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第10話 自傷少女②
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イロハはサラに促されるままに工房に着いていった。
「ここが私の工房。君が対価を滞りなく払ってくれれ、ば、私が全身全霊で君の武器と防具を作ってあげる、よ」
工房は大きな一軒家程の大きさをしていた。蔓に縛られた外壁は所々剥がれ落ちており地面にはそのままなのか割れた外壁が散らばっていた。外にかかる看板からも年季が感じられる。
玄関に入る前に先に聞こうとイロハは聞いた。
「結局、対価って幾らですか? ここまでどれだけ聞いても明かしてくれないじゃないですか」
ずっとここに来るまで、サラがたわいも無い話題をイロハに投げかけ、一言二言話したらまた、サラがイロハに次の話題を問いかけるという事が延々と繰り返されていた。
イロハは変な気まずさを感じながらも久しぶりの平凡な会話を楽しんだ。しかし、どれだけ対価を聞いても対価とやらの値段や物など、一つとして答えはしなかった。
一方サラも内心で久しぶりの人との会話をかみしめていた。
「私の求める対価は金銭じゃない、の。お金は過去の栄光で腐るほど持っている、から」
じゃあ、何を。そう問いかけようとしたイロハの動きを止めたのはサラの突然の奇行。
手首の包帯をシュルシュルと床に落とし、近くにおいてあったナイフで自分の手首を切り裂いた。
明らかに出ては行けない量の血液がサラの手首から出ていた。
「なっ!」
イロハは声を上げることしか出来なかったが、サラは焦る様子も無く自分の手首に口を付け、自分の血液を喉に通していった。
小ぶりな唇からは飲み損ねた血が顎の輪郭に沿って流れた。
サラは上目遣いでイロハを見つめる。動きを止めたイロハにサラは詰め寄り、顔を近づけ口の中を見せた。口の中には真っ赤な血が溜まっていた。見せびらかした後、微笑を浮かべながら腕を広げる。
「私の能力『血の恩恵。血の代償』です。1日に最低、他人の血液をコップ1杯分飲まなければ生きられないです、し、一週間でも欠かせばそのまま死んじゃう、けど、恩恵として効果の高い付加武器と付加防具を、作れる。いわば呪いみたいなもの」
「……」
「今週分は衛生的な友達に貰いました、ので大丈夫です。なので来週からお願いしたい、の。これ、みんなは気持ち悪がるけど私は慣れちゃった。えへへ、後遺症みたい、残っちゃっ、た」
言葉が出なかった。
「私が求めるのは安定した血液の提供。それと実はもう一つある、けどそっちは別の件だから、取りあえず、最初の条件だけ達成してくれるなら、武器と防具一式は作ってあげる、よ。どう?」
ククルトがイロハに紹介したのはそれがイロハにとって簡単に成せる条件だから。イロハ自身もそれは了承していた。
答えるのに時間がかかったのはただ、単純に見とれていた。
「君みたいな子なら男でもいいし。可愛い女の子の血ならもっと歓迎。条件が厳しすぎて毎日生きるのも大変なんだ。だから私を救ってくれる人が欲しいの。理想は死の危険が消えて、血への依存も無くなって、一緒に私を傷つけてくれる優しくて強い人」
サラの小さな体にそんな大量の血液は無い。そんな生命力は無い。それでもナイフで皮膚を切って死を催促している。
「ねえ。お願い。私を救ってくれる?……ん。美味しい」
異常だ。少女は狂っている。超能力に狂わせられている。いや、狂ってしまった。
唾を飲み込んだ。生暖かい唾の味がした。
「お願い」
鈴の音が思考を狂わす。平穏が遠ざかる足音を聞いた気がした。
「……ああ……ど、努力します」
うなずいてしまった。きっとありえない取引を成立させてしまった。
血液を飲んで、能力付きの武具を生み出す自傷癖の少女は、悪魔のように美しい。
異世界がスローペースで俺の倫理を侵食していくのが分かった、
