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逃避したオレ
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※オーウェン視点
───────────
ぺちーんと叩かれて以来、完全にちびっ子に嫌われてしまった。まぁ、当然だろう。むしろよく3か月も我慢したなと、褒められて然るべきだろう。
今度は俺から歩み寄らなければと、俺は努力……したつもりだった。
けれど、気持ちとは裏腹で、今まで邪険にしてしまった分、近づき方が分からなくなった。そろっと寄れば避けられ、触れば脱兎のごとく逃げて行かれた。
「あーぁ、嫌われちゃったねぇ」
「…べ、別に気にして無いし」
「そぉ?まぁそれなら良いけど。それにしても怒っているレイも可愛いなぁ~」
ネイトの言葉に、幾らなんでも欲目が過ぎるだろうと訝しげに眉を寄せれば、「分かってないなぁ」と得意げな顔をして口を開いた。
「まず、後ろから見てもプリンとしている、あのふくふくほっぺ。ちょっと毛先がカールしたツルツルキラキラなピンクブラウンの髪なんか、まるでイチゴのチョコレートみたいだろ?葡萄色の目なんか、まん丸で……」
そう言われると、確かに赤みがかった明るいピンクブラウンの髪は艶々で、クルッと緩やかに巻く毛先まで光が跳ねている。ぷっくりとした頬は柔らかそうだし、芳醇な葡萄を思わせる瞳は意志が強そうで……
いかん、シスコンに毒されている……?!
俺は頭を振って、延々と妹自慢をし続けるネイトからそっと離れたのだった。
それから1年経って、辺境領が落ち着いたと言うことで、両親が迎えにきてくれた。
蛮族の中の一部族は駆逐したと、母がいい笑顔で言っていた。
領に帰る事になり、俺は世話になったもう一つの家族へと振り返った。
何も言わずに迎え入れてくれた侯爵夫婦。
親友と呼べるほど仲良くなったネイト。
やっと一緒の部屋にいても、近くに居ても逃げずに居てくれるまでに関係を回復できたちびっ子。
お見送りは不本意なのか、口を尖らせて侯爵夫婦の隣に仕方なさそうにちょこんと立っている。
ネイトと侯爵夫婦へと感謝とお別れの挨拶を済ませ、最後にチラッとちびっ子を見るとモジモジとしているのが見えた。
なんだ、お前。挨拶した方が良いか迷っているって感じか?
俺は苦笑して、膝を折って目線を合わせてちびっ子の頭をくしゃっと撫でた。
「悪かったな、ちびっ子。元気でいろよ」
「ゃめぇてー!くしゃくしゃになるっ!」
ちびっ子は頭を押さえて、恨めしそうに上目遣いで俺を見た。唇がますますとんがっているぞ。
ようやく触れるようになったのにな。
胸が暖かくなると同時に、キュゥッと絞られるような切なさが襲う。
「またな」
ポンポンと優しく叩いて、最後は分からない程度に名残惜しげに撫でると、俺は両親の元へと戻った。
俺が10歳、ちびっ子が6歳の出来事だった。
辺境領へと戻った俺は、ネイトからの手紙であの後すぐちびっ子が王家から婚約者を当てがわれた事を知らせてくれた。
「嘘だろ……?」
俺は愕然としていた。あのちびっ子が婚約?
まだ……そんな、早いだろ……
俺は何かから逃げるように、勉学や武術に勤しんだ。その心の片隅にはいつもあの柔らかくて絹のような手触りのピンクブラウンの髪と、大きな葡萄色の瞳がいつまでも鮮明に残り続けている事に目を逸らしながら。
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ぺちーんと叩かれて以来、完全にちびっ子に嫌われてしまった。まぁ、当然だろう。むしろよく3か月も我慢したなと、褒められて然るべきだろう。
今度は俺から歩み寄らなければと、俺は努力……したつもりだった。
けれど、気持ちとは裏腹で、今まで邪険にしてしまった分、近づき方が分からなくなった。そろっと寄れば避けられ、触れば脱兎のごとく逃げて行かれた。
「あーぁ、嫌われちゃったねぇ」
「…べ、別に気にして無いし」
「そぉ?まぁそれなら良いけど。それにしても怒っているレイも可愛いなぁ~」
ネイトの言葉に、幾らなんでも欲目が過ぎるだろうと訝しげに眉を寄せれば、「分かってないなぁ」と得意げな顔をして口を開いた。
「まず、後ろから見てもプリンとしている、あのふくふくほっぺ。ちょっと毛先がカールしたツルツルキラキラなピンクブラウンの髪なんか、まるでイチゴのチョコレートみたいだろ?葡萄色の目なんか、まん丸で……」
そう言われると、確かに赤みがかった明るいピンクブラウンの髪は艶々で、クルッと緩やかに巻く毛先まで光が跳ねている。ぷっくりとした頬は柔らかそうだし、芳醇な葡萄を思わせる瞳は意志が強そうで……
いかん、シスコンに毒されている……?!
俺は頭を振って、延々と妹自慢をし続けるネイトからそっと離れたのだった。
それから1年経って、辺境領が落ち着いたと言うことで、両親が迎えにきてくれた。
蛮族の中の一部族は駆逐したと、母がいい笑顔で言っていた。
領に帰る事になり、俺は世話になったもう一つの家族へと振り返った。
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お見送りは不本意なのか、口を尖らせて侯爵夫婦の隣に仕方なさそうにちょこんと立っている。
ネイトと侯爵夫婦へと感謝とお別れの挨拶を済ませ、最後にチラッとちびっ子を見るとモジモジとしているのが見えた。
なんだ、お前。挨拶した方が良いか迷っているって感じか?
俺は苦笑して、膝を折って目線を合わせてちびっ子の頭をくしゃっと撫でた。
「悪かったな、ちびっ子。元気でいろよ」
「ゃめぇてー!くしゃくしゃになるっ!」
ちびっ子は頭を押さえて、恨めしそうに上目遣いで俺を見た。唇がますますとんがっているぞ。
ようやく触れるようになったのにな。
胸が暖かくなると同時に、キュゥッと絞られるような切なさが襲う。
「またな」
ポンポンと優しく叩いて、最後は分からない程度に名残惜しげに撫でると、俺は両親の元へと戻った。
俺が10歳、ちびっ子が6歳の出来事だった。
辺境領へと戻った俺は、ネイトからの手紙であの後すぐちびっ子が王家から婚約者を当てがわれた事を知らせてくれた。
「嘘だろ……?」
俺は愕然としていた。あのちびっ子が婚約?
まだ……そんな、早いだろ……
俺は何かから逃げるように、勉学や武術に勤しんだ。その心の片隅にはいつもあの柔らかくて絹のような手触りのピンクブラウンの髪と、大きな葡萄色の瞳がいつまでも鮮明に残り続けている事に目を逸らしながら。
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