9 / 17
第9話 自傷少女①
しおりを挟む
絶え間ない笑顔が特徴的な冒険者ギルド受付員に話をかける
「クエストをお願いします。ちなみに今日から冒険者活動再開するのでよろしくお願いします」
「ん……新人君ですか? 私はミエハ。登録はした? しないとクエストは受けられないからね」
「大丈夫です。多分、半年前くらいかな、たまたま出会った副ギルド長に直々に登録してくれました。これ、登録カードです」
金属のカードを出す。受付嬢のミエハは素早く手続きし、返却した。
「そか。じゃあ、どんなクエストにする? 今のおすすめは繁殖期で増えているモンスターの討伐の報酬が中々いいと思う。けど割と狩りまくってて個体数少なくなってるから少し北に行ったほうがいいかも」
「なんか注意することとかあります?」
「あー、先月に雷弧が出現したって言う報告が北にあるホク領の方であったけどそれからの進展は聞かないから見間違えだと思う。森自体はこのクリア領とホク領で繋がってはいるもののそんな心配はしないで平気じゃないかな。まあ確実に誤報だよ。おとぎ話だもん」
「なるほど。ちなみにそういう想定外の魔物の討伐代は出ないのですか?」
心配性だが用意周到に越したことはない。
ミエハは笑いながら教えた。
「ああ、そういう場合は死体を直接持ってきてもいいけど、それだと荷物がかさばるからお金になる部位だけ持ってくるのもありだね。そもそも雷弧なんて伝説上の魔物だよ。少なくともこんな人里にいるわけないから安心しな」
今回のクエストは、慣れを目標にして選ぶ。特別なクエストなど選ぶ必要性がイロハにはないため普通のおすすめクエストを選択した。
今回はシュガーズ傭兵団の仕事では無い。
異世界での冒険。RPG程度の知識しか持っていないがそれでもできる限りの準備はする予定だ。
「クエストの期限は十四日以内。指定個数は特になし。まあ、いつもの売価にちょっとした色がつく感じです。頑張ってくださいね」
ミエハは軽く手を振り奥に行ってしまう。他の冒険者の手続きなどはいいのかと後ろを確認するが誰も並んでいなかった。基本的にこの時間はそんなに混まない。
「……さて、準備しないと。準備しないときっと痛いだろうから」
■ ■ ■
カーン…コン…カーン…コン
鉄を叩く音が何種類もの音程で重なる。
たまに鍛冶職人の家族らしい人が忙しそうに家の前の掃除などをしていた。
「……やっぱり黒の方がよかった」
ククルトから餞別で貰った白いマントがやけに視線を集めている気がした。
羞恥を頭の片隅に捨て、広場の椅子に座る。
背中に伝わる噴水の水音が気持ちいい。
「……ああ、そうだった。俺は音を聞くのが好きだった」
不意に思い出した。前世と言ってもいいのかは分からないが、取りあえず前世の自分は、今のように公園などのベンチで様々な自然の音を聞くのが好きだった。
よくそうしていたのに、久しぶりに思い出した。
まだ前世はだいぶ引きずってしまっている。転生したからといって捨てきれるものでもない。
「ねぇ」
不意に声をかけられた。鈴のように透き通った声だ。
「貴方が私の救世主?」
噴水に耳を傾け、目は閉じていたが声の主は知っている。
ククルトが、まともに武器や防具を持っていないイロハに気を使い合わせてくれた人物だ。
ククルトの友人の友人で、変人で狂人。
関わっていいことはないという一流の鍛治職人を紹介された。
待ち合わせは今いる場所だった。つまり彼女がそうなのだろう。
イロハが目を開くとそこには予想とはかけ離れた美人がいた。声からして女性というのは予想していたが、とてつもなく美しい少女だ。
噴水から零れた水のように輝く青い髪。長いまつ毛の下にある大きな瞳。服装は鍛治職人に似つかわしくないフリルの付いたミニスカート。長袖から出る包帯を巻いた腕は少女の細腕そのものだった。腰には不釣り合いなハンマーらしきものがぶら下がっていた。
どこか儚く弱気な様子の彼女。
「君が俺の防具とかを揃えてくれるサラさん?」
「私はサラ。あってる。ね、質問に答えてはくれない、の?」
意図が分からないことから、あえて無視したことを追求される。
用事はさっさと済ませようと会話を合わせる。
「救世主?とやらがどんな隠語なのか知らないし、何を求めるのかは分からないけど代金はしっかり払いますよ。先生からは手持ちで絶対足りると聞いたから一応全財産を持ってきています。俺は早いところ生活の基盤を揃えたいんですよ」
サラはイロハの手を取り、握る。
こそばゆい感覚にくすぐったく落ち着かない。
まるで子供のようなイロハの反応が面白くてサラは笑う。上品な笑みは到底鍛治職人に見えなかった。貴族のほうがしっくりくる。
「かわいいね。確かに私が作る武器と防具の代価は誰でも払え、る。こんなに綺麗でかわいい君が払ってくれるかは、分からないけど、取り敢えず私の家までおい、で」
やや吃音症なのか、サラは独特な話し方をする。
「かわいいって……男に言うか。まあ、よろしくお願いします」
「クエストをお願いします。ちなみに今日から冒険者活動再開するのでよろしくお願いします」
「ん……新人君ですか? 私はミエハ。登録はした? しないとクエストは受けられないからね」
「大丈夫です。多分、半年前くらいかな、たまたま出会った副ギルド長に直々に登録してくれました。これ、登録カードです」
金属のカードを出す。受付嬢のミエハは素早く手続きし、返却した。
「そか。じゃあ、どんなクエストにする? 今のおすすめは繁殖期で増えているモンスターの討伐の報酬が中々いいと思う。けど割と狩りまくってて個体数少なくなってるから少し北に行ったほうがいいかも」
「なんか注意することとかあります?」
