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Episode01「かみさま」
02◇おはよう
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◇◇◇
……ふっと目が覚める。どうやら、あのあと気を失った私はベッドの上に寝かされていたようだった。
カーテンからこぼれる光がまだ朝のそれであることを知らせている。
ゆっくりと上体を起こすとそこはいつもの自分の部屋の寝室だとわかるが全く見覚えのない場所でもあった。
ただ……、どこか懐かしい雰囲気もある。
(ここ…………どこ?)
きょろきょろと見回すと隣には私が横になっていたであろうベッドがあって、その向こう側にも同じような扉があり別の部屋が続いているようだったがカーテンに覆われていた。
(病院かな?それにしても……)
自分の記憶が正しければ、倒れたとき誰かに助けられてここに運ばれてきたはずなのだが周りに人がいる様子はない……。
そもそも自分がなぜここにいるのかすらよくわからない状況なのに誰もいないというのはあまりにも不自然で不安になってくる。
その時、隣の部屋のほうで小さなノックの音が聞こえて、私は返事をするまもなく開いたドアから一人の少年が現れたことに驚いた。
少年はまだ中学生くらいだろうか。
漆黒の短髪に白い肌があまりに綺麗で、目を奪われてしまう。
少年は、体を起こしている私を見て少し目を見開いた後足早に近づいてくる。
「よかった、気づいたんだね。 気分はどう? 痛いところはある?」
――そうだ、この声。
この声を聴いて私、ひどく安心して…それでずっと張りつめてた神経がゆるんで…気を失ったんだった。
この、穏やかな声を聴いて…。
「…お姉さん?」
返事をせず考え込んでいた私を心配してか、少年が手に持っていたトレイをベッドの上にそっと置くと覗き込むように顔を寄せてきた。
「……っ あ、はい!だいじょう――」
彼は、近くで見れば見るほど…瞳も、唇も、まつ毛もすべてが整っていて…直視するのが難しい。
思わずびくっと後ずさろうとすると、突然頭痛に襲われぐらりと倒れ込みそうになる。
すると慌てたように少年の手が伸びてきて背中を支えられた。
触れ合う腕からは熱が伝わってくる。
少年はそのまま顔を私の額へ近づけて、そして耳元で囁いた。
「……お姉さんの頭を打ったところにたんこぶが出来てるんだって。だから……あんまり無理しないほうがいいと思うよ。今日1日ゆっくり休むこと。ちゃんと医者にみてもらったから安心していいよ」
それは、先ほどまで不安に駆られていた私の心を見透かすかのように、まるで落ち着かせるようなゆっくりとしたテンポと優しさに満ちた声音だった。
…あれ?でも私、頭なんて打ったっけ…?
「は、はい。ありがとうございます」
なぜだか、私はこの少年に対して敬語を使ってしまう。
…でも、それで正解なような気がしていた。なぜかはわからないけど…。
ふと、少年が私の視線に気づいたのかくすりと笑って尋ねる。
「なあに? 俺の顔、なにかついてる?」
「あっ、いえ、その…あんまり…綺麗だから…」
気づかれてしまうほど見ていた自分が恥ずかしく思えて、掛け布団を両手で鼻元まで引き寄せ隠す。
きっと私は今、耳まで真っ赤だと思う。だって…急に体がポカポカしてきたから。
そして彼はといえば、再びくすっと笑った気がして顔を向けると、「いやごめん。まさかそんなこと言われるとは思ってなくて……つい」なんて言いながら目尻を下げると彼の細くて白い指先が私の頬に滑り落ちる。
(あれ? なんだろうこれ。なんか変な……感じ……)
なんだか胸の鼓動が速くなる。どうしてだろう……。
そうしてまた私と目が合うとくすりと微笑む彼を見るとこんどはこちらの方がおかしくなってしまってなんだか私までつられてしまって、二人で顔を合わせて笑う。
「一応スープ作ってきたんだけど、食べれそう?」
「あ、はい…!大丈夫です!」
そばに置かれたトレイのことを思い出し、素直に喜んではベッドに手をつき体制を直そうとした時。「ポフッ」と音を立ててベッドに倒れ込んでしまった。
「……はれ?」
状況が呑み込めずクエスチョンマークで頭がいっぱいになっていると、少年がふふっと小さく笑ってベッドに乗り上げると私の腰と後頭部に手を伸ばしスッと抱き起した。
…まるで、人形でも抱き起すように軽々と。その所作は、やっぱり子供に見えなくて不思議な感じだ。
……ふっと目が覚める。どうやら、あのあと気を失った私はベッドの上に寝かされていたようだった。
カーテンからこぼれる光がまだ朝のそれであることを知らせている。
ゆっくりと上体を起こすとそこはいつもの自分の部屋の寝室だとわかるが全く見覚えのない場所でもあった。
ただ……、どこか懐かしい雰囲気もある。
(ここ…………どこ?)
