4 / 19
Main Story
カボチャの馬車ではないけれど
しおりを挟む
18時30分ぴったりに、ヒトシさんは立ち上がって車のキーを手にした。
「ほら。いくぞ」
私は、この瞬間が好きだ。もう少しだけ一緒に居たいからって目線を反らす私の手を、無理やり掴んで引き上げる。一瞬だけ、エスコートされてる気分。
「ヒトシさんのバカー。もっと一緒にいたいのに」
「冗談はよしてくれ」
本気なのに、とむくれる私に、ヒトシさんは気づかない。あの日みたいに、私を置いて部屋を出ようとしたヒトシさんの背中を慌てて追いかける。駐車場までの道のり、前を歩くヒトシさんに勢いよく飛びかかり、腕に絡み付いた。
「お嬢さん、何するかね」
「いいじゃない、減るもんじゃなし」
駐車場まで、少ししかないんだし。溜め息をつくヒトシさんを尻目に、私は頭もそっとヒトシさんに委ねた。
「ついたから離れろ」
「……けち」
「……だから」
ヒトシさんは、また何かを言いかけて溜め息をつく。ヒトシさんを困らせるのは割と嫌いじゃない。
私はするりとヒトシさんから離れて、助手席に乗り込んだ。
「ヒトシさんって」
「んー?」
隣でシートベルトをつけているヒトシさんに、私は話しかける。
「何だかんだ言いつつさぁ、私のこと送ってくれるよね。いつもちゃんと」
思わず笑みがこぼれた。ヒトシさんはエンジンをかけながらきょとんとした顔で私を見ている。
「だってお前そりゃ……当たり前だろ」
そのまま前に向き直って、アクセルを踏んだ。「女の子なんだし」と付け加えられた言葉に、私は何も言わなかった。
その当たり前が嬉しいんだよ。例え車が中古のボロ車でも、さすがは私の王子様だわ。笑いをこらえきれないでいると、隣から「なんだよ、気色悪い」と声がした。ちょっとムカついたから、信号待ちの間に腕をつねってあげた。
「ほら。いくぞ」
私は、この瞬間が好きだ。もう少しだけ一緒に居たいからって目線を反らす私の手を、無理やり掴んで引き上げる。一瞬だけ、エスコートされてる気分。
「ヒトシさんのバカー。もっと一緒にいたいのに」
「冗談はよしてくれ」
本気なのに、とむくれる私に、ヒトシさんは気づかない。あの日みたいに、私を置いて部屋を出ようとしたヒトシさんの背中を慌てて追いかける。駐車場までの道のり、前を歩くヒトシさんに勢いよく飛びかかり、腕に絡み付いた。
「お嬢さん、何するかね」
「いいじゃない、減るもんじゃなし」
駐車場まで、少ししかないんだし。溜め息をつくヒトシさんを尻目に、私は頭もそっとヒトシさんに委ねた。
「ついたから離れろ」
「……けち」
「……だから」
ヒトシさんは、また何かを言いかけて溜め息をつく。ヒトシさんを困らせるのは割と嫌いじゃない。
私はするりとヒトシさんから離れて、助手席に乗り込んだ。
「ヒトシさんって」
「んー?」
隣でシートベルトをつけているヒトシさんに、私は話しかける。
「何だかんだ言いつつさぁ、私のこと送ってくれるよね。いつもちゃんと」
思わず笑みがこぼれた。ヒトシさんはエンジンをかけながらきょとんとした顔で私を見ている。
「だってお前そりゃ……当たり前だろ」
そのまま前に向き直って、アクセルを踏んだ。「女の子なんだし」と付け加えられた言葉に、私は何も言わなかった。
その当たり前が嬉しいんだよ。例え車が中古のボロ車でも、さすがは私の王子様だわ。笑いをこらえきれないでいると、隣から「なんだよ、気色悪い」と声がした。ちょっとムカついたから、信号待ちの間に腕をつねってあげた。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
雪の日に
藤谷 郁
恋愛
私には許嫁がいる。
親同士の約束で、生まれる前から決まっていた結婚相手。
大学卒業を控えた冬。
私は彼に会うため、雪の金沢へと旅立つ――
※作品の初出は2014年(平成26年)。鉄道・駅などの描写は当時のものです。
溺婚
明日葉
恋愛
香月絢佳、37歳、独身。晩婚化が進んでいるとはいえ、さすがにもう、無理かなぁ、と残念には思うが焦る気にもならず。まあ、恋愛体質じゃないし、と。
以前階段落ちから助けてくれたイケメンに、馴染みの店で再会するものの、この状況では向こうの印象がよろしいはずもないしと期待もしなかったのだが。
イケメン、天羽疾矢はどうやら絢佳に惹かれてしまったようで。
「歳も歳だし、とりあえず試してみたら?こわいの?」と、挑発されればつい、売り言葉に買い言葉。
何がどうしてこうなった?
平凡に生きたい、でもま、老後に1人は嫌だなぁ、くらいに構えた恋愛偏差値最底辺の絢佳と、こう見えて仕事人間のイケメン疾矢。振り回しているのは果たしてどっちで、振り回されてるのは、果たしてどっち?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる