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「まぁ、一応?子爵家の調査は王家側に進言しましたら、教育も力を入れると言うことですし。後は放置お任せしていたのだけど…………
まさかの結果でしょ?ほんの少し心が痛みましたわ」


眉を一応下げながらホホホと上品に微笑みながら言い放つエリザベートに、本当に1ミリか1ミクロンくらいの痛み……しかも同情心なんだろうなと遠い目で察したクリスティーナ。


「私、見える範囲の気に入ったモノは全て支配したい質なの。元老院の曲者、古参貴族の古狸や狐が闊歩する王宮より、今の方が性に合ってますのよ」


最後にそう静かに呟いたエリザベートは、スペースの出入り口に目を向けると、彼女の夫である次期侯爵であるロマーノが姿を表し礼をした。すぐに楽にしてくれる様にクリスティーナが声をかけると、ロマーノはエリザベートの側に寄り手を掬い上げる。


「ご歓談中失礼いたします。お話、盛り上がっている様ですね」
「えぇ、すっかり奥様を独占してしまい申し訳ないわ。とてもお話上手でつい話し込んでしまいましたわ」
「それは嬉しいですね、これからも是非妻をよろしくお願いします」


全体的に鍛えていることがわかる少々厚めの体格のロマーノは、嬉しそうに妻に手を撫でる……撫でる。なでこなでこする。

撫すぎじゃないだろうかと思ってついつい視線がそこに向いてしまうと、エリザベートのドレスの裾からピンヒールの踵の部分がスルリと現れてゆっくりとした動きでロマーノの親指が収められているであろう靴先に辿り着き、グリ…グリと抉る様なひねりを加えて踏み締める。

クリスティーナは、目が飛び出るかと思うほどカッ開いた。幻覚?幻覚かしら?と脳が少々受付拒否をしたが、何度瞬かせても幻は消えない。


「す、すまない。寂しくて、っぃ…くっ」


そして踏まれたロマーノの顔は、恍惚と……だとぅ?!とクリスティーナは3度見した。


「クス……ティナ様。私ね、夫がとぉっても好みですの。彼の為なら彼の全てを支えて願いを叶えたいほど。私はとっても…幸せですのよ」
「あぁエリザベート!私の唯一は貴女だけだ。さぁそろそろ」


エリザベートの愛の言葉に感極まった夫ロマーノが、一刻も早く2人きりになりたいのか落ち着かない様子でエリザベートを促す。
一つ薄く息を吐いた彼女は広げていた扇子を閉じて先端を彼の襟元から喉仏へツツーっと這わせる。顎先にたどり着くとクッと力を少し込めてロマーノの顎を上げさせた。

つまり、ロマーノは扇子の先端で顎クイ状態だ。



「…ロマーノ?未だご挨拶していないところがあるでしょう?」
「ぅ、分かった。早く行こう」
「しょうのない人。では王妃殿下、私共は御前失礼させて頂きますわ」

「あ、あぁ、うん。ハイ、またー…」


何を見せられていたんだと、さっきから瞬きが止まらないクリスティーナは、妖艶な笑みを口の端に浮かべたエリザベート夫婦を放心状態で見送った。


「あぁ、成程……」


少々当てられたクリスティーナは、扇子でショート気味の頭を冷やすべく扇ぐ。


「女王様……かぁ~…」




──────────────────

<後書き>
エリザベートお姉様、もっと成長した悪役令嬢っぽいキャラだったんです……が。おっかしいなぁー(´༎ຶД༎ຶ`)
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