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2戦目
エレアの速さ
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「おうこらぁ、よくもやってくれたな!」
商人夫婦の売り物を盗んだ盗賊団のボスがリリィの身体をうつ伏せに抑え込んでいた。周りには盗賊団の団員が十数名、立っている者と倒されている者が丁度半々だった。リリィが彼らを倒した跡である。
「お前らが悪いんだろ、商人さんの荷物を返しなさいよ!」
「生意気な口を利くガキだな……、今の状況分かってんのか?」
「くっ……」
温泉街カドキにやってきた商人夫婦の商品を彼らは強奪して、山沿いの森に隠れ住んでいる洞窟に持ってきた。リリィはその夫婦から話を聞いてそれを取り返しに来たところを返り討ちにされたのである。
「とりあえず、俺たちに歯向かえないようにたっぷりお仕置きしないとな」
ボスがにやりと笑うと周りの団員達も下品な笑みを浮かべて、リリィに近づく。リリィはその男たちの表情とこれからされる暴行を想像して戦慄を覚える。
――いやだよ、こんなの嫌だよ!
こういった外敵から街を守るために強くなろうと決意していたのに、実際には守ることも出来ず、相手に返り討ちにあっている今の状況が、リリィのやりきれなさに拍車をかける。
――私にエレアさんみたいな強さがあれば。
「待ちなさい!」
先日出会った女性剣士の顔を思い浮かべたその瞬間、その剣士は盗賊団たちの囲いの外側で剣を構えて立っていた。ボスも団員達もリリィから視線を外して、外側にいる女性剣士に注目する。
「その子から離れなさい!」
「エレアさん!」
助けに来てくれたエレアに対する感謝の気持ちが溢れ出す。
――エレアさんなら大丈夫だ!
彼女の強さは剣闘大会で見たので良く分かっている。鍛冶屋杯の方が周囲に人が多かったし、何より剣士として研鑽を積んだ人たちと盗賊団の団員とでは個々のレベルが違う。この状況でエレアが負けるはずがないと、リリィは確信を持っていた。
しかしもう一つ決定的に状況が違う事を、のしかかられている盗賊団のボスに教えられることになる。
「お前こそ剣を手放せよ、この子がどうなっても良いのか?」
それはリリィという人質がいる事である。それに気付いた時にリリィはまた悔しい感情に飲みこまれる。
――私、エレアさんの足を引っ張ってる……。
単純に自分の力が及ばなくて、それで自分に責任が来るのはまだ大丈夫だった。しかし、その影響が他人にまで及ぼすことになるのには耐えられなかった。
――私のせいでエレアさんがやられたら……。
最悪の展開を想像してリリィは顔を青ざめる。それはリリィにとっては男たちに暴行されることを想像した時よりも遥かにショックな事だった。
しかしエレアは依然として剣を構えて、そして低い声でボスに問いかける。
「……最後の警告よ、その子から離れて今すぐ立ち去るなら何もしないわ」
さっきまでとは違う雰囲気である事を悟った者はその場には誰もいなかった。エレアは既にこの時点で魔力を使って戦闘態勢に入っていたのである。
「はぁ、お前こそ剣を離せって言ってんダン!」
エレアの『力』の魔力を使った音速の動きは誰も捉えられず、ボスはエレアの背後からの攻撃で吹き飛ばされて最後まで喋れなかった。
「へっ?」
周りにいた団員たちは今何が起こったのかを理解できなかった。リリィすらも自分がもう助かっている事を自覚するまでに時間がかかった位である。目の前にいたはずの女性剣士は視界から消えて、そして変わるようにボスが地面にキスする形で倒されていた。そして団員たちは背後からのプレッシャーに気付いて振り返ると、そこには笑顔で剣を構えるエレアの姿があった。
「さ、あなたたちも地面とキスしたいのかしら?」
残っていた団員たちは倒れている仲間たちも置いてすぐに逃げて行った。
商人夫婦の売り物を盗んだ盗賊団のボスがリリィの身体をうつ伏せに抑え込んでいた。周りには盗賊団の団員が十数名、立っている者と倒されている者が丁度半々だった。リリィが彼らを倒した跡である。
「お前らが悪いんだろ、商人さんの荷物を返しなさいよ!」
「生意気な口を利くガキだな……、今の状況分かってんのか?」
「くっ……」
温泉街カドキにやってきた商人夫婦の商品を彼らは強奪して、山沿いの森に隠れ住んでいる洞窟に持ってきた。リリィはその夫婦から話を聞いてそれを取り返しに来たところを返り討ちにされたのである。
「とりあえず、俺たちに歯向かえないようにたっぷりお仕置きしないとな」
ボスがにやりと笑うと周りの団員達も下品な笑みを浮かべて、リリィに近づく。リリィはその男たちの表情とこれからされる暴行を想像して戦慄を覚える。
――いやだよ、こんなの嫌だよ!
こういった外敵から街を守るために強くなろうと決意していたのに、実際には守ることも出来ず、相手に返り討ちにあっている今の状況が、リリィのやりきれなさに拍車をかける。
――私にエレアさんみたいな強さがあれば。
「待ちなさい!」
先日出会った女性剣士の顔を思い浮かべたその瞬間、その剣士は盗賊団たちの囲いの外側で剣を構えて立っていた。ボスも団員達もリリィから視線を外して、外側にいる女性剣士に注目する。
「その子から離れなさい!」
「エレアさん!」
助けに来てくれたエレアに対する感謝の気持ちが溢れ出す。
――エレアさんなら大丈夫だ!
彼女の強さは剣闘大会で見たので良く分かっている。鍛冶屋杯の方が周囲に人が多かったし、何より剣士として研鑽を積んだ人たちと盗賊団の団員とでは個々のレベルが違う。この状況でエレアが負けるはずがないと、リリィは確信を持っていた。
しかしもう一つ決定的に状況が違う事を、のしかかられている盗賊団のボスに教えられることになる。
「お前こそ剣を手放せよ、この子がどうなっても良いのか?」
それはリリィという人質がいる事である。それに気付いた時にリリィはまた悔しい感情に飲みこまれる。
――私、エレアさんの足を引っ張ってる……。
単純に自分の力が及ばなくて、それで自分に責任が来るのはまだ大丈夫だった。しかし、その影響が他人にまで及ぼすことになるのには耐えられなかった。
――私のせいでエレアさんがやられたら……。
最悪の展開を想像してリリィは顔を青ざめる。それはリリィにとっては男たちに暴行されることを想像した時よりも遥かにショックな事だった。
しかしエレアは依然として剣を構えて、そして低い声でボスに問いかける。
「……最後の警告よ、その子から離れて今すぐ立ち去るなら何もしないわ」
さっきまでとは違う雰囲気である事を悟った者はその場には誰もいなかった。エレアは既にこの時点で魔力を使って戦闘態勢に入っていたのである。
「はぁ、お前こそ剣を離せって言ってんダン!」
エレアの『力』の魔力を使った音速の動きは誰も捉えられず、ボスはエレアの背後からの攻撃で吹き飛ばされて最後まで喋れなかった。
「へっ?」
周りにいた団員たちは今何が起こったのかを理解できなかった。リリィすらも自分がもう助かっている事を自覚するまでに時間がかかった位である。目の前にいたはずの女性剣士は視界から消えて、そして変わるようにボスが地面にキスする形で倒されていた。そして団員たちは背後からのプレッシャーに気付いて振り返ると、そこには笑顔で剣を構えるエレアの姿があった。
「さ、あなたたちも地面とキスしたいのかしら?」
残っていた団員たちは倒れている仲間たちも置いてすぐに逃げて行った。
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