○○な副会長。

天乃 彗

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05 ひまわりコンビ、初デート?

04

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 入場料とはまた別に料金を払って(ここでもまた、葵くんに制されてしまって、不本意ながらおごられてしまった)、ふれあいコーナーの建物の中に入った。広々とした建物の中に、それぞれ柵に囲まれたブースが幾つかある。そこには、木製の看板で「こやぎ」だとか「りす」だとか、動物の名前が書いてあった。柵の中を覗くと、小さな子供たちが動物たちに触ったり抱っこしたりしている。
私の興奮はもうこの時点ですでに、MAXに近かった。

「わぁぁぁぁぁ……! ど、どうしよう! どの子から触れ合おう!?」
「どれからでもいいんじゃないでしょうか」
「じゃっ、じゃあ、まずはうさちゃんから……!」

 私は早足でウサギのブースへと向かった。笑顔の係員さんがゲートを開けてくれて、私はそそくさと中に入った。後ろから、のそりと葵くんも入ってくる。

「!? は、入るの!? 葵くんも」
「いけませんか?」
「いけなくないですけど……」

 思わず敬語が移った。もちろん、お金は払ってるわけだし葵くんにもその権利はあるけど、なんというか動物と葵くんという組み合わせがあまりにもミスマッチで、頭がついていかない。違和感がすごい。どちらかといえばここにいる動物を捕食しそうな雰囲気だし。ただでさえ小さい子たちが集まっているこの柵の中で、葵くんの存在だけが異質だ。ガリバーの体験記みたい。

「い、いじめちゃダメだよ!?」
「先輩しかいじめませんよ、俺は」

 さらりと酷いことを言いながら、葵くんは係員さんに渡された人参とかの野菜が入ったカップを片方、私に差し出した。私はそれを受け取って、早速うさちゃんに近寄ってみる。うさちゃんはしばらく差し出した野菜の匂いを嗅いだ後、シャリシャリとそれを食べ始めた。かっ……かわいいっ……! 

「かっ……かわいいよぅ……」
「あっ、何かを食べてる時じゃなければ、そっと抱っこしてあげてもいいので」
「本当ですか!? ありがとうございます!」

 抱っこ! この可愛らしい生物を抱っこできるなんて、そんな幸せなことがあってもいいのでしょうか! 私は今ご飯をあげたうさちゃんがそれを食べ終わるのを待って、そっと腕の中にうさちゃんを抱いた。さらさらでふわふわで、胸が高鳴る。

「わぁぁぁ……! 可愛いよぅ……! ねぇねぇ、葵くんも──」

 言いながら葵くんの方を見るのと同時に、葵くんの携帯のシャッター音が聞こえた。驚いて目をパチクリさせる。葵くんは当たり前のようにさっき撮った写真を保存しているようだった。

「……え!? 何で今撮ったの!?」
「いや、先輩があまりにもはしゃいでるので、面白いなと思って」
「嫌ー! 絶対私変な顔してた! 消してー!」
「いつもですから大丈夫ですよ」
「ちょっとそれどういう意味!」

 本当ならば、今すぐにでもその携帯を奪い取って画像を消したいんだけど、私の両手はあいにく、うさちゃんを抱っこしてて自由が効かない。私は頬を膨らませて葵くんを睨みつけるしかできなかった。

「あ、その顔も面白いですね」
「あっ、ちょ! 撮るなってば!」

 人の話を聞かないな! 葵くんは口角を上げて、少しだけ楽しそうに笑った。そんな顔を見せるのは珍しかったから、私は思わず動きを止めた。

「ちょっとしたら、他のブースも回りましょう。どうせウサギだけじゃ満足しないんでしょう」
「……うん」

 もしかしたら、葵くんも今、ちゃんと楽しんでるんだろうか。あの仏頂面で性格の悪い葵くんが、少しでも。そう考えたら、なんだか少しだけ嬉しくなった。私は思わずにやけてしまいそうになるのを隠すために、うさちゃんを一撫でしたのだった。


 * * *


 結局、ふれあいコーナーが終わるまでそこで過ごした。各ブースちゃんと回れたし、大満足。犬や猫とはその気になればいつでも触れ合えるけど、リスやヤギなんかとはそう簡単に触れ合えないもんね。すごく有意義な時間だった。そして、時間も時間だったから、ふれあいコーナーが終わるのと同時に、私たちは動物園を後にしたのだった。
 みんな、車で来ていたのだろうか。帰りの電車は意外にも人は少なくて、私たちは普通に座ることが出来た。

「あー! 楽しかったぁ!」
「やっぱり午後だけだとゆっくり回れませんでしたね」
「うん……でも、また来ようと思えばいつでも来れるし!」
「来る気満々ですか」

 葵くんは呆れたように小さくため息をついた。だって、また動物たちと触れ合いたいもん。

「今度は──」
「ん?」

 葵くんが、何かを言いかけた気がした。でも、全然聞き取れなくて、私は首を傾げながら聞き返す。

「……いや、やっぱりいいです」
「……? なによぅ?」
「というか、アホみたいにはしゃいで疲れたでしょう。起こしますから寝てて良いですよ」
「アホみたいに、は余計です! もう!」

 やっぱり葵くんは、一言も二言も余計だ。だから、優しさだって素直に受け取れないのよ。

──でも……。

「葵くん」
「なんですか?」
「今日はありがとね!」

 葵くんが入場券をくれなければ、こんなに楽しくて幸せな時間は過ごせなかった。だから素直に感謝。すると、葵くんはキョトンとした顔をした後、鼻で小さく笑った。

「珍しく素直じゃないですか」
「……感謝して損した!」

 人がお礼を言ってるというのに、葵くんだって本当に素直じゃない。ちょっとムカついたから、葵くんからふいっと顔を背けた。少しだけ、無言の時間が流れると、だんだん瞼が重くなってきた。思ってたより、体は疲れていたらしい。私の意思に反して、私は眠りについていったのだった。


 * * *

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