発情期アルファ貴族にオメガの導きをどうぞ

小池 月

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☆番外編☆ 幸せな発情期

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 足の感染症からウルイが回復して、二か月が経過した。今では走り回れるほど元気だ。

「ウルイ、ちょっと王城に行ってくるから」
 ウルイが庭で洗濯物を干していると、ライが慌ただしく飛び出してくる。

「あ、うん。急だね。行ってらっしゃい」
 ライはウルイに駆け寄るとグイっと抱き上げた。

「うわっ」
 驚いてライに抱きついた。そのままギュッと抱きしめられて、頬に唇が触れる。
 チュッと湿った音がした。そのまま唇が耳に移動する。

「行ってきます。ウルイ、愛してる」
 低い声がウルイの身体に侵入する。ゾワリとする感覚がして、ウルイは身体をブルっと震わせた。
 顔が熱くなる。

「ちょ、ちょっと、ライ!」
 耳に手を当てて抗議の声を上げようとしたが、ウルイをストンと降ろしたライが幸せそうに笑うから、何も言えなくなった。
 ウルイは耳に手を当てたまま、ライに手を振って送り出した。

 ライはブンブン手を振って、一人乗り用浮遊移動車で城に向けて出発した。

「まったく。急いでるんだろ。僕にかまってから出勤するの、やめろよな。ライは貴族らしさを意識すべきだって」
 ブツブツと独り言を言いながらも、ライがキスをした頬に触れてみた。少ししっとりしている。ライの残り香がする。
 耳に残る「愛してる」の言葉が脳にリフレインして、ジワリと胸が温かくなる。
 フフっと笑って、ウルイは幸せを実感した。

「ん~~!」
 伸びをして気持ちを切り替え、ウルイは続きの洗濯物を干した。広い庭には鶏小屋がある。馬屋にはライの愛馬がいる。これが終えたら餌をやらなくてはいけない。

 ウルイが回復して王城から戻った先は、ライとウルイが引きこもっていた王都外れの古民家だ。もったいないし、ここを自宅にしよう、とライと決めた。家畜を飼うことをライが提案してくれて嬉しかった。

 ウルイはもともと遊牧民だ。父や祖父が「家畜がいた時は良かった」と口癖のように言っていた。家畜がいる生活は夢物語だった。その夢の生活をしていると思うと胸がドキドキする。

「うん。気持ちいいな」
 初夏の風を肌に感じて伸びをすれば、鶏小屋から『コココッ』と催促の声がする。
「はいはい。今行くよっ」
 ウルイは洗濯籠を室内に片づけてから、外の小屋にある掃除道具と餌を出して、鶏小屋に向かった。
 鶏は全部で十羽いる。

「あ、卵、残ってた」
 卵を回収して、二人暮らしだとちょっと多いな、と思う。
 ここに戻るとき、ライと相談して使用人は雇わないと決めた。だから今は二人だけの暮らしだ。これがなかなか自由でいい。

 餌箱に餌をセットし、鶏が一気にそこに集中する間に掃除をする。動物の世話は楽しい。

「はぁ、僕がまさか、王都に自宅を持つなんて、な」
 地方オアシスで貧困層であった自分からは想像もできない現実にフフっと笑いを漏らした。

 鶏小屋の掃除道具を片付けて、納屋から出た時、急に眩暈に襲われた。ウルイはガタン、と音をたてて納屋の扉に寄りかかった。

「あ、あれ? なんだ、ろう……」
 独り言をこぼして、熱くなる身体を引きずるように家の中に移動した。
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