発情期アルファ貴族にオメガの導きをどうぞ

小池 月

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Ⅹ 想いが繋がって

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 王城に着くとそのまま城内の一室に通された。一室とはいってもドアから入ると室内に書斎、キッチン、洋室、リビングダイニング、浴室トイレと豪華な造りになっていた。

 すぐにウルイの全身検査がされた。血液や皮膚組織、髪の毛や口腔粘膜まで全て検査すると言い採取された。

 そして検査の結果が分かるまで徹底して体温管理が始まった。アルミ布の寝袋に入った。これをしてもらうとウルイの体温が一定に保てて楽だった。体温が下がってから温めるより疲労感が少ない。

「ウルイ、寒くない?」
 ライから声が掛けられて振り向けばガザガザと独特の音が鳴る。

「あ~~、なんだか寂しい。抱き上げて俺が温めていたのに」
 ウルイを見つめてライがため息を落とす。そんなライを見て笑ってしまう。

 ウルイは今、体温調整の全身モコモコのアルミ服を着用している。これはウルイの体温を感知して自動で温めてくれるため、室内ならば自力で動ける。

 ウルイのために医療に携わるアルファが作成してくれた。こんなのが直ぐに出来てしまうあたりがアルファだと思う。

「ライにはいつも温めてもらっているけど」
「いや、そのガザガザスーツに負けた気分だ」

 ガクリと肩を落とすライと少し笑い合った。ここに居ると本当に低体温の症状が治るかもしれないと思える。死なないかも、と期待が強くなっている。

 毎日見舞いに来てくれる国王陛下やアルファ貴族をみていると、互いに大切に思い合っているのが分かった。ライは孤独なアルファじゃないと思えた。

 そして、これほど優秀なアルファが揃っていると、期待を持ってもいいと思える。それに頼れる人がいて、ライの心が軽くなっているのも分かった。

 お茶にしようとライとウルイが席に着いた時、アルファ医師が駆け込んできた。

「ライ、分かったぞ! ウルイ君は助かる!」
「本当ですか!」

「あぁ、今治療薬の適応を試している。だが、原因特定したからには、もう大丈夫だ」

 アルファ医師が輝いて見えた。

「おぉ、それはぜひ聞きたい。一体ウルイに何が起きていたんだ? それは我々のオメガにも起こりえる事なのか?」

 いつのまにか国王陛下が来ていた。ウルイは膝を折って頭を下げた。

「ウルイ、固くならずに。病人なのだ。座っていなさい」

 声掛けに従いウルイは着座した。アルミの音がガサガサ鳴った。

「ウルイ君はある細菌感染症を起こしていたのです。それは時間をかけて脳に入り込み増殖したようです。それで体温調整機能が狂ったのだと考えられます。砂地のアドレアではまず起こすことのない感染症です。土の中に生殖する菌なので、わが国では原因不明と思われても仕方がないでしょう」

 アルファ医師がゆっくり話してくれた。
「ウルイはガリイ国で畑作業をさせられました。直に土に触れる機会が多くありました」

 ライの声に医師が頷く。

「そうか。では、最速で治療方法を確立し、ウルイの回復に全力を注いでくれ。ライ、ウルイ、良かった。一安心だが気を抜くなよ。病気は完治するまでが勝負だ」

 ライとウルイは頭を低くして「はい」と返事をした。

「それから、ライ。今回の事で分かったか? アルファとは優秀であるが、ただの人間だ。全てを一人で背負わなくていい。助け合えば不可能も可能になる。我々が手を繋げば愛する者もアドレアも守れる。手を離せば愛する者さえ守れん。そうであろう?」

 国王陛下の言葉にライが肩を震わせた。

「互いに、支え合おう。お前の伯爵爵位はそのままにしてある。軍の職位もそのままだ。では、ウルイはしっかり療養を」

「はい。ありがとうございます」
 国王陛下とアルファ医師が退席するのを、頭を下げて見送った。

 部屋に二人になり、ただ静かにライと抱き合った。生きる道が開けた。その喜びに涙が流れた。

「ウルイ、愛している。俺の生涯を、ウルイに捧げる」

「うん。僕も、ライを愛している。あはは。スゴイや。奇跡だ。ライと出会って何度も死を覚悟したけれど、全部ギリギリで救い出してくれる。ライは僕の神様だ」

 泣き笑いでライに伝えた。
 するとライがウルイに膝をついた。ウルイの手を取り見上げてくる。

 その真剣な眼差しにウルイの心臓がドキッとする。たれ目の奥にアルファの炎が燃えている。

「いや、ウルイこそが俺の神だ。アルファとして孤独になっていた俺を導いてくれた。やっと分かった。アルファはただ一人のオメガを愛してこそアルファなのだな」

 ライが立ちあがりウルイを抱き上げた。
 するとガザガザとアルミの音がして、二人で顔を見合わせて笑った。
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