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夢見
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どのくらいそうしていたのか、いつの間にか周囲に闇が落ちていた。ディーの姿がなく、夜に紛れたかと思ったがそんなわけもなく、のろのろと記憶をたどれば、シュム自身が魔法陣を開いてあちらに還していた。
ずっと同じ体勢でいたのか、強張ってしまった体を倒して、寝転ぶ。夜空には、星が散っていた。
何も考えられない。
それでもどのくらいが経ったのか、くしゃみをした拍子に、空腹と咽喉の渇きに気づいた。そういえば、朝に少し食べてから、何も口にしていない。呼び出した誰かと、何か食べようと思っていた。
「…おなか、すいた」
かすれた咽喉から無理矢理押し出した声が聞こえて、シュムは、ほら、と思った。
お腹がすいている。咽喉も渇いている。ちゃんと、そのことに気づけている。やはり自分は、誰かを喪ったところで、どうにかなるような人間ではない。そのうち訪れるだろう別れが不安で、怯えていた自分を嗤いたくなる。
思い悩みすぎて、まだ訪れてもいないのに気鬱に陥っていたシュムを引っ張りあげてくれたのは、カイだった。
「さ、て。何か食べて、飲んで、寝て。仕事、探そうかな」
多少懐に余裕ができたからと、遊ぼうと思っていたが、一休みしたら何か探そう。
そうやって考えながらも、シュムはまだ、寝転んだままだった。夜空には、何かの隙間のように、星が点々と散っている。
「…向こうに行ってみるってのも、あり、かな…。まだ――」
カイの死を、この目で見たわけじゃないし。
口にしようとした言葉は、胸のどこかに引っかかって出てこなかった。ディーがそんな悪趣味な嘘をつくはずもなく、疑っているわけではなく、シュムも納得した。それでも、まだ、実感はやってこない。
そもそも、シュムとカイは四六時中一緒にいるような関係でもなく、会わずにいたのと会えなくなったのと、どう違うというのか。
「そうだよ。あの約束だって、会った最初にしただけの口約束だし。忘れられてたかもしれないし。それなら、カイがいなくたって…」
一緒。
――の、はずがない。
ごろりと、シュムはうつぶせになった。青臭い、草の潰れるにおいがする。服にも、汁がついたかもしれない。いつもはろくに気にしないことが、何故か今は頭の片隅を掠めていった。
「慣れる。忘れる。そのうち、懐かしいなって、思い出せる。――大丈夫。だいじょうぶ」
呪文のようにつぶやいた言葉は、さらさらとこぼれ落ちて、どこにも引っかかることなくどこかに吸い込まれていった。
手を持ち上げて、重みに耐えかねたように落としてしまう。目を覆う位置に置いた腕に、目蓋を閉じた。口の端が、かすかに笑うように持ち上がる。
「うそつき。殺してくれるって言ったのに」
下手をすれば人よりもずっと優しいあのカイが、長生きに疲れたらというその約束を守ってくれるとは、今となっては思っていない。それでも、支えではあった。
「うそつき」
つぶやく。
それでも、まだ、涙も出なかった。
ずっと同じ体勢でいたのか、強張ってしまった体を倒して、寝転ぶ。夜空には、星が散っていた。
何も考えられない。
それでもどのくらいが経ったのか、くしゃみをした拍子に、空腹と咽喉の渇きに気づいた。そういえば、朝に少し食べてから、何も口にしていない。呼び出した誰かと、何か食べようと思っていた。
「…おなか、すいた」
かすれた咽喉から無理矢理押し出した声が聞こえて、シュムは、ほら、と思った。
お腹がすいている。咽喉も渇いている。ちゃんと、そのことに気づけている。やはり自分は、誰かを喪ったところで、どうにかなるような人間ではない。そのうち訪れるだろう別れが不安で、怯えていた自分を嗤いたくなる。
思い悩みすぎて、まだ訪れてもいないのに気鬱に陥っていたシュムを引っ張りあげてくれたのは、カイだった。
「さ、て。何か食べて、飲んで、寝て。仕事、探そうかな」
多少懐に余裕ができたからと、遊ぼうと思っていたが、一休みしたら何か探そう。
そうやって考えながらも、シュムはまだ、寝転んだままだった。夜空には、何かの隙間のように、星が点々と散っている。
「…向こうに行ってみるってのも、あり、かな…。まだ――」
カイの死を、この目で見たわけじゃないし。
口にしようとした言葉は、胸のどこかに引っかかって出てこなかった。ディーがそんな悪趣味な嘘をつくはずもなく、疑っているわけではなく、シュムも納得した。それでも、まだ、実感はやってこない。
そもそも、シュムとカイは四六時中一緒にいるような関係でもなく、会わずにいたのと会えなくなったのと、どう違うというのか。
「そうだよ。あの約束だって、会った最初にしただけの口約束だし。忘れられてたかもしれないし。それなら、カイがいなくたって…」
一緒。
――の、はずがない。
ごろりと、シュムはうつぶせになった。青臭い、草の潰れるにおいがする。服にも、汁がついたかもしれない。いつもはろくに気にしないことが、何故か今は頭の片隅を掠めていった。
「慣れる。忘れる。そのうち、懐かしいなって、思い出せる。――大丈夫。だいじょうぶ」
呪文のようにつぶやいた言葉は、さらさらとこぼれ落ちて、どこにも引っかかることなくどこかに吸い込まれていった。
手を持ち上げて、重みに耐えかねたように落としてしまう。目を覆う位置に置いた腕に、目蓋を閉じた。口の端が、かすかに笑うように持ち上がる。
「うそつき。殺してくれるって言ったのに」
下手をすれば人よりもずっと優しいあのカイが、長生きに疲れたらというその約束を守ってくれるとは、今となっては思っていない。それでも、支えではあった。
「うそつき」
つぶやく。
それでも、まだ、涙も出なかった。
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