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Ⅱ番外編

ルイスと竜人騎士の灯愛(後編)

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<オリバー殿下からの依頼>

 ある日、サンと俺がオリバー殿下に呼ばれた。

 初めて王族に会う。怖いから、サンに隠れる。今から会う人は、人間を簡単に処刑する王族だ。自殺した母、受けてきた暴行を思い出し、心臓がドクドク嫌な音を立てる。サンが「大丈夫だよ」と俺の手を握る。
光城の貴賓室だろうか、豪華な部屋に通されて、俺とサン以外誰もいなくなる。ガチャリと殿下が入室した。すっと膝をつき頭を垂れるサン。慌てて真似た。
「楽にしてくれ。すまない。頼みがあるんだ」
初めて見た第一皇子オリバー様は、弱り切っていた。これが王族? と思うほど、しょげている。椅子を勧められ、殿下の向かいに座る。
「俺の大切な人間を、少し療養させるために手を借りたい」
「どういうことでしょうか?」
サンが答える。俺は少し様子を見ている。
「ドーリー子爵家嫡男、サン・ドーリー。救出後から、罪人の子として虐げられたルイスと恋人になっていると聞いた。ルイスはかなりひどいケガを負っていた。だが、とても回復が早く、第五騎士団とも仲良くしている。そんなお前たちにしか頼めないと思った」
殿下が疲れた顔で俺を見る。とっさに、サンが俺を隠そうとするが、「大丈夫だ」と殿下に制される。
「ルイス、すまなかった。君にも、大きな人生の負荷を負わせてしまった。全て、俺が判断を間違ったせいなんだ。せめて、これから生きることが辛くないように最大限援助していく」
この人、怖い王族だよな。頭下げていいのかよ、俺みたいな最下層に。驚きで、動けずにいると、殿下が続ける。
「ルイス、サンと共に俺の何より大切な人間を救ってほしい。俺が傷つけてしまった。こんなはずじゃなかった。大切にしていたのに、失敗してしまった。少し、俺から離れて過ごさせたいんだ。その間の面倒を見てもらえないかと思っている。同じ罪人の子として虐げられたルイス、君に。負担を強いてすまない」
頭を下げているオリバー殿下に、どうしていいのか分からずサンを見ると、サンも驚きの顔で固まっていた。

「レイ・バートをお願いできないだろうか?」

涙が流れているんじゃないかと思う顔。綺麗な顔が、悲しみで満ちている。

「わかりました」

自然と答えていた。
「ルイス、いいのか?」
サンが聞いてくる。

「うん。オリバー殿下様は、心が弱っています。見て分かる。こんな時は、誰かの手が必要なんだ。それが俺とサンなら、一緒に手伝おうよ」

オリバー殿下が、綺麗な顔ではっとしたように俺を見る。
「……ありがとう」
一言に重みがある。この人は頼るのが苦手なタイプだろうと思った。王族となると、頼るのも難しいのか。
「給料、はずんでください」
一言、伝えると誰も何も答えない。え? だめなの?
「ぶはっ!」
サンが噴き出した。それを見て、殿下がやや穏やかな表情になる。涙目だ。
「承知した。なるほど、ルイスなら任せられそうだ」
弱く微笑んだ殿下は、少し安心した様子だった。俺も、何となくニカっと笑い返す。

「サン、ルイスを大切に、幸せに、な」
すごく悲壮感のある殿下の一言だった。

 レイが保護施設に来た。寝たまま、寝室に運ばれた。俺は合い鍵を預かる。けがの程度、薬の使用方法を学ぶ。俺みたいに欠損を伴うような大ケガなら、人工培養肉芽で傷自体をなかったようにできるけれど、中途半端な傷のほうが、治癒時間がかかることを知った。人工培養肉芽は、小さい傷だと創部融合した後、増殖しすぎて悪性腫瘍化するらしい。
レイを見る。十七歳。とても幼く見える。少年か少女か分からない顔つきだ。死んでないよな、と心配になる。
「痛々しいな」
ポツリと言うと、
「お前もこんなだぞ」
サンに言われてビビる。他から見たら、俺もこんな哀れに映るのか。
オリバー殿下が名残惜しそうにレイの頬を撫でている。何となく、殿下の大切、という意味が分かった。好きなんだろうな。


