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Let the double date!
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幾つかのアトラクションを巡ってのち、俺は少し考えた。
「未来ちゃん、次どれ行く?」
「……えと、」
「回る系、落ちる系、速い系? それかお化け屋敷とか乗らないやつもあるよ!」
「……じゃあ、回る系」
「うん、決定ね! 行こっ」
仮にもデートであるはずなんだけど、おかしい。デートって、カップルで楽しむもののはずなんだけど……何故俺は吉田の隣を歩いているのか。どうしてか、友里ちゃんばっかり未来のそばにいる。俺らの数歩先をずんずん進む友里ちゃんと未来を眺めた後、横にいる吉田のことを見る。友里ちゃん大好きな吉田も、この状況には納得してないんじゃないか? 畜生電波、俺の友里を独占しやがって……みたいな。でも実際の吉田は涼しい顔をしていた。
──あれ……意外。
「……んだよ? 変な顔して」
「あ、いや。えーっと」
逆に俺が変な顔してたみたいだ。慌てて頬をぺしぺし叩く。
「なんか、全然ダブルデートっぽくないなって思って」
「そりゃそうだ。友里はそのつもりで来てねーもん」
「え!?」
予想外の返答に、思わず声が裏返った。どういうこと? だって、友里ちゃんが言い出したんじゃないか、“ダブルデートがしたい”って。デートしたことがないなら、尚更行こうとも。考えたことが顔に出ていたのだろう。吉田はやれやれといった風にため息をつくと、友里ちゃんたちの方をちらりと見て声を抑えた。
「……あいつ、お前からお前らが付き合った経緯聞いたろ。んで、電波の父親のことも聞いた。そんで、そのあとに俺もお前から聞いた電波の“見る”能力のことも友里に言ったんだよ」
「えっ? い、言ったの!? おま、そんな軽々しく人の彼女の秘密……!」
「まぁいいだろ、友里だし。で、友里が言いだしたんだよ。“もしかしたら未来ちゃん、今まで友達とかも作れかったんじゃないかな”って。“『友達』と過ごす時間を、知らないんじゃないかな”って──」
吉田のその言葉に、ハッとした。それと同時に、俺は本当に周りが見れてないんだと痛感した。確かに、俺は未来から友達の話を聞いたことはない。俺が吉田や他の友達の話を未来にする時は、いつも黙ってそれを聞いていたんだ。
「だから友里は、自分が電波にそういう楽しさを教えてあげたいんだと。ダブルデートって言っとけば誘いやすいしってさ」
未来のこと。それと、友里ちゃんの真意。それに気づけない俺ってやっぱりダメダメだな、と自己嫌悪に陥る。
「……俺、彼氏失格かも」
「バーカ、彼氏だから、だろ。きっと大事な人に心配かけさせたくないから言わないんだろうって友里も言ってたわ」
「友里ちゃん……」
「それに晃太くんも鈍感だし、ってな」
「友里ちゃんんんぅ……」
痛いところを突かれて、がっくりと肩を落とす。そんな俺を見て、吉田はけたけたと笑った。
「“彼氏には彼氏にしかできないことがあるから、私は晃太くんにはできない、未来ちゃんの友達としてできる限りのことをしてあげたい”って言ってたぜ」
「……友里ちゃん……」
未来のために、俺にしかできないこと──今はまだそれが何か分からない。彼氏としてちゃんとできてるかも分からないけど。未来のために頑張ってくれてる友里ちゃんの優しさが、素直に嬉しく思った。多分友里ちゃんが言ったとおり、力のせいで人とうまく関係が築けなかっただろう未来に、友達として手を差し伸べてくれている。それはきっと、未来にとっての希望の光になるはずだ。
「いい女だろ? 俺の女だ、やらん」
「知ってる」
誇らしげに笑う吉田に、俺も笑い返した。すると、いつの間にかはるか遠くに行っていた友里ちゃんが、「おーい! マサー! 晃太くーん!」と声を張り上げた。
