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夢中
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「ただの雇い主なら、殴ってでも眠らせて放っておく」
「怖。それ雇い主に対する対応じゃない。…え」
表情のないまま、首を傾げてみせる。少々、ホラー映画の一コマじみていた。
以前思い浮かべた「メフィスト」になぞらえるなら、結構な山場になるだろうに。実際には、深夜の酒盛りでうっかり口を滑らすとは様にならない。
それに、これで英の執着が解ければ、年の瀬に無職で宿無しという疲れる事態になりかねないというのに。
もう一度、ため息が零れ落ちた。
「気は進まないが、残念ながら、ただの上司で雇い主なだけじゃなくて、友人だと思ってる」
英の動きが止まった。
首を傾げたまま、ぴくりとも動かない。まばたきすら止まってしまい、体感で一分を超えたあたりで、実は目を開けたまま寝ていないだろうかと心配になる。いや、それなら逆に身動きしそうなものだ。
「…河東?」
「っ俺寝てた!?」
「ぁあ?」
力任せに肩をつかまれたのと併せて、つい険のある声が出る。半ば反射的に振り払おうとしたのだが、むしろ力を込めて顔を近付けられ、機会を逃した。
「だって雪季が! なのにまだ河東って呼ぶしやっぱさっきの夢?! この雪季本物?!」
「…とりあえず放せ」
「どうせ夢ならもっと浸ってたいんだけど! あっでもさっき河東って呼んだからもう醒めてる? しまった!」
「放せ。離れろ。落ち着け」
今度こそ肩をつかむ手を振りほどき、ローテーブルの上のものが倒れていたりしないかを確認して、座り直す。その間、ずっと英の視線が張り付いていた。
観念して、向き直る。
「…そこまで意外か?」
「待って。ちょっと待って。本当に、さっきの現実? 俺の聞き間違いじゃない? 夢じゃなかった?」
「だからなんで、そこまで疑う」
「だって」
躊躇うように言葉を止めながら、視線は真っ直ぐに雪季を捉えたまま離れない。表情はほとんど読めないままなのに、眼だけはこちらを呑み込むかのようにのぞき込んでくる。
逸らすと、背を向けて逃げるようで下手に身動きが取れない。
「雪季は俺のこと嫌いなんだと思ってた」
「…前に言わなかったか。嫌いな奴に付き合うほど自分を棄ててない」
「でも。だって。…雪季に好かれるようなこと、してないし」
「自覚あるなら変えろよ」
「何をどうすればいいかなんてわからないんだから仕方ないだろ」
あれだけ人を転がすのが巧い奴が、と呆気に取られて見ると、心無し、睨むように目を細められた。
「何やっても受け流されるから、どれが駄目とかいいとか取っ掛かりないんだよ、雪季は。それにどうせ、上辺だけ繕っても見抜かれるんだろうし。そうやって好かれても結局見放されそうだし」
「…そもそも、友人づきあいの話に聞こえないんだが…」
「え。あー…だから多分、そこからずれてるから、雪季は俺のこと好きになんてなってくれないと思ってた」
「…別に好きではない」
「は?!」
「腐れ縁に近い。…それでも、こうやって話してるのは嫌いじゃない」
「ええええ…わけがわからない…」
今度は確実ににらまれた。言葉と顔の動きが合っていない。そしてそろそろ表情を戻してくれないだろうか、こちらだけが不利な気がする、と雪季は思う。
先ほどよりも大分軽く、ため息を落とす。
「まず、好きと嫌いに二分するな。人に対してなんて、入り混じってるものだろ。あと、好きだからとか役に立つからとかだけで友人付き合いするものでもないだろ。まあ、嫌悪が勝てばただの迷惑な他人だけどな」
「…えーとだから」
「迷惑で面倒な友人」
雪季が指差して見せると、もう一度首を傾げ、英は自分で自分を指さした。
「友人」
ふっと、息だけで笑った。
「やった。自慢しよっと。これから雪季のこと友達だって言っても否定しないんだ」
「…待て」
声が起伏に乏しく、どこまでどう本気なのかがさっぱりわからない。だから、本気だと仮定して。
「俺とお前が一緒に顔会わせる相手なんて、ほとんど客とか客候補だろ。俺がお前にくっついてるのはあくまで仕事。仕事中に公私混同するな」
「えー。いやでも、客ったってそれ以外に付き合いあるのほとんどだし、秘書で友人、別にいいじゃん」
「ただでさえ胡散臭いんだから、これ以上要素を増やすな」
「酷、そんなこと思ってたんだ。ちゃんと真っ当に仕事してるだろ」
「お前の存在がすでに胡散臭い。詐欺っぽい」
「…それ本気で酷くない?」
「間違ってるか?」
「あー…いやまあそれほど」
なんだそれは、と、言わせておいて雪季は呆れる。自覚があるのはいいが、それでもどうにかしようともしないのは余計に性質が悪い気がする。どうにもできないだけかも知れないが。
温んでしまった酒を、一息に呷る。
「感謝はしてる。あんな生活、長く続けられるものでもない。おかげで、この先もまともな仕事にも就けそうだ」
「待った」
雪季の言葉尻を押し潰す勢いで、英が身を乗り出した。
また肩をつかまれてはたまらないので、その分雪季はそっと身を引く。それでも何を思ったのか、上着の裾をつかまれた。
「どっか転職するつもりか?」
「今のところ予定はないが、クビになったりつぶれても裏家業に戻る必要がないのは、正直ありがたい」
「いや待てって」
雪季としては、英の態度がいつ変わるかも判らないので、心づもりだけはしているつもりでいる。
今となっては英の目的は果たされたのだろうから、いよいよ、いつ雪季への興味を失うかわかったものではない。同僚たちとの関係は良好なので働き続けられればありがたいが、それもあまり期待はしていない。
感謝は本当なので機会のあるうちに伝えておこうと思っただけなのだが、執着の解けていないらしい今は、少し時機を間違えた気がしたがもう遅い。
「つぶれるのはそりゃ絶対ないとは言えないけど、クビってなんだよ」
「…それも、ない話じゃないだろ」
「……わかった。問題ない」
何がわかったのか。つい思い切り不審げな視線を向けると、応じて、にっこりと笑われた。今までが無表情だっただけに、その落差に雪季はわずかに身をすくめた。
「俺がそんなことしなきゃいいだけのことだ。これからもよろしく、雪季」
「…ああ」
そう言われたところでどれだけ信用できるものか、と、考えながら、催促されて英のお猪口に酒を注ぐ。ついでに、自分の手元にも。
ゆっくりと酒杯を傾けながら、上機嫌に見える英を見遣る。
警戒するのは、それだけ恐れているからでもある。そのことを充分に知っている雪季は、幾分苦い思いを飲み下す。
半ば流されるままにここまで来て、結愛以外に喪うことを恐れるものが出来るとは思わなかった。
「雪季も楽しんでくれてたなんて、意外だな。ああもちろん、いい方向に」
上機嫌と思える笑顔のまま、英はさらりと口にする。
「てっきり雪季は、誰かに殺してもらえるのを待ってるのかと思ってたから」
「――は?」
「葉月に感謝されて、がっかりしなかったか? 俺の護衛も、派手なことがなくて少し期待外れじゃなかったか? もちろん、今を楽しんでくれてるならその方がいいんだけど、俺にとっては」
何を言っているのかがわからず、今度は雪季が表情を失った。ただまじまじと、整った笑顔を見てしまう。
英は、いくらか芝居がかった風に、首を傾げて見せた。
「簡単には死ねないけど、頑張っても生きられないなら仕方ないからって、言い訳を探してるのかなって」
「いや…何を、言ってるんだ…?」
「もしもほんの少し何かが違ってたら、俺たち、殺し合ってたかもな。高二の夏休み明け、篠原に誘われたんだ。連続殺人とか面白そうじゃないか、って。その時はもう雪季を見つけてたから断ったけど、そうじゃなかったら乗ってたかも。その後で雪季のことを知ったら、どうしてただろうって思うんだ。技術とか、利用できないかなって近付いたか、邪魔だから関わらないようにしたか、排除しようとしたか」
するりと、足を組みかえる。ナッツをつまむ。どれもこれも、やはり芝居がかっている。微笑は完璧すぎて、何一つ読み取れない。
「もしあのまま母親のところにいたら、俺もそっち側にいたかも。暴力団絡みのヒットマンとか。それはそれで仲良くなれたかな? それとも、邪魔だって思ったかな。依頼が被ったり、お互いがターゲットになったりもしたかも。それでなくても、雪季に狙われて、命がけで反撃したらどっちが勝つかなって考えたりもした。それはそれで楽しそうだけど、うっかり俺が殺されたらそれまでだし、雪季を殺したらもう面白くなくなるし」
だから穏便なのを選んだ。本当は、もう少しかかると思ったし、ここまで楽しいとは思ってなかったから、凄く嬉しい。
つらつらと発される英の言葉が、雪季の思考を上滑りしていく。
今までも何度か、こういったことがあった。英は、雪季がなんとなく目を逸らしていることをかすめて言葉にするのが上手い。そのものではなくても、触発される。
そしてうっかりと、その通りだと思いそうになる。
「…勝手な想像で遊ぶな」
「いいだろこのくらい。俺がどれだけ我慢したと思ってるんだよ。十年も、ずっと声かけるの我慢してたんだから。夢が叶った気分ってこういうの?」
一度深く目をつぶって、雪季は、深々と息を吐いた。
「…早まった」
「取り消しは聞かないから。もうこれから、雪季がどれだけ否定してもさっきちゃんと俺のこと友人って言ったの覚えてるから、くじけないよ俺」
「今までも十分だっただろ…」
徳利の中身を全て手元の猪口に注ぎ込み、一息に干した。酒臭い溜息を、たっぷりと落とす。時計を見れば、英に起こされてから一時間近くが経っていた。
やはり夜は眠っておくべき時間だなと、雪季はげんなりとした思いで額を押さえた。
「怖。それ雇い主に対する対応じゃない。…え」
表情のないまま、首を傾げてみせる。少々、ホラー映画の一コマじみていた。
以前思い浮かべた「メフィスト」になぞらえるなら、結構な山場になるだろうに。実際には、深夜の酒盛りでうっかり口を滑らすとは様にならない。
それに、これで英の執着が解ければ、年の瀬に無職で宿無しという疲れる事態になりかねないというのに。
もう一度、ため息が零れ落ちた。
「気は進まないが、残念ながら、ただの上司で雇い主なだけじゃなくて、友人だと思ってる」
英の動きが止まった。
首を傾げたまま、ぴくりとも動かない。まばたきすら止まってしまい、体感で一分を超えたあたりで、実は目を開けたまま寝ていないだろうかと心配になる。いや、それなら逆に身動きしそうなものだ。
「…河東?」
「っ俺寝てた!?」
「ぁあ?」
力任せに肩をつかまれたのと併せて、つい険のある声が出る。半ば反射的に振り払おうとしたのだが、むしろ力を込めて顔を近付けられ、機会を逃した。
「だって雪季が! なのにまだ河東って呼ぶしやっぱさっきの夢?! この雪季本物?!」
「…とりあえず放せ」
「どうせ夢ならもっと浸ってたいんだけど! あっでもさっき河東って呼んだからもう醒めてる? しまった!」
「放せ。離れろ。落ち着け」
今度こそ肩をつかむ手を振りほどき、ローテーブルの上のものが倒れていたりしないかを確認して、座り直す。その間、ずっと英の視線が張り付いていた。
観念して、向き直る。
「…そこまで意外か?」
「待って。ちょっと待って。本当に、さっきの現実? 俺の聞き間違いじゃない? 夢じゃなかった?」
「だからなんで、そこまで疑う」
「だって」
躊躇うように言葉を止めながら、視線は真っ直ぐに雪季を捉えたまま離れない。表情はほとんど読めないままなのに、眼だけはこちらを呑み込むかのようにのぞき込んでくる。
逸らすと、背を向けて逃げるようで下手に身動きが取れない。
「雪季は俺のこと嫌いなんだと思ってた」
「…前に言わなかったか。嫌いな奴に付き合うほど自分を棄ててない」
「でも。だって。…雪季に好かれるようなこと、してないし」
「自覚あるなら変えろよ」
「何をどうすればいいかなんてわからないんだから仕方ないだろ」
あれだけ人を転がすのが巧い奴が、と呆気に取られて見ると、心無し、睨むように目を細められた。
「何やっても受け流されるから、どれが駄目とかいいとか取っ掛かりないんだよ、雪季は。それにどうせ、上辺だけ繕っても見抜かれるんだろうし。そうやって好かれても結局見放されそうだし」
「…そもそも、友人づきあいの話に聞こえないんだが…」
「え。あー…だから多分、そこからずれてるから、雪季は俺のこと好きになんてなってくれないと思ってた」
「…別に好きではない」
「は?!」
「腐れ縁に近い。…それでも、こうやって話してるのは嫌いじゃない」
「ええええ…わけがわからない…」
今度は確実ににらまれた。言葉と顔の動きが合っていない。そしてそろそろ表情を戻してくれないだろうか、こちらだけが不利な気がする、と雪季は思う。
先ほどよりも大分軽く、ため息を落とす。
「まず、好きと嫌いに二分するな。人に対してなんて、入り混じってるものだろ。あと、好きだからとか役に立つからとかだけで友人付き合いするものでもないだろ。まあ、嫌悪が勝てばただの迷惑な他人だけどな」
「…えーとだから」
