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河東英
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今までこれだけ興味が続いたことがあっただろうかと、ふと英は思った。
授業中、ぼんやりと視線を向けた運動場の片隅でクラスメイトと立ち話をしている雪季を目にしてのことだった。
三年になってクラスは違ってしまったが、探すまでもなく見つけられるようになってしまった。まるで恋煩いだなと、いまだにそんなものを感じた事のない英は面白く思う。
大抵のことはある程度までならできてしまうからか、今まで、それほど長く熱心に取り組んだものはない。
部活のバスケットボールも何となく選んだだけで、たまに面白く思うことはあるし、たまに熱中することもあるが地道に努力を続けて全力を注いで、ということはどうにも英には合わない。というよりも、そこまで興味が続かない。
一体何がしたいんだろうと、英は自問した。
雪季に興味がある。何を考えているのか、話をしてみたいと思った。
すぐにそうしなかったのは雪季が人を殺していたという特殊事情があるからで、だからこそ興味を惹かれたのだとも思ったが、今となってはよくわからなくなっていた。
我慢すること、先を見据えることを、英は幼い日に「先生」から学んだ。
当時母と住んでいたアパートの大家だった彼女から、英は、普通なら親や学校の先生から教わる大半のことを学んだだろうと思う。
彼女は親切で根気強く、英の将来を憂うことすらした。おかげで英は、世の中の渡り方を、入り口ではあるだろうけれど身に着けることができた。
学ぶことも彼女から教わり、本やテレビを活用することも覚えた。
そうやって知った中に、自分に当てはまりそうな分類もあった。検査を受けたことはないから本当にそうなのかはわからないが、もしそうだとすれば、案外同類は多いんだなというのが感想だった。
それがいい事とも悪い事とも思わなかった。
「アーキラっ。何見てたんだ? 三組と四組だっけ。可愛い子でも居た?」
親し気に近付いてきた曲者に、英は、にこりと笑みを返す。
「もうちょっと薄着になってからの方が見ごたえはあるかな」
「あー。ジャージ着られると体の線がわからないもんなー」
篠原と中身のない言葉を交わしながら、こんな身近にも同類がいるんだもんなと英は内心嘆息した。互いに、出会った瞬間に何故か悟った。こいつは同類で面倒な奴だ、と。だからこそ、近くにいる羽目になった。
その上、この同類は別の同類が起こした猟奇事件に興味津々らしい。誰か目の前でやってみてくれないものか、と。それなら自分でやればいいのにと思うのだが、実行して捕まるのは厭なのだろう。あるいは、特等席で観覧したいというだけのことなのか。
何をどう見込まれたものか、誘われたことがある。断ったが、たまに思い出したように誘われる。
そもそも興味がないのと、どうせ、事が露見した時には英に全て被せるつもりで言っているのだろうから断るが、しつこくて鬱陶しい。
「あ。次移動教室か」
「うわだる」
会話を切るには丁度いいし、選択授業で篠原とは教室も違う。それとなくこちらを窺っていた様子の、移動先が同じ「友人」たちに声をかけて、教室を後にした。
短い道中、クラスでもひときわ華やかな女子のグループと一緒になったのは、きっと偶然ではない。
去年の卒業式で、付き合っていた先輩と別れた。
向こうの希望で秘密にしていたのに、別れるときには驚くべき速さで噂が伝わっていった。結果、三年のクラス替えを経てしばらく経ち、クラス内の人間関係もそれなりに固まった頃合いに、英を「狙う」女子は増えた。
それ以前にも、フリーだと思われていた分誘いはあったが、断り続けていたためにそういったことに興味がないのかといくらか選択肢から外されていた部分があった。それが、ひそかに付き合っていた相手がいたと知れて、むしろ、一途でいいという話になったらしい。
何かと近くにいて比較される篠原が大っぴらに食い散らかしている分、そこが評価されているようだ。
英としては、単に最初に声をかけて来たのが件の先輩で、適度な距離が英にも合っていたのか切れずにいただけだし、学内で揉めたくないからそういった付き合いは先輩の他は同級生たちが考えもしないだろう学外で広げていただけで。
人間関係というのは、面倒臭いが面白いものだと思う。何より、英がほんの少し手を加えるだけで様変わりするところがいい。
父や兄たちが手にしたがっている権力とは少し違う。あれはあれで人間関係を好きに操れる大きな手段だが、そんなものを使わなくても、ほんの些細なことだって人の「心」は動く。いっそ、不思議になるほどに。