* * *
「へへっ楽しいなぁ」
不意に友里がそう呟いた。未来は何と言っていいのかわからず口をつぐむ。男二人を放ってずんずん歩く友里に、未来は困惑していた。友里は未来がはぐれてしないようにか、未来の手をしっかり握っている。そんなことをしたら、心の中を見ようと思えばいくらでも見れてしまうのに。
──私の力のことを、知らないのだろうか。
知っていたら、こんな風には接してこないはずだ。気持ちが悪いと、そう思うはずだ。でも、力のことを知らないなら知らないで、嫌だ。知られた時、離れて行ってしまうから。それに、見ようとしなくても見えてしまうから。──その心の裏が、見えてしまうから。もうそんな思いは、したくない。
その時、友里の手のひらに力がグッと込められた。その瞬間に、見ようと意識してなかった友里の心が、自ずと見えてしまった。まずわかったのは、友里が未来の力をきちんと理解してるということ。それなのに、しっかりと手を繋がれている。
「楽しいなぁ」と、さっき友里は声を漏らした。言葉と心が裏腹な人間は少なくない。しかし友里は、この状況を心から楽しんでいるようだった。その上──
「私ね、未来ちゃんと仲良くなりたいんだ。本当だよ」
心の中に浮かんだ通りの言葉をかけられ、未来は何も言えなかった。そんなことを言われたのは、初めてだったのだ。晃太以外の人間に、そんなことを思われたのも。だからどうしていいのか、分からない。分からないけれど、今この時間が楽しく感じるのも、友里のその気持ちが嬉しいのも、確かで。なんと言っていいのか分からず──ただその手を、そっと握り返した。友里は少し驚いたように未来を見たが、やがてにっこりと微笑んだ。
「未来ちゃん、チュロス食べよ?」
「……チュロス……」
「てか、あの二人も食べるかな? おーい! マサー! 晃太くーん!」
友里が振り返って声を張ると、遅く歩いていた二人が早足でこちらにやってきたのだった。
* * *
「未来ちゃん、次どれ行く?」
「……えと、」
「回る系、落ちる系、速い系? それかお化け屋敷とか乗らないやつもあるよ!」
「……じゃあ、回る系」
「うん、決定ね! 行こっ」
仮にもデートであるはずなんだけど、おかしい。デートって、カップルで楽しむもののはずなんだけど……何故俺は吉田の隣を歩いているのか。どうしてか、友里ちゃんばっかり未来のそばにいる。俺らの数歩先をずんずん進む友里ちゃんと未来を眺めた後、横にいる吉田のことを見る。友里ちゃん大好きな吉田も、この状況には納得してないんじゃないか? 畜生電波、俺の友里を独占しやがって……みたいな。でも実際の吉田は涼しい顔をしていた。
──あれ……意外。
「……んだよ? 変な顔して」
「あ、いや。えーっと」
逆に俺が変な顔してたみたいだ。慌てて頬をぺしぺし叩く。
「なんか、全然ダブルデートっぽくないなって思って」
「そりゃそうだ。友里はそのつもりで来てねーもん」
「え!?」
予想外の返答に、思わず声が裏返った。どういうこと? だって、友里ちゃんが言い出したんじゃないか、“ダブルデートがしたい”って。デートしたことがないなら、尚更行こうとも。考えたことが顔に出ていたのだろう。吉田はやれやれといった風にため息をつくと、友里ちゃんたちの方をちらりと見て声を抑えた。
「……あいつ、お前からお前らが付き合った経緯聞いたろ。んで、電波の父親のことも聞いた。そんで、そのあとに俺もお前から聞いた電波の“見る”能力のことも友里に言ったんだよ」
「えっ? い、言ったの!? おま、そんな軽々しく人の彼女の秘密……!」
「まぁいいだろ、友里だし。で、友里が言いだしたんだよ。“もしかしたら未来ちゃん、今まで友達とかも作れかったんじゃないかな”って。“『友達』と過ごす時間を、知らないんじゃないかな”って──」
