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Ⅳ 停滞期
④
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前期学級委員の仕事は十月までだ。十月の体育祭が大きな前期の仕事で、十一月の文化祭から後期学級委員の仕事になる。
凛太朗は前期学級委員として競技の参加者を決めなくてはいけない。だが、皆の前で話すことが凛太朗にとっては大きな苦痛だ。ロングホームルームの時間内で決められるのか、不安だらけだった。
ロングホームルームとして授業の一時間が体育祭準備に当てられている。この時間は凛太朗が前に出て仕切らなくてはいけない。教壇に立つと、それだけで凛太朗は気分が悪くなりそうだった。緊張で速くなる自分の心臓がうるさい。
凛太朗は深呼吸をして、手元に持った紙だけを見て話し始めた。
「では、体育祭競技参加者を決めます。えっと、クラスの全員が一つは競技に参加できるように実行委員からの指示が、あります」
「きこえなぁい」
「もっと大きい声で喋ってくださぁい」
急に飛んできた女子の冷たい声に驚いて、身体がビクリと震えた。
前を見るとクラスメイトの視線が凛太朗に集まっているのを全身で感じた。急に怖くなった。どうしていいのか分からず、口が震えた。
「あ、えっと、学級委員一人じゃ大変だから、誰か手伝える人いますか?」
担任の先生が助け船を出してくれたけれど、こんな急に手伝ってくれる人などいるのだろうか。凛太朗は涙が滲みそうになって下を向いた。
「俺、手伝います」
聞きなれた低い声が響いた。
「お、酒井じゃん」
「やったぁ、酒井君だ」
「おぉ、さすが酒井」
パラパラとクラスから声が響き、担任の先生の「酒井君、お願いします」と言う声が聞こえた。クラスメイトや先生の態度で、いつの間にか酒井が一目置かれる存在になっているのを知った。
酒井が教壇に来て、凛太朗に温かい目線を向けた。だが、凛太朗はいつものように微笑み返すことが出来なかった。
「凛太朗、どれから決める?」
酒井が小さな声で聞いてきた。酒井が傍にいるだけで皆の視線から守ってもらえるような気がした。
「あ、この紙に書いてあるのは、競技欄に氏名書いて提出しなきゃで……」
「じゃ、上から決めちゃおっか。俺が声かけちゃっていい?」
酒井の声にコクリと頷いた。酒井の大きな身体に隠れてしまいたかった。
「じゃ、一人ひとつは参加すること考えて、短距離走、障害物リレー、対抗リレー、大縄跳び、大玉転がしがあるので、希望の競技を五分間考えてください。一緒に出たいなど友人同士の希望があると思うので自由に席を移動して話し合って大丈夫です」
酒井は凛太朗が用意した進行の紙を見ながら仕切ってくれた。酒井が来てくれて順調にホームルームが進んだ。
助かったと思うと同時に、自分の存在がちっぽけで役立たずなのだと感じて辛かった。全部の競技の参加者がホームルーム時間内で決まって安心した。
酒井が席に戻ると、小さな拍手と「お疲れ」といった温かい声が生じた。そんな様子を見て、何故か痛む自分の心に気が付かないフリをした。
凛太朗が席に戻るとき、小さな声が聞こえた。
「なっさけなぁ。どっちが学級委員って感じ」
「ダメダメじゃん」
凛太朗の胸に突き刺さる言葉に動きを止めた。とても振り返る気持ちになれず、そのまま下を向いて自分の席に向かった。凛太朗には誰も「お疲れ」と言わない。酒井への対応と比べたら、天と地ほどの差がある。
(僕なりに、どうすれば争いなく競技を決めれるか悩んで考えたんだ。僕だって、何とかうまくやろうと思ったんだ。僕だって……)
席に戻ると悲しさと恥ずかしさが押し寄せて泣きたくなった。誰も凛太朗に声を掛けないことが救いだった。
凛太朗は前期学級委員として競技の参加者を決めなくてはいけない。だが、皆の前で話すことが凛太朗にとっては大きな苦痛だ。ロングホームルームの時間内で決められるのか、不安だらけだった。
ロングホームルームとして授業の一時間が体育祭準備に当てられている。この時間は凛太朗が前に出て仕切らなくてはいけない。教壇に立つと、それだけで凛太朗は気分が悪くなりそうだった。緊張で速くなる自分の心臓がうるさい。
凛太朗は深呼吸をして、手元に持った紙だけを見て話し始めた。
「では、体育祭競技参加者を決めます。えっと、クラスの全員が一つは競技に参加できるように実行委員からの指示が、あります」
「きこえなぁい」
「もっと大きい声で喋ってくださぁい」
急に飛んできた女子の冷たい声に驚いて、身体がビクリと震えた。
前を見るとクラスメイトの視線が凛太朗に集まっているのを全身で感じた。急に怖くなった。どうしていいのか分からず、口が震えた。
「あ、えっと、学級委員一人じゃ大変だから、誰か手伝える人いますか?」
担任の先生が助け船を出してくれたけれど、こんな急に手伝ってくれる人などいるのだろうか。凛太朗は涙が滲みそうになって下を向いた。
「俺、手伝います」
聞きなれた低い声が響いた。
「お、酒井じゃん」
「やったぁ、酒井君だ」
「おぉ、さすが酒井」
パラパラとクラスから声が響き、担任の先生の「酒井君、お願いします」と言う声が聞こえた。クラスメイトや先生の態度で、いつの間にか酒井が一目置かれる存在になっているのを知った。
酒井が教壇に来て、凛太朗に温かい目線を向けた。だが、凛太朗はいつものように微笑み返すことが出来なかった。
「凛太朗、どれから決める?」
酒井が小さな声で聞いてきた。酒井が傍にいるだけで皆の視線から守ってもらえるような気がした。
「あ、この紙に書いてあるのは、競技欄に氏名書いて提出しなきゃで……」
「じゃ、上から決めちゃおっか。俺が声かけちゃっていい?」
酒井の声にコクリと頷いた。酒井の大きな身体に隠れてしまいたかった。
「じゃ、一人ひとつは参加すること考えて、短距離走、障害物リレー、対抗リレー、大縄跳び、大玉転がしがあるので、希望の競技を五分間考えてください。一緒に出たいなど友人同士の希望があると思うので自由に席を移動して話し合って大丈夫です」
酒井は凛太朗が用意した進行の紙を見ながら仕切ってくれた。酒井が来てくれて順調にホームルームが進んだ。
助かったと思うと同時に、自分の存在がちっぽけで役立たずなのだと感じて辛かった。全部の競技の参加者がホームルーム時間内で決まって安心した。
酒井が席に戻ると、小さな拍手と「お疲れ」といった温かい声が生じた。そんな様子を見て、何故か痛む自分の心に気が付かないフリをした。
凛太朗が席に戻るとき、小さな声が聞こえた。
「なっさけなぁ。どっちが学級委員って感じ」
「ダメダメじゃん」
凛太朗の胸に突き刺さる言葉に動きを止めた。とても振り返る気持ちになれず、そのまま下を向いて自分の席に向かった。凛太朗には誰も「お疲れ」と言わない。酒井への対応と比べたら、天と地ほどの差がある。
(僕なりに、どうすれば争いなく競技を決めれるか悩んで考えたんだ。僕だって、何とかうまくやろうと思ったんだ。僕だって……)
席に戻ると悲しさと恥ずかしさが押し寄せて泣きたくなった。誰も凛太朗に声を掛けないことが救いだった。
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