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1戦目
祝勝会と残念会:後編
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「しっかしよくこんな魔力を作ったな」
クガはセキヤの小剣を右手に持ってその刀身に刻まれた文字をまじまじと観察する。過去二回の大会への参加、そして前回大会優勝という経験をしていてもその魔力は初めて見る物で、素直にセキヤの魔法使いとしての素質に驚いていた。
剣闘大会参加者に配布されるスロ二の剣は三種類、長剣、大剣、小剣に分けられる。セキヤは果物ナイフサイズの小剣を、魔法使いのロープの下に隠し持っていたのである。
「でもやっぱり俺の言った通りの方法でやられてたじゃん!」
大剣を使っていたヒリューがほら見た事かと自慢げに声を張る。前々大会優勝者の闘い方は三人とも結構研究していた。というかそもそもの発端であるどの戦い方が一番強いかという言い争いも、ゴウの闘い方の基盤となる強さがどれかという点から始まっているのである。
ゴウに対する秘策としてセキヤが作り出した『反射』の魔力は、実はヒリューと手合せした時にすでに攻略されていたのである。だからこそセキヤは剣の魔力を見えない様に工夫していたのだ。
「小手先の策でどうこうなる相手じゃないってはっきり分かっただけでも収穫だ。それに……」
セキヤはゴウと対峙した時の事を思い出す。
剣闘大会のフィールドは大会管理者の魔法使いたちによって安全な状態に維持されている。あのフィールド上ではどんなダメージも実際の肉体的なダメージにはならない。剣で切り付けても血は出ないし、場外に吹っ飛ばされても打撲やら骨折やらのダメージを受けることはない。だからこそ剣闘大会はスポーツとして定義されている。
しかしセキヤが感じたプレッシャーはその安全という常識を覆しかねないものだった。ゴウはあの場でセキヤを倒そうとしていなかったのだと思い返してまた身体が震えるのを感じた。
「……クガさん、ゴウさんって何者なんですか?」
その恐怖を取り除きたくて、過去に何度も戦っているクガに質問する。クガもセキヤが体験した感覚を知っているし、セキヤが何故今その質問をしたのかも察していた。しかしクガはそれには答えなかった。
「さすがに人の過去をあれこれ言うほど口は軽くないぞ。知りたきゃ本人に聞くか、自分で探すんだな」
「その答えだけでも十分です」
ゴウがあれだけの強さを、本物の殺意を持っているのには理由がある。それが分かっただけで、セキヤはさっきまでのプレッシャーが消えていくのを感じていた。彼にとって理由や原因を探るのは得意分野だからだ。何より、あの強さが先天的な物じゃないと知れたことが大きかった。
「それで、お前らはこれからどうするんだ?」
テーブル一杯にあった料理もほとんどなくなった頃に、酔いが良い感じに回ってきた時に、クガが三人に質問した。
「私は温泉街カドキに行く予定です。火炎竜に会ってみようと思って」
エレアは今日手に入れたスロ三の剣を握りながら答える。
剣に宿す魔力の手に入れ方は二種類あって、セキヤのように魔法使いに作ってもらう方法と、魔物を倒して魔力を吸収する方法である。エレアは後者の方法で『火』の魔力を手に入れるつもりということである。
「僕は魔力研究本部のある都市カナイへ行きます。クガさんも次の鍛冶屋杯で解説の仕事があるから一緒ですよね?」
「俺の予定まで把握してるとか相変わらずマメだなお前は」
「これくらい当たり前です。今回手に入れられなかったスロ三剣を早く手に入れないといけないですから」
今日手に入っていてもまずカナイに行くつもりでしたけどねと付け足す。二人は具体的な目標があるが、もう一人のヒリューはクガのその質問に抽象的に答えた。
「俺はとにかく強い剣士と戦う予定です! 今日は歯ごたえ全然なかったし!」
相変わらずのバトルマニアっぷりと無鉄砲さに安心を覚えたのは一瞬で、クガは真面目な顔でヒリューを諭す。
「その直情さはお前の良い所だと思っているが、もう少し直せ。これからはお前は一人旅になるんだぞ?」
三人は三人とも両親に捨てられて、パンガーの道場主に育てられていた。だから三人とも十年以上一緒に暮してきていたのである。しかしこの剣闘大会ではそんな生活をすることはないし、そもそも誰の闘い方が一番強いのかを決めるのだから、仲良く一緒に強くなろうなんてことは出来ないのである。実際エレアとセキヤはもう明日にはそれぞれ違う場所を目指している。
「分かってますよ。大丈夫ですって、もっと俺を信用してください!」
その根拠のない自信が一番不安なんだよとクガはボヤくが、ヒリューはそんな心配には気付いていなかった。
「分かった。とりあえずお前はここに行ってこい」
クガはポケットのメモ帳にある街の名前を書いて、そのメモをヒリューに渡す。
「ノンリ?」
ヒリューはもらったメモに書いてあった文字を読む。その名前にヒリューだけでなくセキヤもエレアも首を傾げる。
「その街に行くのが俺からの課題だ。せいぜい頑張るんだな」
それで話は終わりと、クガは店員を呼んで会計を済ませた。