授業中、ぼんやりと視線を向けた運動場の片隅でクラスメイトと立ち話をしている雪季を目にしてのことだった。
三年になってクラスは違ってしまったが、探すまでもなく見つけられるようになってしまった。まるで恋煩いだなと、いまだにそんなものを感じた事のない英は面白く思う。
大抵のことはある程度までならできてしまうからか、今まで、それほど長く熱心に取り組んだものはない。
部活のバスケットボールも何となく選んだだけで、たまに面白く思うことはあるし、たまに熱中することもあるが地道に努力を続けて全力を注いで、ということはどうにも英には合わない。というよりも、そこまで興味が続かない。
一体何がしたいんだろうと、英は自問した。
雪季に興味がある。何を考えているのか、話をしてみたいと思った。
すぐにそうしなかったのは雪季が人を殺していたという特殊事情があるからで、だからこそ興味を惹かれたのだとも思ったが、今となってはよくわからなくなっていた。
我慢すること、先を見据えることを、英は幼い日に「先生」から学んだ。
当時母と住んでいたアパートの大家だった彼女から、英は、普通なら親や学校の先生から教わる大半のことを学んだだろうと思う。
彼女は親切で根気強く、英の将来を憂うことすらした。おかげで英は、世の中の渡り方を、入り口ではあるだろうけれど身に着けることができた。
学ぶことも彼女から教わり、本やテレビを活用することも覚えた。
そうやって知った中に、自分に当てはまりそうな分類もあった。検査を受けたことはないから本当にそうなのかはわからないが、もしそうだとすれば、案外同類は多いんだなというのが感想だった。
それがいい事とも悪い事とも思わなかった。
「アーキラっ。何見てたんだ? 三組と四組だっけ。可愛い子でも居た?」
親し気に近付いてきた曲者に、英は、にこりと笑みを返す。
「もうちょっと薄着になってからの方が見ごたえはあるかな」
「あー。ジャージ着られると体の線がわからないもんなー」
篠原と中身のない言葉を交わしながら、こんな身近にも同類がいるんだもんなと英は内心嘆息した。互いに、出会った瞬間に何故か悟った。こいつは同類で面倒な奴だ、と。だからこそ、近くにいる羽目になった。
その上、この同類は別の同類が起こした猟奇事件に興味津々らしい。誰か目の前でやってみてくれないものか、と。それなら自分でやればいいのにと思うのだが、実行して捕まるのは厭なのだろう。あるいは、特等席で観覧したいというだけのことなのか。
何をどう見込まれたものか、誘われたことがある。断ったが、たまに思い出したように誘われる。
そもそも興味がないのと、どうせ、事が露見した時には英に全て被せるつもりで言っているのだろうから断るが、しつこくて鬱陶しい。
「あ。次移動教室か」
「うわだる」
会話を切るには丁度いいし、選択授業で篠原とは教室も違う。それとなくこちらを窺っていた様子の、移動先が同じ「友人」たちに声をかけて、教室を後にした。
短い道中、クラスでもひときわ華やかな女子のグループと一緒になったのは、きっと偶然ではない。
去年の卒業式で、付き合っていた先輩と別れた。
向こうの希望で秘密にしていたのに、別れるときには驚くべき速さで噂が伝わっていった。結果、三年のクラス替えを経てしばらく経ち、クラス内の人間関係もそれなりに固まった頃合いに、英を「狙う」女子は増えた。
それ以前にも、フリーだと思われていた分誘いはあったが、断り続けていたためにそういったことに興味がないのかといくらか選択肢から外されていた部分があった。それが、ひそかに付き合っていた相手がいたと知れて、むしろ、一途でいいという話になったらしい。
何かと近くにいて比較される篠原が大っぴらに食い散らかしている分、そこが評価されているようだ。
英としては、単に最初に声をかけて来たのが件の先輩で、適度な距離が英にも合っていたのか切れずにいただけだし、学内で揉めたくないからそういった付き合いは先輩の他は同級生たちが考えもしないだろう学外で広げていただけで。
人間関係というのは、面倒臭いが面白いものだと思う。何より、英がほんの少し手を加えるだけで様変わりするところがいい。
父や兄たちが手にしたがっている権力とは少し違う。あれはあれで人間関係を好きに操れる大きな手段だが、そんなものを使わなくても、ほんの些細なことだって人の「心」は動く。いっそ、不思議になるほどに。
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