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Episode01「かみさま」
03◇おまじないとスープ
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「仕方がない人だな。ダメならダメって言っていいんだよ。無理はしちゃいけないよ」
そう言って、私の頬に…口づけた。
…………えっ?!?!
その行為に、自分でもよく分からない感情がこみあげてきて全身がぶわぁっと熱くなっていくのが分かる。
けれどそれよりも驚いたのは、目の前にいる彼が今までの穏やかで優しい声とは裏腹に……すごく色っぽい目をしていたことだった。
……そしてその目が、私の奥深くを見ているようで背筋にぞくりと何か冷たいものが走った。
……だけど、それは恐怖だとか不快だとかそんなものではなくて…。
ひたすら、彼から目が離せなくなって…呼吸を忘れそうになる。
……そんな感覚に、私は囚われていた。
その時だ。
――ぐうううぅう。
それは間違いなく、私の体内から出た音だった。そう、腹の虫というやつだ。
「…っふ、あはは! どうやらお腹はすいてるみたいだね」
「す、すみません…」
羞恥でさらに体温が上がっていくのを感じた。あぁ、恥ずかしい…!布団にもぐって忘れてしまいたい。
けれど、腰は少年にしっかり固定されるように支えられてしまってそれもかなわなかった。
「じゃあほら、口を開けてごらん」
「え?」
突然言われた意味が分からずにぽかんとしてしまう。
「お腹減ってるんだろう? あーん」
するとスプーンで掬われた一さじ分のスープが口元に運ばれてくる。
「はい、あーん」と繰り返す彼に戸惑ってしまう。
だってこんな……子供みたいなこと……恥ずかしい……。けど……。
(けど…………、なんで、私……?)
――食べたくてしょうがない……。
少年の瞳には有無を言わさない力強さがあった。
……きっと、私がここで嫌がっても彼はまたスプーンを口元に差し出してくるだろう。
それに……なぜか「食べたくない」と言う選択肢はなくなっていて……。
(なんでだろう……。私こんなにスープ好きだったっけ。それに…飲めば飲むほど…もっと欲しくなって…止まらない)
「……ん……」
そうして私は、自分の中にある本能的な衝動に従って彼の持つスープを口に含んだ。
味は、ほとんど何も感じることが出来ないほど、それどころではなかった。
……おいしいとかそういうレベルではなくて、体の内側から力が満ちていくのを感じる。
……そして何よりも、ずっと飢えていたような気分から解き放たれるようだった。
「お姉さん。ちゃんと飲んで、そして俺の目を見て」
飲み込むたびにこくりと喉が動く様子は、少年にとってはとても面白いらしく……じっと見つめながら楽しそうな声をあげると、「あ、もういいよ、ありがと。……あと少し、残ってるよね?」なんて言いながら最後のひとすくいを差し出してくる。
私はそれを、おねだりでもするかのように口を開けたまま舌を伸ばしていた。
すると「可愛いな、本当。全部食べられそうだよ」と囁かれ、私は自分の浅ましさに赤面した。
けれどそんな恥ずかしさも今はスパイスのように甘く胸の内を満たしていっていた。
……なんだか、体がおかしい。
私は今いったいどんな顔をしているんだろう。きっとひどい顔に違いない。
(あ……れ…………?なんでだろう……。なんか…………急に…眠たく……なってきた…………な…………)
そうして私に、意識を保とうとする気持ちすら奪われてしまう。
気づけば彼の胸の中で抱きしめられるように横たわっていて、彼の顔が近いと思った時にはすでにキスをされていた。
「……ン、……ちゅ……あ……」
「……あーあ、もう目が閉じかけてるね。……やっぱり、特別なおまじないをかけておいて正解だったな。スープは本当に美味しかったでしょう?」
ぼんやりとした頭に、彼からの問い掛けだけが響いた。
「おまじ…ない?」
「そう、おまじない。……あぁほら、ごめんね。眠いんでしょ。そのまま寝ちゃいな」
優しく頭を撫でられて……まるでお母さんにあやされている赤ちゃんのような安心感に包まれた。
あぁでも、ダメだ……。これ絶対ダメだよ……。
これ以上ここにいたら絶対にダメだ。
なのに……。どうしてか離れられない。
むしろこの時間が終わってほしくないと願うくらい心地よかった。
…………ダメだと分かっていても……このままずっとこうして……。
(あ…………ダメだ…………、…………落ちる…………)
――
――――
そう言って、私の頬に…口づけた。
…………えっ?!?!
