ヒメとツミビト。

天乃 彗

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Main Story

カボチャの馬車ではないけれど

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 18時30分ぴったりに、ヒトシさんは立ち上がって車のキーを手にした。

「ほら。いくぞ」

 私は、この瞬間が好きだ。もう少しだけ一緒に居たいからって目線を反らす私の手を、無理やり掴んで引き上げる。一瞬だけ、エスコートされてる気分。

「ヒトシさんのバカー。もっと一緒にいたいのに」
「冗談はよしてくれ」

 本気なのに、とむくれる私に、ヒトシさんは気づかない。あの日みたいに、私を置いて部屋を出ようとしたヒトシさんの背中を慌てて追いかける。駐車場までの道のり、前を歩くヒトシさんに勢いよく飛びかかり、腕に絡み付いた。

「お嬢さん、何するかね」
「いいじゃない、減るもんじゃなし」

 駐車場まで、少ししかないんだし。溜め息をつくヒトシさんを尻目に、私は頭もそっとヒトシさんに委ねた。

「ついたから離れろ」
「……けち」
「……だから」

 ヒトシさんは、また何かを言いかけて溜め息をつく。ヒトシさんを困らせるのは割と嫌いじゃない。
 私はするりとヒトシさんから離れて、助手席に乗り込んだ。

「ヒトシさんって」
「んー?」

 隣でシートベルトをつけているヒトシさんに、私は話しかける。

「何だかんだ言いつつさぁ、私のこと送ってくれるよね。いつもちゃんと」

 思わず笑みがこぼれた。ヒトシさんはエンジンをかけながらきょとんとした顔で私を見ている。

「だってお前そりゃ……当たり前だろ」

 そのまま前に向き直って、アクセルを踏んだ。「女の子なんだし」と付け加えられた言葉に、私は何も言わなかった。
 その当たり前が嬉しいんだよ。例え車が中古のボロ車でも、さすがは私の王子様だわ。笑いをこらえきれないでいると、隣から「なんだよ、気色悪い」と声がした。ちょっとムカついたから、信号待ちの間に腕をつねってあげた。
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