
 部屋に充満する色々な匂いに頭が混乱しそうになる。

 ライに目を向けて、その近くに居る赤い豪華なマントを着けた男性を見上げた。その周囲にも存在感のある男性が数名いる。

「ウルイ、国王陛下に、公爵、伯爵のアルファである方々だよ。ウルイが生きるためなら、俺はどんな手段も使う。俺が一人で解決できないのなら、他のアルファを頼ればいいって思ってね。国中のアルファに協力をお願いした。皆、オメガの愛おしさを知っているから、協力してくれることになった」

 ライの言葉を聞いて、ここに居る人たちが全員アルファで、しかも国王陛下までいらしていることに驚きが隠せなかった。

 挨拶をしなくては、いや跪かなくてはいけない。そう思うのに身体が動かなかった。

「いい。動こうとするな。触れても良いか?」
 中年の国王陛下がウルイの額に触れる。ライ以外のアルファに触れられる事にウルイの身体がビクリとした。

「冷たいな。これでは確かに生命維持できん。なぁ、過去には襲われたオメガもいたはずだ。その者たちに同じ症状は?」

「ありません。痛ましい事ですが、襲われたものが苦痛で最中に絶命したケースは残っております。しかし、その後に低体温になった者の記録は無いですね」

「ふむ、とすると、そのほかの要因を考えたほうが良いかもしれんな。ライ、良ければ王城でウルイを治療させよう。現在アドレアには医療分野に二名のアルファ医師がいる」

「良いのですか?」

「構わんよ。オメガは我々アルファにとって何より大切な者である。もちろん自分の命より、な。それはアルファなら誰でも分かる。そしてアルファもオメガも神の恵みであり国の宝なのだ。もちろん、ライ、お前のことも大事だ。それなのに一人で抱え込んで、この大馬鹿放蕩アルファが!」

 国王陛下が軽くゴチンとライをゲンコツした。その仕草にウルイは驚いた。

「陛下、そういうのは大人になったのだから、お止めくださいと言っているじゃないですか」

 ライが頭を押さえて恥ずかしそうにしている。ウルイはその軽いやり取りを見つめた。

「あはは、ウルイ君。気にすることは無いよ。我々アルファは英才教育を受けるから皆、顔見知りなのだ。アルファに教えられるのはアルファしかいないのでね」

 ウルイの理解が追い付かないうちに、ウルイは毛布にくるまれて移動した。

 家を出て驚いた。王族専用浮遊移動車に侯爵家の紋入り浮遊移動車、伯爵家紋入りなど、こんな王都の端っこでは有り得ない光景が広がっていた。

 そして恐れ多くも国王陛下の車両にライとウルイが乗せていただいた。

 移動中は、「とにかく保温しろ」と陛下が言い、ライに「裸になって温めろ」と言い出して必死に断った。
 すぐに裸になろうとしたライにも驚いて、ライに貴族らしさが欠けている理由が分かった気がした。
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