その行為に、自分でもよく分からない感情がこみあげてきて全身がぶわぁっと熱くなっていくのが分かる。
けれどそれよりも驚いたのは、目の前にいる彼が今までの穏やかで優しい声とは裏腹に……すごく色っぽい目をしていたことだった。
……そしてその目が、私の奥深くを見ているようで背筋にぞくりと何か冷たいものが走った。
……だけど、それは恐怖だとか不快だとかそんなものではなくて…。
ひたすら、彼から目が離せなくなって…呼吸を忘れそうになる。
……そんな感覚に、私は囚われていた。
その時だ。
――ぐうううぅう。
それは間違いなく、私の体内から出た音だった。そう、腹の虫というやつだ。
「…っふ、あはは! どうやらお腹はすいてるみたいだね」
「す、すみません…」
羞恥でさらに体温が上がっていくのを感じた。あぁ、恥ずかしい…!布団にもぐって忘れてしまいたい。
けれど、腰は少年にしっかり固定されるように支えられてしまってそれもかなわなかった。
「じゃあほら、口を開けてごらん」
「え?」
突然言われた意味が分からずにぽかんとしてしまう。
「お腹減ってるんだろう? あーん」
するとスプーンで掬われた一さじ分のスープが口元に運ばれてくる。
「はい、あーん」と繰り返す彼に戸惑ってしまう。
だってこんな……子供みたいなこと……恥ずかしい……。けど……。
(けど…………、なんで、私……?)
――食べたくてしょうがない……。
少年の瞳には有無を言わさない力強さがあった。
……きっと、私がここで嫌がっても彼はまたスプーンを口元に差し出してくるだろう。
それに……なぜか「食べたくない」と言う選択肢はなくなっていて……。
(なんでだろう……。私こんなにスープ好きだったっけ。それに…飲めば飲むほど…もっと欲しくなって…止まらない)
「……ん……」
そうして私は、自分の中にある本能的な衝動に従って彼の持つスープを口に含んだ。
味は、ほとんど何も感じることが出来ないほど、それどころではなかった。
……おいしいとかそういうレベルではなくて、体の内側から力が満ちていくのを感じる。
……そして何よりも、ずっと飢えていたような気分から解き放たれるようだった。
「お姉さん。ちゃんと飲んで、そして俺の目を見て」
飲み込むたびにこくりと喉が動く様子は、少年にとってはとても面白いらしく……じっと見つめながら楽しそうな声をあげると、「あ、もういいよ、ありがと。……あと少し、残ってるよね?」なんて言いながら最後のひとすくいを差し出してくる。
私はそれを、おねだりでもするかのように口を開けたまま舌を伸ばしていた。
すると「可愛いな、本当。全部食べられそうだよ」と囁かれ、私は自分の浅ましさに赤面した。
けれどそんな恥ずかしさも今はスパイスのように甘く胸の内を満たしていっていた。
……なんだか、体がおかしい。
私は今いったいどんな顔をしているんだろう。きっとひどい顔に違いない。
(あ……れ…………?なんでだろう……。なんか…………急に…眠たく……なってきた…………な…………)
そうして私に、意識を保とうとする気持ちすら奪われてしまう。
気づけば彼の胸の中で抱きしめられるように横たわっていて、彼の顔が近いと思った時にはすでにキスをされていた。
「……ン、……ちゅ……あ……」
「……あーあ、もう目が閉じかけてるね。……やっぱり、特別なおまじないをかけておいて正解だったな。スープは本当に美味しかったでしょう?」
ぼんやりとした頭に、彼からの問い掛けだけが響いた。
「おまじ…ない?」
「そう、おまじない。……あぁほら、ごめんね。眠いんでしょ。そのまま寝ちゃいな」
優しく頭を撫でられて……まるでお母さんにあやされている赤ちゃんのような安心感に包まれた。
あぁでも、ダメだ……。これ絶対ダメだよ……。
これ以上ここにいたら絶対にダメだ。
なのに……。どうしてか離れられない。
むしろこの時間が終わってほしくないと願うくらい心地よかった。
…………ダメだと分かっていても……このままずっとこうして……。
(あ…………ダメだ…………、…………落ちる…………)
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