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Main Story
シンデレラタイムは18時30分で
しおりを挟む「……またか」
俺は鍵をさし込んで捻るも、閉まってしまう扉に溜め息をついた。理由は分かっている。俺が仕事中に、堂々と合鍵を使って部屋に侵入するのは。
「……あ、ヒトシさんおかえり」
「妃芽、お前なぁ……」
言いかけて、言っても無駄だと思って言うのをやめた。
妃芽はいつもの位置──リビングの椅子に座ってポテトチップスを食べている。いつの間にか侵入し、いつの間にか食料を持ち込んでくつろぐ妃芽は、普通ではないと思う。学校から帰って直で来ているみたいだし。(制服だから。)
「いい加減にしてくれよなー……」
妃芽は俺が妃芽の父親に雇われているという立場上、俺が強く言えないのを分かってやってるんだ。本当に、勘弁してほしい。社長にバレたらどうなるのか、大事な娘がこんな中年の家に通ってるなんて。
俺は溜め息をつきつつ、時計を確認する。現在、17時40分。
「……18時になったら帰れよな。仕方ない、送るから」
「えー、ヒトシさんのケチ」
「そういう問題じゃない!」
俺は妃芽の向かい側に座りながら、妃芽を見た。身長と髪は伸びたが、中身は全く変わってない。
「……? なに?」
「……俺は犯罪者にはなりたくない」
妃芽はきょとんとした顔で俺を見つめたあと、言った。
「人のこと誘拐しといて、今更何を」
「……未遂だ!」
妃芽は俺の弁解を聞こうともせず、震える携帯を取り出して、誰かと電話し始めた。
「あ、パパ? うん、18時30分すぎくらいには帰るから。うん、じゃね」
そう言って電話を切った妃芽。妃芽はこちらを見たあと、いたずらをした後の子供のような笑みを浮かべた。
「30分くらい、いいよね?」
「……30分だけだからな」
「やった! ありがと、ヒトシさん!」
無邪気にはしゃぐ妃芽に、俺は隠すのも諦めて長い長い溜め息をついた。これもまるっきり、いつものパターンなのだった。
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