「……それと、もう一つの条件とは?」
「ふふ。私の所有、についてです」
「ここが私の工房。君が対価を滞りなく払ってくれれ、ば、私が全身全霊で君の武器と防具を作ってあげる、よ」
工房は大きな一軒家程の大きさをしていた。蔓に縛られた外壁は所々剥がれ落ちており地面にはそのままなのか割れた外壁が散らばっていた。外にかかる看板からも年季が感じられる。
玄関に入る前に先に聞こうとイロハは聞いた。
「結局、対価って幾らですか? ここまでどれだけ聞いても明かしてくれないじゃないですか」
ずっとここに来るまで、サラがたわいも無い話題をイロハに投げかけ、一言二言話したらまた、サラがイロハに次の話題を問いかけるという事が延々と繰り返されていた。
イロハは変な気まずさを感じながらも久しぶりの平凡な会話を楽しんだ。しかし、どれだけ対価を聞いても対価とやらの値段や物など、一つとして答えはしなかった。
一方サラも内心で久しぶりの人との会話をかみしめていた。
「私の求める対価は金銭じゃない、の。お金は過去の栄光で腐るほど持っている、から」
じゃあ、何を。そう問いかけようとしたイロハの動きを止めたのはサラの突然の奇行。
手首の包帯をシュルシュルと床に落とし、近くにおいてあったナイフで自分の手首を切り裂いた。
明らかに出ては行けない量の血液がサラの手首から出ていた。
「なっ!」
イロハは声を上げることしか出来なかったが、サラは焦る様子も無く自分の手首に口を付け、自分の血液を喉に通していった。
小ぶりな唇からは飲み損ねた血が顎の輪郭に沿って流れた。
サラは上目遣いでイロハを見つめる。動きを止めたイロハにサラは詰め寄り、顔を近づけ口の中を見せた。口の中には真っ赤な血が溜まっていた。見せびらかした後、微笑を浮かべながら腕を広げる。
「私の能力『血の恩恵。血の代償』です。1日に最低、他人の血液をコップ1杯分飲まなければ生きられないです、し、一週間でも欠かせばそのまま死んじゃう、けど、恩恵として効果の高い付加武器と付加防具を、作れる。いわば呪いみたいなもの」
「……」
「今週分は衛生的な友達に貰いました、ので大丈夫です。なので来週からお願いしたい、の。これ、みんなは気持ち悪がるけど私は慣れちゃった。えへへ、後遺症みたい、残っちゃっ、た」
言葉が出なかった。
「私が求めるのは安定した血液の提供。それと実はもう一つある、けどそっちは別の件だから、取りあえず、最初の条件だけ達成してくれるなら、武器と防具一式は作ってあげる、よ。どう?」
ククルトがイロハに紹介したのはそれがイロハにとって簡単に成せる条件だから。イロハ自身もそれは了承していた。
答えるのに時間がかかったのはただ、単純に見とれていた。
「君みたいな子なら男でもいいし。可愛い女の子の血ならもっと歓迎。条件が厳しすぎて毎日生きるのも大変なんだ。だから私を救ってくれる人が欲しいの。理想は死の危険が消えて、血への依存も無くなって、一緒に私を傷つけてくれる優しくて強い人」
サラの小さな体にそんな大量の血液は無い。そんな生命力は無い。それでもナイフで皮膚を切って死を催促している。
「ねえ。お願い。私を救ってくれる?……ん。美味しい」
異常だ。少女は狂っている。超能力に狂わせられている。いや、狂ってしまった。
唾を飲み込んだ。生暖かい唾の味がした。
「お願い」
鈴の音が思考を狂わす。平穏が遠ざかる足音を聞いた気がした。
「……ああ……ど、努力します」
うなずいてしまった。きっとありえない取引を成立させてしまった。
血液を飲んで、能力付きの武具を生み出す自傷癖の少女は、悪魔のように美しい。
異世界がスローペースで俺の倫理を侵食していくのが分かった、
「……それと、もう一つの条件とは?」
「ふふ。私の所有、についてです」
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