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02 初仕事と、それから
02
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そして──次の日の昼休み、私は先生に借りたDVD3枚を持って生徒会室にやってきた。プレイヤーは、事前に放送室のものを借りてある。……よかった。皆来てくれてる。
「ちゃっちゃと見ちゃおうぜ、放課後少しでも早く終わらせねーと」
扉の前に立っていた私に、涼介くんが貧乏揺すりをしながら言った。私は慌ててプレイヤーをセットしようとする。けど
──どこをどう繋ぐの!?
私は三色のコードと真っ黒なコードを交互に眺めながら固まってしまう。普段こんなことしないから全然分からない。どうしよう。涼介くんの貧乏揺すりの音が、私を急かしてるように感じた。
「──何をやってるんですか」
プレイヤーの前で固まっていた私に、後ろからため息混じりで声がかけられた。それと同時に、岡本くんの腕がすっと伸びてきて、手際よくプレイヤーをセットしていく。その無駄のない動きに、見入ってしまっていると、セットし終えた岡本くんが、左手を差し出してきた。
「DVD出してください」
「あっ……ハイ」
言われるがまま、持っていたDVDを差し出す。岡本くんはプレイヤーを起動させると、DVDを入れた。
「あ……ありが」
「……出来ないなら出来ないと言ってください」
「なっ!? ……出来たもん!」
「嘘はいいですから」
図星をつかれて、むっとした。人が素直にお礼を言おうとしたのに、すっかり言いそびれてしまった。何も言えないまま、プレイヤーがDVDを読み込むのを待っていると、マイマイが「きゃあ!」と声を上げた。
「な……何!?」
マイマイは他の候補のDVDを手にしたまま、わなわなと震えていた。『青空とレモンティー』というタイトルのDVDだ。タイトルからは全く内容が読み取れない。
普段はおっとりとしていて、ニコニコした表情を浮かべているマイマイの今の様子に、みんな驚きを隠せない。
「これっこれっ、駿くんが出てる映画じゃないですかぁぁっ! なかなか見つからなくて見れてなかった──」
「し、駿くん?」
「今人気絶頂の若手俳優、松井駿くんですよぉっ! 日向先輩、知らないんですか!?」
マイマイは鼻息を荒くしながら私にまくしたてる。人気絶頂の若手俳優?
「ご、ごめん、テレビ全然見ないから……」
「えええ!? 駿くんのこと知らないなんて日向先輩人生損してますよ!」
「えっそ、そこまで!?」
「最近は俳優業だけじゃなく音楽活動にも挑戦してて、ファーストシングルがこの間発売されたんですよ! さらに高学歴ってのも売りにしてて、クイズバラエティーにも引っ張りだこで! さらにさらに彼の素敵なところはファンをかなり大事にしてくれるんですよぉっ! 日向先輩! この映画にしましょ! 決定です!」
こんなに饒舌なマイマイを初めて見た。息継ぎもしていないんじゃないかって勢いだ。スイッチが入るとこうなるらしい。また新たな一面を見てしまった。
ずいずいと迫ってくる彼女から逃げるようにあとずさると、横にいた杏奈がマイマイの手からDVDを奪った。
「あら? これ、私見たことあるわ」
「え? 本当に?」
杏奈は片手でDVDのケースをひらひらさせながら言葉を続ける。
「フツーの青春ものって感じだったよ? そんな問題のあるシーンもなかったはずだし」
「駿くん何役ですか!?」
「確か……主人公の幼なじみに惚れた男の子だったかな」
「うわぁっ見たい見たいっ」
興奮からか腕をブンブン振るマイマイ。どうしようかと思っていると、ぽつりと涼介くんが呟いた。
「……ならもう、そのDVDでいいんじゃねぇの?」
「え?」
「別に問題ねーならそれでいいじゃんって。大丈夫なんだろ? 杉田ぁ」
「うん、まぁ」
「だったら他の見るまでもねぇし、そのDVDだって見なくていいじゃんよ? なぁ?」
「それは、そうだけど……」
私が口籠もると、涼介くんが勝ち誇ったような笑みを浮かべた。私から候補が書いてある紙を奪い取ると、『青空とレモンティー』に大きく丸を付けた。
「あぁっ!」
「てなわけで、解散だろ? 放課後もなし! はい、かいさーんっ」
涼介くんは、紙をヒラヒラとさせて私に渡す。そしてそのまま立ち上がると、止める間もなく生徒会室から出ていってしまった。
「じゃ、あたしも行こうかな」
「駿くんは当日の楽しみにしますー。じゃあ、そういうことでー」
「……わたしも、行きますね」
「……僕も」
「えっ、み、みんな……」
涼介くんが生徒会室からいなくなるやいなや、みんなぞろぞろと出ていってしまう。……どうしよう。杏奈は問題ないと言っていたけど、昔見た記憶ってあやふやだろうし……。
「……はぁ」
手にしたDVDをしばらく眺めて、とりあえずプレイヤーを片付けようと向き直ると、片付け終えていた岡本くんと目が合った。
「……お疲れ様です」
彼もそう言うと、すっと生徒会室から去っていった。その後ろ姿を見た後にプレイヤーを見ると、きちんとコードまでまとめられていて、ため息しか出なかった。
* * *
「ちゃっちゃと見ちゃおうぜ、放課後少しでも早く終わらせねーと」
扉の前に立っていた私に、涼介くんが貧乏揺すりをしながら言った。私は慌ててプレイヤーをセットしようとする。けど
──どこをどう繋ぐの!?
