台風の目(仮)

来条恵夢

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廻合

1-1

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 目が覚めると、なんだか星空の下にいた。足首が冷たいのは、金属がめられていて直接肌に当たっているからのような気がする。
 野宿だったか、と考えかけたカイは次の瞬間に、いやいやこんなに水気のある空気で――つまりは木のありそうな場所で、その陰でもない場所で眠るはずがない、と否定した。おまけに足首の、この感触。
「…いやな予感が…」
 これはあれだ。とてつもなく、人身御供ひとみごくうっぽい。
「…誰だ?」
 近くで人の動く気配があって、体を起こそうとしたカイは、急に動いたせいか薬でも盛られたのか、眩暈めまいと軽い嘔吐おうと感に襲われて小さくうめいた。
 こちらの薬はあまりかないはずなのだが、どうも当たりを引いてしまったらしい。運が悪い。きっと自分は、努力の半分以上を運の悪さで相殺しているに違いない、と思う瞬間だ。シュムの呆れ顔が目に浮かぶ。
「だ、大丈夫、ですか…?」
 おずおずと声がして、少し離れた位置でおろおろとしている人がいるのがわかった。
 周囲は薄暗いが、夜空に満月が浮かんでいるおかげで、全く見えないわけでもない。元より、カイの視力のよさは人とは桁違いだ。
 自分よりは二回りくらい小さいかと、カイは声に出さずに推測した。まだ若いだろう。ひょろ長い成長途上のような体といい、下手をすれば、十代というのもありだ。
 気の弱そうな声だが何者だと、カイは暢気のんきに首をかしげた。
 そろりと身を起こすと、やはり足は、鎖に繋がれていた。鬱陶しい気もするが、いつでも外せるだけに、まずは相手の出方を見ようと決める。
「あ、あの…吐き気とか…その…ごめんなさい!」
 何を勘違いしたのか、若い声は焦った様子で謝る。必死というよりも、今にも泣き出しそうだ。
「謝ってすむ話じゃないけど…ごめんなさい!」
「あー…とりあえず、状況説明してくれるか。それと…つれは?」
 たしかシュムと共に行動していたはずで、小さな村で、宿はないがと村長の家に泊めてもらえることになったはずで。旅人は珍しいからと、過分なもてなしを受けて。
 それがこの状態とは、何事か。先ほどの合いの手から推測はつくが、はっきりと聞いてみたい。
 まとわりつく違和感めいた不調をゆっくりと体を動かして振り払い、足元を見ると、間違いなく両足に、別々にではあるが鎖が伸びている。その先は今カイが横たわる石の寝台だ。
 見回してみると寝台のすぐそばに、小さいとは言わなくても大きくもない湖があり、あとはひたすらに空が広がり、離れた位置には木々。森の中らしい。
 うなだれた人影は、寝台からは鎖を精一杯伸ばしても手が届かないだろう位置で膝をついている。
 そうして、思い切ったように顔を上げた。
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