○○な副会長。

天乃 彗

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06 ネクタイと卒業式

06

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 私の案が本決まりになって、本格的に計画が動き出した。各部や先生たちに協力を仰ぎながら、映像の作成。当日の立ち回りや原稿を考えたり、機材の確認をしたり。これからやらなきゃいけないことは山のようにある。でも、仕方ない。私は会長なんだし、誰よりも頑張らないと。
 善は急げと言うし、解散後、早速明日やることのチェックをしているところだったんだけど。

「あの人に何言われたんですか」

 当然のように一緒に残っている葵くんにいきなり尋ねられる。どきり、としたのは、隠してたはずなのに尋ねられたからだと思う。

「あの人って? いきなり意味わからないこと言わないでよ葵くん」
「月島先輩に決まってるでしょう」

 なんで、なにもかもお見通しなの。と、脳内で思ったこともお見通しなようで、葵くんは私の顔をジロジロと見ながらふぅ、とため息をついた。

「帰ってきてから笑顔がわざとらしいんですよ」
「そんなことっ……!」

 そんなことないなら涼しい顔をしていればいいのに、思わずムキになってしまって、しゅるしゅると体を縮こまらせた。これじゃ認めたと同じだ。

「……なにも言われてないよ。それより、今は卒業式のこと考えないと……」

 真っ白なルーズリーフに「明日すること」と書き込んで、箇条書きにしようと点を打ったところで、ルーズリーフを奪われる。

「何するのっ」
「先輩、なんか知りませんけど、自分は会長なんだから誰よりも頑張らないととか思ってます?」

 それも図星!? たまに葵くんはエスパーなんじゃないかと思うくらい的確だ。

「思ってるよ! だって、紗夜先輩はなんでも一人で完璧にこなせて、かっこよくて……」

 紗夜先輩だから、去年の卒業式はとても素敵なものになった。だから私は先輩より頑張らないと、あれ以上のものは作れない。

「だから、俺言いましたよね? 先輩にあの人みたいになるのは無理だって──」
「無理でも! やらなきゃなんだよ!」

 思わず語気が強くなって、はっとした。八つ当たりなんかしてる場合じゃないのに。

「……ごめん」

 焦りばかりが募って、満足に周りも見えない。ぎゅっとシャーペンを握りしめたら、今日の先輩の冷たい声が思い出された。こんなだから私は、先輩に呆れられてしまったのだろうか。
 俯いていると、奪われたルーズリーフが机の上を滑って戻ってきた。いつの間に書いたのか。書こうとしていた項目が全て、葵くんの綺麗な文字で並んでいる。

「先輩が自分を叱責して無理をしすぎるドMなのは知ってましたけど……」
「……どえっ!? 今なんて……」
「先輩は先輩でしょう。あの人じゃない」

 聞きなれた、低い声で。肩の力が抜けたのは、紡がれたその言葉に安心したからだろうか。先輩みたいになりたいって、ずっと思っていた。会長として、ああなるべきだと。

「先輩にしかできない会長の姿があるんですから、力量を把握して、できないならできないと諦めてください」
「……でも」
「先輩ができないことは、俺たちがやります。その代わり、俺たちにできないことは先輩がカバーしてください。なんのための生徒会だと思ってるんですか」

 悔しいくらい、ルーズリーフは完璧に埋まっていて。葵くんだけじゃない。杏奈も、涼介くんも優子ちゃんも、マイマイも優平くんも、私にはないものをたくさん持っていて。そんな個性豊かな面々に支えられたり、逆に支えたりする──きっとそういうことを含めて、『私にしかできない会長』なんだ。
 さっきまで焦ってばっかりで、先輩みたいにって必死だったのに、不思議なくらい心が軽くなった。私は私なりに、みんなと力を合わせて頑張ればいい。また、葵くんに助けられた。葵くんがこうやって声をかけてくれてなきゃ、私は大事なことに気づけないまま、壊れてしまったかもしれない。

「……ありがと、葵くん」

 私がお礼を言うと、葵くんは何も言わず、ペンをしまって荷物をまとめ始めた。私も、今日やることは葵くんがやってくれたし、今日のところは帰ろう。思ったところで、ちょっと聞いてみたくなった。

「……ねぇ、私にしかできない会長の姿ってどんな?」
「そうですね、」

 葵くんは荷物をまとめるのをぴたりと止め、顎に手を添えて考え込んでいる。真剣に考えてくれていることに少し驚く。でも、今日の発言にしろ、何にしろ、最近の葵くんは、ちょっとは私のこと尊敬してくれてるんじゃってところが見え隠れして──。

「壇上に上っても姿が見えない会長ってのは後にも先にも先輩だけじゃないですか?」
「なっ……見えるもんー!!」

 確かにマイクの位置は絶対に調整するけど! でもそこまで低くない!! 真剣に考えていると思ったのに、前言撤回だ。葵くんは私のことなんか全くなんとも思ってない。ムカついてポカポカ腕を殴る。すると、フ、と小さく笑った葵くんが、空いてる手でぐしゃぐしゃ頭を掻き回してきて、「帰りますよ」と言った。その仕草までもなんだか優しく思えてしまって、私、相当落ち込んでたんだなって実感した。
 でも、もう大丈夫。みんなで協力して、紗夜先輩も満足できる、最高の卒業式にするんだ。

「頑張ろうね、葵くん」

 葵くんは何も言わなかった。言わなかったけど、葵くんが今、同じ気持ちだと嬉しいなって思った。


 * * *

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