吉田のその言葉に、ハッとした。それと同時に、俺は本当に周りが見れてないんだと痛感した。確かに、俺は未来から友達の話を聞いたことはない。俺が吉田や他の友達の話を未来にする時は、いつも黙ってそれを聞いていたんだ。
「だから友里は、自分が電波にそういう楽しさを教えてあげたいんだと。ダブルデートって言っとけば誘いやすいしってさ」
未来のこと。それと、友里ちゃんの真意。それに気づけない俺ってやっぱりダメダメだな、と自己嫌悪に陥る。
「……俺、彼氏失格かも」
「バーカ、彼氏だから、だろ。きっと大事な人に心配かけさせたくないから言わないんだろうって友里も言ってたわ」
「友里ちゃん……」
「それに晃太くんも鈍感だし、ってな」
「友里ちゃんんんぅ……」
痛いところを突かれて、がっくりと肩を落とす。そんな俺を見て、吉田はけたけたと笑った。
「“彼氏には彼氏にしかできないことがあるから、私は晃太くんにはできない、未来ちゃんの友達としてできる限りのことをしてあげたい”って言ってたぜ」
「……友里ちゃん……」
未来のために、俺にしかできないこと──今はまだそれが何か分からない。彼氏としてちゃんとできてるかも分からないけど。未来のために頑張ってくれてる友里ちゃんの優しさが、素直に嬉しく思った。多分友里ちゃんが言ったとおり、力のせいで人とうまく関係が築けなかっただろう未来に、友達として手を差し伸べてくれている。それはきっと、未来にとっての希望の光になるはずだ。
「いい女だろ? 俺の女だ、やらん」
「知ってる」
誇らしげに笑う吉田に、俺も笑い返した。すると、いつの間にかはるか遠くに行っていた友里ちゃんが、「おーい! マサー! 晃太くーん!」と声を張り上げた。
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「へへっ楽しいなぁ」
不意に友里がそう呟いた。未来は何と言っていいのかわからず口をつぐむ。男二人を放ってずんずん歩く友里に、未来は困惑していた。友里は未来がはぐれてしないようにか、未来の手をしっかり握っている。そんなことをしたら、心の中を見ようと思えばいくらでも見れてしまうのに。
──私の力のことを、知らないのだろうか。
知っていたら、こんな風には接してこないはずだ。気持ちが悪いと、そう思うはずだ。でも、力のことを知らないなら知らないで、嫌だ。知られた時、離れて行ってしまうから。それに、見ようとしなくても見えてしまうから。──その心の裏が、見えてしまうから。もうそんな思いは、したくない。
その時、友里の手のひらに力がグッと込められた。その瞬間に、見ようと意識してなかった友里の心が、自ずと見えてしまった。まずわかったのは、友里が未来の力をきちんと理解してるということ。それなのに、しっかりと手を繋がれている。
「楽しいなぁ」と、さっき友里は声を漏らした。言葉と心が裏腹な人間は少なくない。しかし友里は、この状況を心から楽しんでいるようだった。その上──
「私ね、未来ちゃんと仲良くなりたいんだ。本当だよ」
心の中に浮かんだ通りの言葉をかけられ、未来は何も言えなかった。そんなことを言われたのは、初めてだったのだ。晃太以外の人間に、そんなことを思われたのも。だからどうしていいのか、分からない。分からないけれど、今この時間が楽しく感じるのも、友里のその気持ちが嬉しいのも、確かで。なんと言っていいのか分からず──ただその手を、そっと握り返した。友里は少し驚いたように未来を見たが、やがてにっこりと微笑んだ。
「未来ちゃん、チュロス食べよ?」
「……チュロス……」
「てか、あの二人も食べるかな? おーい! マサー! 晃太くーん!」
友里が振り返って声を張ると、遅く歩いていた二人が早足でこちらにやってきたのだった。
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