翌日、三人はそれぞれテレランの街を出て次の目的地へと出発した。
クガはセキヤの小剣を右手に持ってその刀身に刻まれた文字をまじまじと観察する。過去二回の大会への参加、そして前回大会優勝という経験をしていてもその魔力は初めて見る物で、素直にセキヤの魔法使いとしての素質に驚いていた。
剣闘大会参加者に配布されるスロ二の剣は三種類、長剣、大剣、小剣に分けられる。セキヤは果物ナイフサイズの小剣を、魔法使いのロープの下に隠し持っていたのである。
「でもやっぱり俺の言った通りの方法でやられてたじゃん!」
大剣を使っていたヒリューがほら見た事かと自慢げに声を張る。前々大会優勝者の闘い方は三人とも結構研究していた。というかそもそもの発端であるどの戦い方が一番強いかという言い争いも、ゴウの闘い方の基盤となる強さがどれかという点から始まっているのである。
ゴウに対する秘策としてセキヤが作り出した『反射』の魔力は、実はヒリューと手合せした時にすでに攻略されていたのである。だからこそセキヤは剣の魔力を見えない様に工夫していたのだ。
「小手先の策でどうこうなる相手じゃないってはっきり分かっただけでも収穫だ。それに……」
セキヤはゴウと対峙した時の事を思い出す。
剣闘大会のフィールドは大会管理者の魔法使いたちによって安全な状態に維持されている。あのフィールド上ではどんなダメージも実際の肉体的なダメージにはならない。剣で切り付けても血は出ないし、場外に吹っ飛ばされても打撲やら骨折やらのダメージを受けることはない。だからこそ剣闘大会はスポーツとして定義されている。
しかしセキヤが感じたプレッシャーはその安全という常識を覆しかねないものだった。ゴウはあの場でセキヤを倒そうとしていなかったのだと思い返してまた身体が震えるのを感じた。
「……クガさん、ゴウさんって何者なんですか?」
その恐怖を取り除きたくて、過去に何度も戦っているクガに質問する。クガもセキヤが体験した感覚を知っているし、セキヤが何故今その質問をしたのかも察していた。しかしクガはそれには答えなかった。
「さすがに人の過去をあれこれ言うほど口は軽くないぞ。知りたきゃ本人に聞くか、自分で探すんだな」
「その答えだけでも十分です」
ゴウがあれだけの強さを、本物の殺意を持っているのには理由がある。それが分かっただけで、セキヤはさっきまでのプレッシャーが消えていくのを感じていた。彼にとって理由や原因を探るのは得意分野だからだ。何より、あの強さが先天的な物じゃないと知れたことが大きかった。
「それで、お前らはこれからどうするんだ?」
テーブル一杯にあった料理もほとんどなくなった頃に、酔いが良い感じに回ってきた時に、クガが三人に質問した。
「私は温泉街カドキに行く予定です。火炎竜に会ってみようと思って」
エレアは今日手に入れたスロ三の剣を握りながら答える。
剣に宿す魔力の手に入れ方は二種類あって、セキヤのように魔法使いに作ってもらう方法と、魔物を倒して魔力を吸収する方法である。エレアは後者の方法で『火』の魔力を手に入れるつもりということである。
「僕は魔力研究本部のある都市カナイへ行きます。クガさんも次の鍛冶屋杯で解説の仕事があるから一緒ですよね?」
「俺の予定まで把握してるとか相変わらずマメだなお前は」
「これくらい当たり前です。今回手に入れられなかったスロ三剣を早く手に入れないといけないですから」
今日手に入っていてもまずカナイに行くつもりでしたけどねと付け足す。二人は具体的な目標があるが、もう一人のヒリューはクガのその質問に抽象的に答えた。
「俺はとにかく強い剣士と戦う予定です! 今日は歯ごたえ全然なかったし!」
相変わらずのバトルマニアっぷりと無鉄砲さに安心を覚えたのは一瞬で、クガは真面目な顔でヒリューを諭す。
「その直情さはお前の良い所だと思っているが、もう少し直せ。これからはお前は一人旅になるんだぞ?」
三人は三人とも両親に捨てられて、パンガーの道場主に育てられていた。だから三人とも十年以上一緒に暮してきていたのである。しかしこの剣闘大会ではそんな生活をすることはないし、そもそも誰の闘い方が一番強いのかを決めるのだから、仲良く一緒に強くなろうなんてことは出来ないのである。実際エレアとセキヤはもう明日にはそれぞれ違う場所を目指している。
「分かってますよ。大丈夫ですって、もっと俺を信用してください!」
その根拠のない自信が一番不安なんだよとクガはボヤくが、ヒリューはそんな心配には気付いていなかった。
「分かった。とりあえずお前はここに行ってこい」
クガはポケットのメモ帳にある街の名前を書いて、そのメモをヒリューに渡す。
「ノンリ?」
ヒリューはもらったメモに書いてあった文字を読む。その名前にヒリューだけでなくセキヤもエレアも首を傾げる。
「その街に行くのが俺からの課題だ。せいぜい頑張るんだな」
それで話は終わりと、クガは店員を呼んで会計を済ませた。
翌日、三人はそれぞれテレランの街を出て次の目的地へと出発した。
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