○○な副会長。

天乃 彗

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06 ネクタイと卒業式

08

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 卒業生が退場し、式が終わった後、各クラスでHRをして解散となる。在校生も卒業生もそれは同じで、解散すると生徒たちは様々なところでたむろし出す。きっと別れが惜しいんだろう。何やらものを交換しあったりしてるみたいだけど、ここからじゃよく見えないし、今はそれどころではない。

「意外にー、写真減りましたねー?」
「あれだけの枚数あったのにな」

 みんなが先輩方との別れを惜しんでいる中、生徒会役員は体育館のお片づけだ。床に散らばった写真を拾い集めながら、マイマイと涼介くんが言った。二人の言うように、結構な量をばら撒いたのに、写真は半数近くなくなっている。(それでも、片付けが大変なのには変わりないんだけど。)

「でも、結構いい案だったんじゃないですか? 日向先輩にしては」
「私にしては、は余計!」

 べーっと葵くんに舌を出してみせる。自分でも、今回の計画は良かったと思う。でも──先輩には、どう映ったかな、私の仕事。外が騒がしいし、卒業生たちが別れを惜しんでいるのだろう。このまま紗夜先輩にろくにお別れも言えず、サヨナラなのだろうか。そんなのは嫌だ。ありがとうも何も、先輩に伝えられてないのに。なんだか泣きそうになっていると、プロジェクターを片付けに行っていた杏奈と野澤姉弟が戻ってきた。

「ただいま戻りました」
「いやー、今年もみんなやってるねぇ、ア・レ」

 ニヤリと笑った杏奈が葵くんを見る。葵くんはハッとして、喉元を抑えた。「アレ」ってなんだろう? 杏奈に尋ねようとしたところで、優子ちゃんに声をかけられた。

「日向さん。あの、紗夜先輩が呼んでました」
「え!?」
「生徒会室で待ってるって」

 紗夜先輩が、私を? そう聞いたらいてもたってもいられなくなる。

「~~~っ、みんな、ごめん! ちょっとだけ抜けて生徒会室行ってくる! ごめんね!!」

 そう言い残して、私は体育館を飛び出した。早く、早く行かなくちゃ。今までで一番じゃないかって思うくらいの速度で、生徒会室まで駆けていく。
 がらりと勢いよく扉を開けると、中にいた紗夜先輩が、ゆっくりこちらに振り向いた。言いたいことがたくさんあったのに、先輩を前にしたら何を言っていいのかわからなくなってしまって、息が詰まる。どうしよう。

「……卒業式、お疲れ様。日向ちゃん」

 先に口を開いたのは先輩だった。先輩は口元だけで笑いながら、言葉を繋げる。

「素敵な演出だった。クラスの子達、みんな写真持ち帰ってた。思い出に残ったって、みんな言ってたわ。もらった写真にメッセージ書き合ったりしてる子もいたし、とてもいい案ね。考えたのは日向ちゃん?」
「は、はい! 先輩に褒めて貰えるなんて、光栄です」

 先輩にも、ちゃんと見てもらえてた。それが嬉しくって、目頭が熱くなる。先輩はポケットから一枚、写真を取り出した。その写真が私と先輩が写っている写真だと気づくのはすぐだった。先輩、拾ってくれてたんだ。

「わたしも、貰っちゃった。うふふ」
「すごく、嬉しいです。満足してもらえて……」

 先輩は懐かしむように写真を見つめて、ポツリポツリと話し出した。

「……わたしね、寂しかったんだと思うの」
「え?」
「いままでわたしを“先輩先輩”って慕ってくれてた日向ちゃんが、私がいなくてもちゃんと会長やってるのが。日向ちゃんは日向ちゃんらしく、なんて言っといて、酷いわよね。ごめんなさい」

 先輩は長い睫毛を伏せながら、写真を指でなぞる。

「だからね、日向ちゃんはわたしと過ごした日々なんてもう忘れちゃってるんだって、思っちゃったの」
「そんなわけないじゃないですか!」
「うん。だからね、今日の日向ちゃんの言葉を聞いて安心した。日向ちゃんと過ごした日々は、わたしにとっても宝物だもの」

 先輩はにっこりと笑った。私もつられて笑うと、先輩はしゅるっと自身のネクタイを外した。

「? どうしたんですか、先輩」
「これ、日向ちゃんにもらってほしいの」

 先輩が、私にネクタイを差し出して言った。急なことにどうしていいのかわからないでいると、先輩が言葉を続けた。

「わたしと日向ちゃんの思い出の証。いつでも思い出してほしいもの」
「でも、ネクタイなんて……」
「わたしがあげたいんだからいいの! 受け取って?」

 すると、無理やり先輩にネクタイを握らされてしまう。それをつき返すのもどうかと思えて、まじまじと見つめる。ネクタイなんて、もらっちゃってもいいのかな……。

「その代わりと言ってはなんなんだけど」
「はい?」
「その……日向ちゃんのネクタイ……」
「え? ネクタイ──?」

 ドン! と音がして、心臓が飛び出るほど驚いた。その音のあまりの大きさに、最初は扉が乱暴に開かれた音だとは気がつかなかったほどだ。

「あっ……葵くん!?」

 振り返ると、息を切らした葵くんがヅカヅカと中に入ってくる。なんだか焦った様子だったから、「扉は丁寧に開けなさい」なんて小言はすぐには言えなかった。

「日向先輩……顧問が呼んでました」
「えっ、嘘? 急ぎ?」
「そうですね」
「もー! こんな時にっ」

 急ぎの用だから、葵くんも慌てて来てくれたんだな。せっかくゆっくり紗夜先輩とお別れできると思ったのに、そうは行かなそうだ。

「先輩、もうお帰りですよね? 大学行ってからも、ぜひ遊びに来てください! 待ってますから!」
「え、ええ……ぜひ」
「先輩と生徒会できて、本当に楽しかったです! 今まで本当にありがとうございました! 卒業おめでとうございます! 大学行っても頑張ってくださいね!」
「ええ……ありがとう」
「じゃあ、私行きますね!」

 よかった、ギリギリだったけど言えた。先輩への今までの感謝と、おめでとうの言葉。先輩に褒めてもらえたし、先輩と気まずいままお別れってことにならなくて済んだし、ネクタイまでもらっちゃったし、これでようやく、卒業式完走できたって感じだ。安心したら、自然と笑みがこぼれた。


 * * *

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