きょろきょろと見回すと隣には私が横になっていたであろうベッドがあって、その向こう側にも同じような扉があり別の部屋が続いているようだったがカーテンに覆われていた。
(病院かな?それにしても……)
自分の記憶が正しければ、倒れたとき誰かに助けられてここに運ばれてきたはずなのだが周りに人がいる様子はない……。
そもそも自分がなぜここにいるのかすらよくわからない状況なのに誰もいないというのはあまりにも不自然で不安になってくる。
その時、隣の部屋のほうで小さなノックの音が聞こえて、私は返事をするまもなく開いたドアから一人の少年が現れたことに驚いた。
少年はまだ中学生くらいだろうか。
漆黒の短髪に白い肌があまりに綺麗で、目を奪われてしまう。
少年は、体を起こしている私を見て少し目を見開いた後足早に近づいてくる。
「よかった、気づいたんだね。 気分はどう? 痛いところはある?」
――そうだ、この声。
この声を聴いて私、ひどく安心して…それでずっと張りつめてた神経がゆるんで…気を失ったんだった。
この、穏やかな声を聴いて…。
「…お姉さん?」
返事をせず考え込んでいた私を心配してか、少年が手に持っていたトレイをベッドの上にそっと置くと覗き込むように顔を寄せてきた。
「……っ あ、はい!だいじょう――」
彼は、近くで見れば見るほど…瞳も、唇も、まつ毛もすべてが整っていて…直視するのが難しい。
思わずびくっと後ずさろうとすると、突然頭痛に襲われぐらりと倒れ込みそうになる。
すると慌てたように少年の手が伸びてきて背中を支えられた。
触れ合う腕からは熱が伝わってくる。
少年はそのまま顔を私の額へ近づけて、そして耳元で囁いた。
「……お姉さんの頭を打ったところにたんこぶが出来てるんだって。だから……あんまり無理しないほうがいいと思うよ。今日1日ゆっくり休むこと。ちゃんと医者にみてもらったから安心していいよ」
それは、先ほどまで不安に駆られていた私の心を見透かすかのように、まるで落ち着かせるようなゆっくりとしたテンポと優しさに満ちた声音だった。
…あれ?でも私、頭なんて打ったっけ…?
「は、はい。ありがとうございます」
なぜだか、私はこの少年に対して敬語を使ってしまう。
…でも、それで正解なような気がしていた。なぜかはわからないけど…。
ふと、少年が私の視線に気づいたのかくすりと笑って尋ねる。
「なあに? 俺の顔、なにかついてる?」
「あっ、いえ、その…あんまり…綺麗だから…」
気づかれてしまうほど見ていた自分が恥ずかしく思えて、掛け布団を両手で鼻元まで引き寄せ隠す。
きっと私は今、耳まで真っ赤だと思う。だって…急に体がポカポカしてきたから。
そして彼はといえば、再びくすっと笑った気がして顔を向けると、「いやごめん。まさかそんなこと言われるとは思ってなくて……つい」なんて言いながら目尻を下げると彼の細くて白い指先が私の頬に滑り落ちる。
(あれ? なんだろうこれ。なんか変な……感じ……)
なんだか胸の鼓動が速くなる。どうしてだろう……。
そうしてまた私と目が合うとくすりと微笑む彼を見るとこんどはこちらの方がおかしくなってしまってなんだか私までつられてしまって、二人で顔を合わせて笑う。
「一応スープ作ってきたんだけど、食べれそう?」
「あ、はい…!大丈夫です!」
そばに置かれたトレイのことを思い出し、素直に喜んではベッドに手をつき体制を直そうとした時。「ポフッ」と音を立ててベッドに倒れ込んでしまった。
「……はれ?」
状況が呑み込めずクエスチョンマークで頭がいっぱいになっていると、少年がふふっと小さく笑ってベッドに乗り上げると私の腰と後頭部に手を伸ばしスッと抱き起した。
…まるで、人形でも抱き起すように軽々と。その所作は、やっぱり子供に見えなくて不思議な感じだ。
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