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Ⅳ 停滞期
①
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二学期が始まった。凛太朗は初日から早く登校した。
学級委員として教室が綺麗な状態でスタートしたほうがいいと思ったから。それに、もしかしたら酒井が早く来ているかもしれないと期待したから。心臓の高鳴りを自覚しながら教室に入ると、誰もいなかった。
酒井が来ていないことにガッカリして席に着くと、教室のドアがガタっと鳴った。
「凛太朗、おはよ」
振り返ると息を切らした酒井がいた。制服姿が久しぶりだ。ベリーショートの髪型が似合い過ぎて、イケメンモデルがそこに居るようだ。
「酒井、おはよ」
軽く微笑むと、破壊力満点の笑顔が降り注ぐ。
「いつもの、やろうぜ」
爽やかな笑顔を振りまく酒井とゴミ箱のチェックや換気を一緒に行った。約束しなくても凛太朗のために酒井が早く来てくれたと思うと胸がキュンとして温かいものが満ちた。
「え! うっそ! 酒井君、めちゃカッコイイぃ」
「まじ、好み過ぎ!」
登校してきた女子たちの黄色い声が飛び交う。覚悟していたが、そんな彼女たちに凛太朗はイライラが隠せない。
ファッティとか騒いでいた男子たちまで「酒井、やるじゃん」とチヤホヤしている。これまで酒井の席に行くのは凛太郎だけだったのに。
酒井の痩せた姿をクラスメイトが褒めてくれて嬉しいはずが、凛太郎はチクチクする胸の痛みを覚えた。
以前、酒井に掲示物を頼んだ女子は「ほら、やっぱイケメンだったじゃん!」と騒いでいる。その周囲全てに穏やかに落ち着いて対応している酒井を見ていたくなかった。
(何だよ、皆、ぽっちゃりの酒井には目もくれなかったクセに)
そんなイライラが凛太朗の中にくすぶった。
(酒井は、人気者になるかもな。モテモテになって、陽キャになって、僕なんかとは一緒に居たくなくなって……)
考え出すと考えがぐるぐるしてしまって息が苦しくなった。
凛太朗はそれ以上酒井を見ていたくなくて、机に出した教科書に集中した。歯を食いしばって勉強に集中するよう自分に言い聞かせた。
(余計なことを考えるな! 独りの頃の、いつもの朝を過ごせば良いんだ。僕は、独りに慣れているし、大丈夫)
涙が滲みそうな思いを押し殺した。沈み込む凛太朗の心と、黄色い声と笑いに囲まれている酒井が対極の存在に思えて、悔しいようなドロドロとした感情が生じていた。
学級委員として教室が綺麗な状態でスタートしたほうがいいと思ったから。それに、もしかしたら酒井が早く来ているかもしれないと期待したから。心臓の高鳴りを自覚しながら教室に入ると、誰もいなかった。
酒井が来ていないことにガッカリして席に着くと、教室のドアがガタっと鳴った。
「凛太朗、おはよ」
振り返ると息を切らした酒井がいた。制服姿が久しぶりだ。ベリーショートの髪型が似合い過ぎて、イケメンモデルがそこに居るようだ。
「酒井、おはよ」
軽く微笑むと、破壊力満点の笑顔が降り注ぐ。
「いつもの、やろうぜ」
爽やかな笑顔を振りまく酒井とゴミ箱のチェックや換気を一緒に行った。約束しなくても凛太朗のために酒井が早く来てくれたと思うと胸がキュンとして温かいものが満ちた。
「え! うっそ! 酒井君、めちゃカッコイイぃ」
「まじ、好み過ぎ!」
登校してきた女子たちの黄色い声が飛び交う。覚悟していたが、そんな彼女たちに凛太朗はイライラが隠せない。
ファッティとか騒いでいた男子たちまで「酒井、やるじゃん」とチヤホヤしている。これまで酒井の席に行くのは凛太郎だけだったのに。
酒井の痩せた姿をクラスメイトが褒めてくれて嬉しいはずが、凛太郎はチクチクする胸の痛みを覚えた。
以前、酒井に掲示物を頼んだ女子は「ほら、やっぱイケメンだったじゃん!」と騒いでいる。その周囲全てに穏やかに落ち着いて対応している酒井を見ていたくなかった。
(何だよ、皆、ぽっちゃりの酒井には目もくれなかったクセに)
そんなイライラが凛太朗の中にくすぶった。
(酒井は、人気者になるかもな。モテモテになって、陽キャになって、僕なんかとは一緒に居たくなくなって……)
考え出すと考えがぐるぐるしてしまって息が苦しくなった。
凛太朗はそれ以上酒井を見ていたくなくて、机に出した教科書に集中した。歯を食いしばって勉強に集中するよう自分に言い聞かせた。
(余計なことを考えるな! 独りの頃の、いつもの朝を過ごせば良いんだ。僕は、独りに慣れているし、大丈夫)
涙が滲みそうな思いを押し殺した。沈み込む凛太朗の心と、黄色い声と笑いに囲まれている酒井が対極の存在に思えて、悔しいようなドロドロとした感情が生じていた。
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