<傷ついた心と前を向く心>
 「ここは、どこでしょうか?」
レイが目覚めた。傍には俺だけ。刺激しないように、サンも立ち入らない。レイは動かない。無表情の人形のようだ。心が消耗してしまっている。

 レイを見ていて、気が付いた。罪人の子、ここに五十名ほどいるはず。俺、誰にも会っていない。俺は、イジメも暴行も、もう一度やると言われたら勘弁だけど、通り過ぎたらもういいや、と思えるタイプだ。でも、レイは違う。心が、囚われていて身体が動かないんだ。ここに居る五十名、もしかしたらレイと同じなのか。みんな、こんなに傷ついて、恐怖で動けない状態なのか。

レイの前では、できるだけ明るくして、仕事のあとサンに会って泣いた。たまらなかった。サンと出会って、初めてその胸で泣いた。
「人のために泣くのか。お前は優しい」
一言つぶやき、サンが俺を抱きしめる。
「俺もルイスが目覚めるまで、たくさん泣いた。こんなことがあっていいのかと、理不尽さで苦しかった。だからこそ、お前の強さや前向きなところが光り輝くようだった。その明るさで、レイ様を癒してほしい。俺には大切な相手が傷ついている時のオリバー様の気持ちが分かる。ルイスはすごいんだ。罪人の子として虐げられた者たちの中で、これほど前向きに笑顔を向けてくれる人間はいない。俺たち竜人がルイスにどれだけ救われているか」
「そんな大げさなものじゃない。俺の気質がそうだっただけだよ」
泣きながら答える。優しい言葉に、癒される。温かい厚い胸にしがみつく。
「俺、サンが好きだ。俺の事、そんな風に言ってくれる人間はいなかった。ここは、サンの腕の中は、俺の居場所だよ」
「ルイス」
顔を上に向けられて、深い口づけ。口腔内に舌が侵入する。サンの舌、グニグニ動いて気持ちいい。サンが、俺の服のボタンを外して上半身をまさぐる。キス以上のこと、初めてだ。ちょっと緊張する。
「薄いな。少し肉が付くまでは、我慢しないとお前を傷つける。でも、触るだけなら、いいか?」
「じゃ、お互い触りあいにしようぜ」
いつの間にか涙は引いて、クスリと笑いあう。

 裸になって、サンの膝の上に乗り、向かい合わせ。服を脱ぐと、サンの身体のデカさにビックリした。二百五センチのムキムキ体形。盛り上がる筋肉。そりゃ百七十センチある俺を軽々抱き上げるわけだ。靴下を脱ぐときに、義足も外した。義足を外すと、体重移動が上手くいかない。びっこをひいて歩く俺を、サンはよく抱き上げる。いいといっても、抱いて運ぶ。レイを見て、何かしてあげたくなる気持ちが分ったから、これからは甘えようと思った。
「何を考えている?」
間近から、サンに問われる。サンの頬を撫でる。可愛い。ちょっと嫉妬か?
「足の事。義足とると、サンが俺を運ぶじゃんか。こんな逞しい身体なら、俺くらい運ぶの平気だろうなって」
「平気だぞ。もっと太っても、俺より重くなっても俺がルイスを運ぶ。お前の居場所は俺の腕の中だ」
満面の笑み。男らしい顔つきが優しい笑顔で満ちている。嬉しくて、俺から軽くキスをする。
「じゃ、デブになろう」
「なれなれ。ルイスの三段腹を見たいぞ」
二人でアハハ、と笑う。喋りながらも、互いに身体を撫で合っているから、勃起が治まらない。サンが俺の乳首をキュッつまむ。
「あぅっ」
しびれたような震えが身体を流れる。
「気持ちいいか?」
「うん。」
正直に答えると、グニグニと潰すように、引っ張るように刺激する。
「うわぁ。あぅ、ちょ、ちょっと、サン!」
連続した刺激に、腰がモゾモゾ動いてしまう。サンの極デカマラに俺のが当たる。でかい。
途端に、腰に手を回され、陰茎同士が密着するようグイっと引き寄せられる。
「うぁ! あ、こすれる!」
「可愛い起立だ。舐めたいし、味わいたいし、食べつくしたくなる」
サンも腰を動かし、勃起をこする。サンの大きな手で二本まとめてしごかれると、頭がチカチカする。
「あ、あ~! い、いい! あ、気持ち、いい!」
必死で腰をカクカクさせてしまう。急に、俺を抱き上げて、ベッドに横たえる。
「舐めていいか?」
覆いかぶさり、聞いてくる。早く刺激が欲しくてコクコク頷く。大きく足を広げられ、その間にサンが陣取る。俺の陰茎を握り、じっと見つめられる。おい、恥ずかしいな。やめろと言おうとしたら、急に亀頭の溝をぞろりと舐められた。尖らせた舌の先で、先端の穴を広げるかの如くグリグリされる。経験したことのない電気の流れるような刺激に、身体のびくつきが止まらない。
「あ、あ、あ~! やめ、それ、やめて! ひぃ!」
しばらく亀頭と先端の穴を舌で刺激して「可愛い、可愛い」とつぶやいたあと、陰茎全体を口で包みしごいてくる。
「あぁ、いく! いくぅ!」
たまらず射精すると、突き出た腰を抱えられる。何だ? と思う間もなく、指が一本、後ろの穴に、にゅるりと入る。射精後で力が抜けていた身体がビクリと反応し、キュゥッと指を喰い締める。
「いや、いや、何? 後ろ、指?」
「ここ、ルイスのここに、いつか俺のこれを入れる」
俺の手を握り、サンの陰茎を握らせてくる。俺の手じゃ回りきらない太さ。長さ三十センチあるよな。
「無理だろ。でかすぎ」
フハハ、と笑うと、後ろに刺さった指の存在をリアルに感じて、息が詰まってしまう。
「もっと肉が身体につくまで我慢する。それまでに、受け入れるための準備をしたいんだ。いいか?」
後ろに指を刺したまま話すな。振動が来るんだよ。嫌とも言えず、コクコクと頷く。指が中で動く。違和感すごい。サンの指、太いから一本でも存在感あるんだ。一度抜けた指に、俺の鞭打ち傷用軟膏を指につけている。
「俺の薬じゃん」
「今日、こんなことになると思っていなくて、何も持っていない。でも、ルイスを気持ちよくしたい。潤滑剤代わりだよ」
再度指が侵入する。こんどは、ズルリと奥まで一気に入る。
「うわぁ! すごっ、変な、ゾワゾワする!」
違和感をどう表現していいか分からない。さっきの倍くらい奥まで来てる。ズンズンと抜き差しして、指が増えて、俺が堪えきれない嬌声を上げて、気が付くとまた勃起していた。腰が揺れてしまう。恥ずかしい。奥まで届く太い指が気持ちいい。指の入っている入り口が広げられる。何本入れるんだよ。グボングプンと鳴る自分の穴が恥ずかしい。「あ~」とか「あ、ヒィ」「いやぁ~」とか変な声が出るのが恥ずかしい。サンが指を折り曲げて、刺激を送ると腰がカクカク揺れて陰茎から先走りが垂れるのが恥ずかしい。脳みそが燃える。心臓がありえないくらい速く走っている。息が追い付かない。ハクハクする呼吸を、キスでからめとられる。頭がおかしくなる!
「少しだけ、先っぽだけ、いいか?」
聞かれて、コクコク頷く。もう訳が分からない。指がずるりと抜けて、お尻の穴に、サンの極デカ先端が押し付けられる。グポっと圧がかけられると、穴がミチミチ悲鳴をあげる。
「いやぁ! いた、痛い!」
「すまん!」
すぐに離れるサン。涙目でサンを見ると、悲しそうな顔。そんな顔するなよ。可愛いな。
「大丈夫だよ。入れてみて。声は自然と出ちゃうんだ。少しだけなら、いれてみて」
入口、入れやすいように自分で広げて見せる。自分で触ると思った以上に柔らかくとろけていて驚く。「早く」と促すと、欲望を前面に出した顔で俺を見下ろすサン。分かりやすいな。微笑んでしまう。また、後ろにサンの熱が当たる。ぐにゅっと穴が開く。「あ~」と声をあげて、少しずつ入るサンを受け入れる。大丈夫。入っている。しかし、でかい。拳を飲み込むようだ。
「いぃ~! ひぃ! 無理、これ以上は、むりぃ!」
ミチミチ拡がる穴。もう、限界だ、圧迫感に涙が出る。
「はぁ、頭だけ、少し入れた。」
おい、これで頭少しかよ。朦朧とする頭の中でツッコんだ。亀頭を咥えさせたまま、サンが自分の茎をしごいて腰を揺らしている。動きが伝わる。遠慮がちに、軽く揺すられる。ふと力が抜けた時、グポンと潜り込むサンのモノ。
「イヤァアア!!」
悲鳴を上げていた。感覚からして、全部じゃない、多分、中くらいまでが出し入れされている。
「あぁ! あぁ! ヒィ!」
声が、涙が止まらない! 全身を駆ける震えとゾクゾク。俺のペニスが、何かを噴射した。全身が揺れる! 揺すられているのか痙攣しているのか、よくわからないまま意識が飛んだ。

