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若かったオレ①
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※オーウェン視点
───────────
オレがまだ10歳だった頃。
辺境家で育った俺は、一人息子ということもあって、厳しく、時に優しく育てられていた。
そんな平穏な日々に影を落としたのが、父が目を光らせていた国境沿いでのいざこざだった。
一蛮族単体からの攻撃は時々あった。しかし、普段相入れない筈の3つの部族が徒党を組んだらしいと言う情報が入った。
その中の一つの部族はとても狡猾で、エゲツない手を使うことがままあった。
両親は守るべき対象の非戦闘員を、別の領地へ一時的に避難させる事を指示した。
勿論俺もその対象だった。
本当なら母も…と言う話だったけれど、母は剣を嗜んでいてそこそこ強く、後方支援の取り纏めと砦の守りをすると宣言した。
俺は何もできない子供だ。
一番安全な王都に連れて行かれ、数人の信頼厚い使用人とともに避難を命じられた。
王都にあるタウンハウスに一人で使用人と留守をするはずだったのだが、父の友人が「それでは不安だろう。預かるよ」と言ってくれたらしい。
直ぐにその家に連れて行かれて、同い年の男の子と、4つ下の女の子の兄妹を遊び相手として紹介し、「息子を頼む」と言い残して追われるように王都を後にした。
俺は何もできない自分自身が歯痒くて、ずっと側にいた両親がいない事に不安を覚え寂しく思って、ニコリともせずに不貞腐れていたんだ。
同い年の男の子、ネイトとは割とすぐに仲良くなった。「剣を習っている」と言ったら、長めの枝を持ってきて打ち合ったり、むしゃくしゃした気分を晴らしたくて走ったり。
けど、そんな時ちょこちょこと後をついてくる存在がいた。
ネイトの妹、アデレイズと言うちびっ子だ。
ネイトは妹が可愛いのか毎回足を止めては振り返り、迎え入れるように抱き上げる。
「レイは可愛いだろーぉ?」
妹を可愛がる姿に、邪魔されたように思えてムッとする。
そしてちびっ子は家族みんなに愛され、輝かんばかりの笑顔を浮かべて俺にも手を差し伸べる。
その姿に、ついこの間まで側に居た両親、辺境領のみんなの顔と姿が浮かぶ。
悔しかった。妬ましかった。
だから俺は邪魔なちびっ子を邪険にした。
新しいふわふわとしたワンピースを嬉しそうに着ていた時には「似合ってねーっつーの」と嫌味を言ったり。
付いてこようとするたびに「お人形遊びでもしてろよ」「トロくさい」と吐いて遠ざけた。
段々と険悪になっていく俺とちびっこをネイトは困った顔して、宥めて取り持とうとしていた。
そんなある日、また俺はちびっ子に「ついて来んな」と、意地悪なことを吐いた。
いつもはスカートを握りしめて俯いたちびっ子を、ネイトが優しく頭を撫でるんだけど、その日は違った。
キッと俺を睨むと、ダダダっと走り込んで、思いっきり片足を後ろに引くと、前方へと振り抜いた。
そこには俺の脛があったんだが。
ガッツーーーーーン⭐︎
「い゛っっっっ!!!!!」
幾ら幼女の足技と言えど、アレは痛かった。
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オレがまだ10歳だった頃。
辺境家で育った俺は、一人息子ということもあって、厳しく、時に優しく育てられていた。
そんな平穏な日々に影を落としたのが、父が目を光らせていた国境沿いでのいざこざだった。
一蛮族単体からの攻撃は時々あった。しかし、普段相入れない筈の3つの部族が徒党を組んだらしいと言う情報が入った。
その中の一つの部族はとても狡猾で、エゲツない手を使うことがままあった。
両親は守るべき対象の非戦闘員を、別の領地へ一時的に避難させる事を指示した。
勿論俺もその対象だった。
本当なら母も…と言う話だったけれど、母は剣を嗜んでいてそこそこ強く、後方支援の取り纏めと砦の守りをすると宣言した。
俺は何もできない子供だ。
一番安全な王都に連れて行かれ、数人の信頼厚い使用人とともに避難を命じられた。
王都にあるタウンハウスに一人で使用人と留守をするはずだったのだが、父の友人が「それでは不安だろう。預かるよ」と言ってくれたらしい。
直ぐにその家に連れて行かれて、同い年の男の子と、4つ下の女の子の兄妹を遊び相手として紹介し、「息子を頼む」と言い残して追われるように王都を後にした。
俺は何もできない自分自身が歯痒くて、ずっと側にいた両親がいない事に不安を覚え寂しく思って、ニコリともせずに不貞腐れていたんだ。
同い年の男の子、ネイトとは割とすぐに仲良くなった。「剣を習っている」と言ったら、長めの枝を持ってきて打ち合ったり、むしゃくしゃした気分を晴らしたくて走ったり。
けど、そんな時ちょこちょこと後をついてくる存在がいた。
ネイトの妹、アデレイズと言うちびっ子だ。
ネイトは妹が可愛いのか毎回足を止めては振り返り、迎え入れるように抱き上げる。
「レイは可愛いだろーぉ?」
妹を可愛がる姿に、邪魔されたように思えてムッとする。
そしてちびっ子は家族みんなに愛され、輝かんばかりの笑顔を浮かべて俺にも手を差し伸べる。
その姿に、ついこの間まで側に居た両親、辺境領のみんなの顔と姿が浮かぶ。
悔しかった。妬ましかった。
だから俺は邪魔なちびっ子を邪険にした。
新しいふわふわとしたワンピースを嬉しそうに着ていた時には「似合ってねーっつーの」と嫌味を言ったり。
付いてこようとするたびに「お人形遊びでもしてろよ」「トロくさい」と吐いて遠ざけた。
段々と険悪になっていく俺とちびっこをネイトは困った顔して、宥めて取り持とうとしていた。
そんなある日、また俺はちびっ子に「ついて来んな」と、意地悪なことを吐いた。
いつもはスカートを握りしめて俯いたちびっ子を、ネイトが優しく頭を撫でるんだけど、その日は違った。
キッと俺を睨むと、ダダダっと走り込んで、思いっきり片足を後ろに引くと、前方へと振り抜いた。
そこには俺の脛があったんだが。
ガッツーーーーーン⭐︎
「い゛っっっっ!!!!!」
幾ら幼女の足技と言えど、アレは痛かった。
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