私は三色のコードと真っ黒なコードを交互に眺めながら固まってしまう。普段こんなことしないから全然分からない。どうしよう。涼介くんの貧乏揺すりの音が、私を急かしてるように感じた。
「──何をやってるんですか」
プレイヤーの前で固まっていた私に、後ろからため息混じりで声がかけられた。それと同時に、岡本くんの腕がすっと伸びてきて、手際よくプレイヤーをセットしていく。その無駄のない動きに、見入ってしまっていると、セットし終えた岡本くんが、左手を差し出してきた。
「DVD出してください」
「あっ……ハイ」
言われるがまま、持っていたDVDを差し出す。岡本くんはプレイヤーを起動させると、DVDを入れた。
「あ……ありが」
「……出来ないなら出来ないと言ってください」
「なっ!? ……出来たもん!」
「嘘はいいですから」
図星をつかれて、むっとした。人が素直にお礼を言おうとしたのに、すっかり言いそびれてしまった。何も言えないまま、プレイヤーがDVDを読み込むのを待っていると、マイマイが「きゃあ!」と声を上げた。
「な……何!?」
マイマイは他の候補のDVDを手にしたまま、わなわなと震えていた。『青空とレモンティー』というタイトルのDVDだ。タイトルからは全く内容が読み取れない。
普段はおっとりとしていて、ニコニコした表情を浮かべているマイマイの今の様子に、みんな驚きを隠せない。
「これっこれっ、駿くんが出てる映画じゃないですかぁぁっ! なかなか見つからなくて見れてなかった──」
「し、駿くん?」
「今人気絶頂の若手俳優、松井駿くんですよぉっ! 日向先輩、知らないんですか!?」
マイマイは鼻息を荒くしながら私にまくしたてる。人気絶頂の若手俳優?
「ご、ごめん、テレビ全然見ないから……」
「えええ!? 駿くんのこと知らないなんて日向先輩人生損してますよ!」
「えっそ、そこまで!?」
「最近は俳優業だけじゃなく音楽活動にも挑戦してて、ファーストシングルがこの間発売されたんですよ! さらに高学歴ってのも売りにしてて、クイズバラエティーにも引っ張りだこで! さらにさらに彼の素敵なところはファンをかなり大事にしてくれるんですよぉっ! 日向先輩! この映画にしましょ! 決定です!」
こんなに饒舌なマイマイを初めて見た。息継ぎもしていないんじゃないかって勢いだ。スイッチが入るとこうなるらしい。また新たな一面を見てしまった。
ずいずいと迫ってくる彼女から逃げるようにあとずさると、横にいた杏奈がマイマイの手からDVDを奪った。
「あら? これ、私見たことあるわ」
「え? 本当に?」
杏奈は片手でDVDのケースをひらひらさせながら言葉を続ける。
「フツーの青春ものって感じだったよ? そんな問題のあるシーンもなかったはずだし」
「駿くん何役ですか!?」
「確か……主人公の幼なじみに惚れた男の子だったかな」
「うわぁっ見たい見たいっ」
興奮からか腕をブンブン振るマイマイ。どうしようかと思っていると、ぽつりと涼介くんが呟いた。
「……ならもう、そのDVDでいいんじゃねぇの?」
「え?」
「別に問題ねーならそれでいいじゃんって。大丈夫なんだろ? 杉田ぁ」
「うん、まぁ」
「だったら他の見るまでもねぇし、そのDVDだって見なくていいじゃんよ? なぁ?」
「それは、そうだけど……」
私が口籠もると、涼介くんが勝ち誇ったような笑みを浮かべた。私から候補が書いてある紙を奪い取ると、『青空とレモンティー』に大きく丸を付けた。
「あぁっ!」
「てなわけで、解散だろ? 放課後もなし! はい、かいさーんっ」
涼介くんは、紙をヒラヒラとさせて私に渡す。そしてそのまま立ち上がると、止める間もなく生徒会室から出ていってしまった。
「じゃ、あたしも行こうかな」
「駿くんは当日の楽しみにしますー。じゃあ、そういうことでー」
「……わたしも、行きますね」
「……僕も」
「えっ、み、みんな……」
涼介くんが生徒会室からいなくなるやいなや、みんなぞろぞろと出ていってしまう。……どうしよう。杏奈は問題ないと言っていたけど、昔見た記憶ってあやふやだろうし……。
「……はぁ」
手にしたDVDをしばらく眺めて、とりあえずプレイヤーを片付けようと向き直ると、片付け終えていた岡本くんと目が合った。
「……お疲れ様です」
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