「すまない。」
目を覚ますと、お互い裸のまま。サンに抱きかかえられている。
「今から、風呂に入れようかと思っていたんだ。ただ、保護施設の風呂が小さくて、二人で入れなくて、どうしようかと」
「俺、どのくらい寝ていた?」
「ほんの十分だ。あの、すまん。無理させてしまって。我慢が聞かなくて。後ろの穴に、入り口付近に出してしまって、その、全部出したけれど違和感が残ってしまうかも」
恐る恐るお尻を触る。お尻は拭いたのか、それでも精子臭いし、入り口の腫れぼったさ、違和感。少しめくれてないか? 俺が自分で穴を触って確認する様子を、サンがじっと見ているのに気付いた。何だよ、恥ずかしいじゃないか!
「すごい光景だ……」
真っ赤な顔で、サンがまた勃起している。
「まて、もう、今日は無理。もう無理だから!」
必死で訴える。分かっているよ、と笑いながら俺を抱き上げて風呂場に連れていく。
「順番でシャワー浴びよう」
俺から使わせてもらう。お尻の違和感はあるが、動くのに苦労するほどじゃない。シャワーの後でベッドをサンが整えるのを、お茶を飲みながら見守る。至れり尽くせりだよな。
「なぁ、多分全部入れるのはまだ無理だけど、さっきくらいまでなら、時々しようぜ」
提案すると、顔から星がきらめいているかのような嬉しそうな顔で「いいのか?」と俺を見る。可愛らしすぎて、噴き出して笑ってしまった。俺たちのペースでゆっくり行こうぜ、と話し合った。
 俺は幸せだ。サンが助けてくれて良かった。生きていて良かった。

 無表情のレイを想う。レイとオリバー様もきっと愛し合う日が来るように思う。何となく、俺のカンだ。
ここに居る皆が笑顔になれるといいな。そんなことを想いながら、サンに抱き着いて寝た。その日、保護施設に来て初めてサンが泊った。誰かと一緒に寝るとか、これまで想像できなかった。でも、サンとなら毎日一緒でもいいな、と思った。

<サンの願望>
愛おしいルイスとセックスをした。この感動は、心が花畑どころか頭の中まで、身体全てが満たされる幸福だ。セックス、最高の行為だ。最中のルイスが可愛らしすぎて、気持ちよすぎて、胸のバクバクが抑えられなくて。この宝物が俺の恋人であることに神と天に感謝した。
ルイスは俺が一生大切にする。この子は、かけがえのない俺の伴侶だ。
 腕の中の温かな存在に幸せを感じながら、いつか一緒に暮らしてくれるといいな、と願う。
    <完>
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