「あー、先月に雷弧が出現したって言う報告が北にあるホク領の方であったけどそれからの進展は聞かないから見間違えだと思う。森自体はこのクリア領とホク領で繋がってはいるもののそんな心配はしないで平気じゃないかな。まあ確実に誤報だよ。おとぎ話だもん」
「なるほど。ちなみにそういう想定外の魔物の討伐代は出ないのですか?」
心配性だが用意周到に越したことはない。
ミエハは笑いながら教えた。
「ああ、そういう場合は死体を直接持ってきてもいいけど、それだと荷物がかさばるからお金になる部位だけ持ってくるのもありだね。そもそも雷弧なんて伝説上の魔物だよ。少なくともこんな人里にいるわけないから安心しな」
今回のクエストは、慣れを目標にして選ぶ。特別なクエストなど選ぶ必要性がイロハにはないため普通のおすすめクエストを選択した。
今回はシュガーズ傭兵団の仕事では無い。
異世界での冒険。RPG程度の知識しか持っていないがそれでもできる限りの準備はする予定だ。
「クエストの期限は十四日以内。指定個数は特になし。まあ、いつもの売価にちょっとした色がつく感じです。頑張ってくださいね」
ミエハは軽く手を振り奥に行ってしまう。他の冒険者の手続きなどはいいのかと後ろを確認するが誰も並んでいなかった。基本的にこの時間はそんなに混まない。
「……さて、準備しないと。準備しないときっと痛いだろうから」
■ ■ ■
カーン…コン…カーン…コン
鉄を叩く音が何種類もの音程で重なる。
たまに鍛冶職人の家族らしい人が忙しそうに家の前の掃除などをしていた。
「……やっぱり黒の方がよかった」
ククルトから餞別で貰った白いマントがやけに視線を集めている気がした。
羞恥を頭の片隅に捨て、広場の椅子に座る。
背中に伝わる噴水の水音が気持ちいい。
「……ああ、そうだった。俺は音を聞くのが好きだった」
不意に思い出した。前世と言ってもいいのかは分からないが、取りあえず前世の自分は、今のように公園などのベンチで様々な自然の音を聞くのが好きだった。
よくそうしていたのに、久しぶりに思い出した。
まだ前世はだいぶ引きずってしまっている。転生したからといって捨てきれるものでもない。
「ねぇ」
不意に声をかけられた。鈴のように透き通った声だ。
「貴方が私の救世主?」
噴水に耳を傾け、目は閉じていたが声の主は知っている。
ククルトが、まともに武器や防具を持っていないイロハに気を使い合わせてくれた人物だ。
ククルトの友人の友人で、変人で狂人。
関わっていいことはないという一流の鍛治職人を紹介された。
待ち合わせは今いる場所だった。つまり彼女がそうなのだろう。
イロハが目を開くとそこには予想とはかけ離れた美人がいた。声からして女性というのは予想していたが、とてつもなく美しい少女だ。
噴水から零れた水のように輝く青い髪。長いまつ毛の下にある大きな瞳。服装は鍛治職人に似つかわしくないフリルの付いたミニスカート。長袖から出る包帯を巻いた腕は少女の細腕そのものだった。腰には不釣り合いなハンマーらしきものがぶら下がっていた。
どこか儚く弱気な様子の彼女。
「君が俺の防具とかを揃えてくれるサラさん?」
「私はサラ。あってる。ね、質問に答えてはくれない、の?」
意図が分からないことから、あえて無視したことを追求される。
用事はさっさと済ませようと会話を合わせる。
「救世主?とやらがどんな隠語なのか知らないし、何を求めるのかは分からないけど代金はしっかり払いますよ。先生からは手持ちで絶対足りると聞いたから一応全財産を持ってきています。俺は早いところ生活の基盤を揃えたいんですよ」
サラはイロハの手を取り、握る。
こそばゆい感覚にくすぐったく落ち着かない。
まるで子供のようなイロハの反応が面白くてサラは笑う。上品な笑みは到底鍛治職人に見えなかった。貴族のほうがしっくりくる。
「かわいいね。確かに私が作る武器と防具の代価は誰でも払え、る。こんなに綺麗でかわいい君が払ってくれるかは、分からないけど、取り敢えず私の家までおい、で」
やや吃音症なのか、サラは独特な話し方をする。
「かわいいって……男に言うか。まあ、よろしくお願いします」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~
北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。
実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。
そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。
グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・
しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。
これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
転生者は冒険者となって教会と国に復讐する!
克全
ファンタジー
東洋医学従事者でアマチュア作家でもあった男が異世界に転生した。リアムと名付けられた赤子は、生まれて直ぐに極貧の両親に捨てられてしまう。捨てられたのはメタトロン教の孤児院だったが、この世界の教会孤児院は神官達が劣情のはけ口にしていた。神官達に襲われるのを嫌ったリアムは、3歳にして孤児院を脱走して大魔境に逃げ込んだ。前世の知識と創造力を駆使したリアムは、スライムを従魔とした。スライムを知識と創造力、魔力を総動員して最強魔獣に育てたリアムは、前世での唯一の後悔、子供を作ろうと10歳にして魔境を出て冒険者ギルドを訪ねた。
アルファポリスオンリー
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる