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そうして、事態は終わる
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「あの…響…?」
返事がないのは、それだけ消耗しているのか、何かと闘っているのか。
食べるというのは、そのまま、血肉からエネルギーを得られるということなのだろうか。響と契約してから、特に何を求められるということはなく大量にごはんやお菓子を食べるくらいだと思っていたけど、本当は、そういったものの方がよかったのだろうか。
「ねえ、響。丸ごと食べられると少し困るけど、死なない程度に血を飲むとか、そういうので少しでもましになるなら、いいよ」
「…おさえが、きかなく、なる」
「それでもいいよ。どうしようもなくなったら、それで。響が死ぬよりも、ずっといい」
また返事はなくて、ただ、腕により力がこもったような気がした。響の体に押し付けられるようで、鼓動が耳に響く。
「響。本当に、いいの。あなたに会わなければ、私は生きられなかったし、生きようとも思わなかった。死ぬのは怖かったけれど、仕方ないとも思っていたの。だから、あなたがいなくなるなら、私だけ生きていたいとも思えない」
返事はなかった。
どのくらい経ったのか、ほんのわずかずつ、鼓動はゆっくりになっていくようだった。ゆっくりと、それが普通の速さに戻っていっているのか、それよりもよりゆっくりになっているのかはわからない。
そのことが、こわい。
「響、響…大丈夫? ちゃんと…」
「大丈夫だ。もう、大体抜けた」
「…本当?」
「ああ」
「よかった…」
深く、息を吐く。体から、力が抜けた。そうなってから、随分と力が入っていたことに気付く。
そうすると妙なもので、お風呂のお湯が出しっ放しだと妙なことが気になってから、一定量が溜まれば止まるようになっているのだったかと思い出す。ハイテクの世の中だ。それなのに私は、伝説や昔話の中にしかいないはずの悪魔とともにいる。
体温があって、心臓が動いて、感情だってある、人のような悪魔と。
「……響?」
「なんだ」
「大丈夫なら、放してもらえないかなー、と」
移動するときに抱き上げられたり抱き留められたりすることはあっても、今回は随分と長い。さすがに、なんだか妙な気分になる。
お互いの顔が見えないのがせめてもの救いだけど、今になって、結構恥ずかしい。
「いやだ」
「え?」
妙に子どもっぽい声音に、思わず顔を上げる。それでも、体が密着しているせいで顔は見えない。
「全部。思い出した」
「…響?」
気付けば、私を閉じ込め守っていた腕は、柔らかなものに変わっていた。抱きしめるように回された腕の優しさに戸惑う。振りほどけないのは、変わらないのに。
返事がないのは、それだけ消耗しているのか、何かと闘っているのか。
食べるというのは、そのまま、血肉からエネルギーを得られるということなのだろうか。響と契約してから、特に何を求められるということはなく大量にごはんやお菓子を食べるくらいだと思っていたけど、本当は、そういったものの方がよかったのだろうか。
「ねえ、響。丸ごと食べられると少し困るけど、死なない程度に血を飲むとか、そういうので少しでもましになるなら、いいよ」
「…おさえが、きかなく、なる」
「それでもいいよ。どうしようもなくなったら、それで。響が死ぬよりも、ずっといい」
また返事はなくて、ただ、腕により力がこもったような気がした。響の体に押し付けられるようで、鼓動が耳に響く。
「響。本当に、いいの。あなたに会わなければ、私は生きられなかったし、生きようとも思わなかった。死ぬのは怖かったけれど、仕方ないとも思っていたの。だから、あなたがいなくなるなら、私だけ生きていたいとも思えない」
返事はなかった。
どのくらい経ったのか、ほんのわずかずつ、鼓動はゆっくりになっていくようだった。ゆっくりと、それが普通の速さに戻っていっているのか、それよりもよりゆっくりになっているのかはわからない。
そのことが、こわい。
「響、響…大丈夫? ちゃんと…」
「大丈夫だ。もう、大体抜けた」
「…本当?」
「ああ」
「よかった…」
深く、息を吐く。体から、力が抜けた。そうなってから、随分と力が入っていたことに気付く。
そうすると妙なもので、お風呂のお湯が出しっ放しだと妙なことが気になってから、一定量が溜まれば止まるようになっているのだったかと思い出す。ハイテクの世の中だ。それなのに私は、伝説や昔話の中にしかいないはずの悪魔とともにいる。
体温があって、心臓が動いて、感情だってある、人のような悪魔と。
「……響?」
「なんだ」
「大丈夫なら、放してもらえないかなー、と」
移動するときに抱き上げられたり抱き留められたりすることはあっても、今回は随分と長い。さすがに、なんだか妙な気分になる。
お互いの顔が見えないのがせめてもの救いだけど、今になって、結構恥ずかしい。
「いやだ」
「え?」
妙に子どもっぽい声音に、思わず顔を上げる。それでも、体が密着しているせいで顔は見えない。
「全部。思い出した」
「…響?」
気付けば、私を閉じ込め守っていた腕は、柔らかなものに変わっていた。抱きしめるように回された腕の優しさに戸惑う。振りほどけないのは、変わらないのに。
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