「迷惑で面倒な友人」
雪季が指差して見せると、もう一度首を傾げ、英は自分で自分を指さした。
「友人」
ふっと、息だけで笑った。
「やった。自慢しよっと。これから雪季のこと友達だって言っても否定しないんだ」
「…待て」
声が起伏に乏しく、どこまでどう本気なのかがさっぱりわからない。だから、本気だと仮定して。
「俺とお前が一緒に顔会わせる相手なんて、ほとんど客とか客候補だろ。俺がお前にくっついてるのはあくまで仕事。仕事中に公私混同するな」
「えー。いやでも、客ったってそれ以外に付き合いあるのほとんどだし、秘書で友人、別にいいじゃん」
「ただでさえ胡散臭いんだから、これ以上要素を増やすな」
「酷、そんなこと思ってたんだ。ちゃんと真っ当に仕事してるだろ」
「お前の存在がすでに胡散臭い。詐欺っぽい」
「…それ本気で酷くない?」
「間違ってるか?」
「あー…いやまあそれほど」
なんだそれは、と、言わせておいて雪季は呆れる。自覚があるのはいいが、それでもどうにかしようともしないのは余計に性質が悪い気がする。どうにもできないだけかも知れないが。
温んでしまった酒を、一息に呷る。
「感謝はしてる。あんな生活、長く続けられるものでもない。おかげで、この先もまともな仕事にも就けそうだ」
「待った」
雪季の言葉尻を押し潰す勢いで、英が身を乗り出した。
また肩をつかまれてはたまらないので、その分雪季はそっと身を引く。それでも何を思ったのか、上着の裾をつかまれた。
「どっか転職するつもりか?」
「今のところ予定はないが、クビになったりつぶれても裏家業に戻る必要がないのは、正直ありがたい」
「いや待てって」
雪季としては、英の態度がいつ変わるかも判らないので、心づもりだけはしているつもりでいる。
今となっては英の目的は果たされたのだろうから、いよいよ、いつ雪季への興味を失うかわかったものではない。同僚たちとの関係は良好なので働き続けられればありがたいが、それもあまり期待はしていない。
感謝は本当なので機会のあるうちに伝えておこうと思っただけなのだが、執着の解けていないらしい今は、少し時機を間違えた気がしたがもう遅い。
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「…ああ」
そう言われたところでどれだけ信用できるものか、と、考えながら、催促されて英のお猪口に酒を注ぐ。ついでに、自分の手元にも。
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するりと、足を組みかえる。ナッツをつまむ。どれもこれも、やはり芝居がかっている。微笑は完璧すぎて、何一つ読み取れない。
「もしあのまま母親のところにいたら、俺もそっち側にいたかも。暴力団絡みのヒットマンとか。それはそれで仲良くなれたかな? それとも、邪魔だって思ったかな。依頼が被ったり、お互いがターゲットになったりもしたかも。それでなくても、雪季に狙われて、命がけで反撃したらどっちが勝つかなって考えたりもした。それはそれで楽しそうだけど、うっかり俺が殺されたらそれまでだし、雪季を殺したらもう面白くなくなるし」
だから穏便なのを選んだ。本当は、もう少しかかると思ったし、ここまで楽しいとは思ってなかったから、凄く嬉しい。
つらつらと発される英の言葉が、雪季の思考を上滑りしていく。
今までも何度か、こういったことがあった。英は、雪季がなんとなく目を逸らしていることをかすめて言葉にするのが上手い。そのものではなくても、触発される。
そしてうっかりと、その通りだと思いそうになる。
「…勝手な想像で遊ぶな」
「いいだろこのくらい。俺がどれだけ我慢したと思ってるんだよ。十年も、ずっと声かけるの我慢してたんだから。夢が叶った気分ってこういうの?」
一度深く目をつぶって、雪季は、深々と息を吐いた。
「…早まった」
「取り消しは聞かないから。もうこれから、雪季がどれだけ否定してもさっきちゃんと俺のこと友人って言ったの覚えてるから、くじけないよ俺」
「今までも十分だっただろ…」
徳利の中身を全て手元の猪口に注ぎ込み、一息に干した。酒臭い溜息を、たっぷりと落とす。時計を見れば、英に起こされてから一時間近くが経っていた。
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