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4戦目
優しさとの出会い
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「はいはい起きなさーい。朝食できてるよー」
パンパンと手を叩く音で目を覚ます。部屋には昨日受付であったお姉さんがエプロン姿で立っていた。
「お、おはようございます。……ふわぁぁ」
「おはよう。朝は意外と弱い感じかな?」
朝の挨拶をしてからすぐに大きなあくびをする。ヒリューは寝起きから意識が覚醒するまで少し時間がかかるタイプなので、日中の活発な動きからは予想できないくらいにのろのろと布団から這い出て、朝食が用意されたテーブルへと向かおうとする。
「また随分と分かりやすいわね」
受付のお姉さんは先に椅子に座って対岸にヒリューが腰かけるのを待っていた。ベッドから椅子まで大した距離は無いのにも関わらず、そこから三分以上待つ事になった。
「……いただきます」
「召し上がれ」
睡眠欲よりも食欲の方が大きいヒリューは、食べ物を一口二口と口に含める度に徐々に行動が素早くなり、結局定食を一人前平らげるスピードは一般の人よりも早いくらいだった。
「ごちそうさまでした!」
「お粗末様でした。中々良い食べっぷりだね」
ヒリューの食べる姿をニマニマと見ていたお姉さんも満足そうに笑顔になる。食事の前の挨拶とは打って変わって大きな声で挨拶されたのも面白く感じたからだった。
「あ、普通に食べちゃいましたけど、俺お金……」
「気にしなくて良いのよ。これから一杯働いてもらうんだから」
お姉さんは空いた食器を持って部屋を出ようとする。
「十分後に下に降りてきてね。そこで詳しく仕事の説明するから」
「それじゃあ今日からのお仕事の説明をするわね」
受付のお姉さんはヒリューが受付に来たのを確認して、周辺地図をテーブルに広げる。
「まずこれからテレランの街へ向かうキャラバンがあるから、それの護衛を受けてもらいます。その後今度は向こうからこっちへと向かうキャラバンがあるので、夕方からそっちに同乗して今日の夜にこっちに戻ってきてもらうわ。一日中馬車に揺られての護衛任務になるから結構なハードスケジュールだけど大丈夫?」
「問題ないっす!」
体力だけなら自信があるのでと力一杯返答してやる気を見せる。
「よしよし、その意気だ。くれぐれもキャラバンの人を犯人呼ばわりしたりして迷惑はかけないようにね」
「う……、も、もうしませんよ」
「しっかりね。それとこれは私からのお小遣い」
小銭が何枚か入っている子袋をヒリューは投げ飛ばされる。
「何ですかこれ?」
「向こうで昼飯を食べるためのお金だよ。今のままじゃ食事にもありつけないでしょ」
昼過ぎにテレランに着くから、そこから帰りのキャラバンに同行する前に好きな物を食べておきなさいという受付のお姉さんからの粋な計らいだった。
「あ、ありがとうございます!」
「いいのいいの。困った時は助け合わないと」
昨日まで周りの人間が信じられないくらいに怒っていたヒリューにとって、受付のお姉さんの無性の優しさが心に刻み込まれるような思いだった。
――このお姉さんのためにも頑張らなくちゃ。
そう決意した時にヒリューは一つ忘れてる事があったのに気づく。
「あ、そういえば、お姉さんって名前何ですか?」
「私? 私はアムーリヤよ。長くて呼びづらかったらアンでいいわ」
そういえば自己紹介してなかったっけ、ごめんごめんと笑いながら謝るアムーリヤ。ヒリューはその名前と笑顔を一生忘れないようにしようと心に誓ったのであった。
パンパンと手を叩く音で目を覚ます。部屋には昨日受付であったお姉さんがエプロン姿で立っていた。
「お、おはようございます。……ふわぁぁ」
「おはよう。朝は意外と弱い感じかな?」
朝の挨拶をしてからすぐに大きなあくびをする。ヒリューは寝起きから意識が覚醒するまで少し時間がかかるタイプなので、日中の活発な動きからは予想できないくらいにのろのろと布団から這い出て、朝食が用意されたテーブルへと向かおうとする。
「また随分と分かりやすいわね」
受付のお姉さんは先に椅子に座って対岸にヒリューが腰かけるのを待っていた。ベッドから椅子まで大した距離は無いのにも関わらず、そこから三分以上待つ事になった。
「……いただきます」
「召し上がれ」
睡眠欲よりも食欲の方が大きいヒリューは、食べ物を一口二口と口に含める度に徐々に行動が素早くなり、結局定食を一人前平らげるスピードは一般の人よりも早いくらいだった。
「ごちそうさまでした!」
「お粗末様でした。中々良い食べっぷりだね」
ヒリューの食べる姿をニマニマと見ていたお姉さんも満足そうに笑顔になる。食事の前の挨拶とは打って変わって大きな声で挨拶されたのも面白く感じたからだった。
「あ、普通に食べちゃいましたけど、俺お金……」
「気にしなくて良いのよ。これから一杯働いてもらうんだから」
お姉さんは空いた食器を持って部屋を出ようとする。
「十分後に下に降りてきてね。そこで詳しく仕事の説明するから」
「それじゃあ今日からのお仕事の説明をするわね」
受付のお姉さんはヒリューが受付に来たのを確認して、周辺地図をテーブルに広げる。
「まずこれからテレランの街へ向かうキャラバンがあるから、それの護衛を受けてもらいます。その後今度は向こうからこっちへと向かうキャラバンがあるので、夕方からそっちに同乗して今日の夜にこっちに戻ってきてもらうわ。一日中馬車に揺られての護衛任務になるから結構なハードスケジュールだけど大丈夫?」
「問題ないっす!」
体力だけなら自信があるのでと力一杯返答してやる気を見せる。
「よしよし、その意気だ。くれぐれもキャラバンの人を犯人呼ばわりしたりして迷惑はかけないようにね」
「う……、も、もうしませんよ」
「しっかりね。それとこれは私からのお小遣い」
小銭が何枚か入っている子袋をヒリューは投げ飛ばされる。
「何ですかこれ?」
「向こうで昼飯を食べるためのお金だよ。今のままじゃ食事にもありつけないでしょ」
昼過ぎにテレランに着くから、そこから帰りのキャラバンに同行する前に好きな物を食べておきなさいという受付のお姉さんからの粋な計らいだった。
「あ、ありがとうございます!」
「いいのいいの。困った時は助け合わないと」
昨日まで周りの人間が信じられないくらいに怒っていたヒリューにとって、受付のお姉さんの無性の優しさが心に刻み込まれるような思いだった。
――このお姉さんのためにも頑張らなくちゃ。
そう決意した時にヒリューは一つ忘れてる事があったのに気づく。
「あ、そういえば、お姉さんって名前何ですか?」
「私? 私はアムーリヤよ。長くて呼びづらかったらアンでいいわ」
そういえば自己紹介してなかったっけ、ごめんごめんと笑いながら謝るアムーリヤ。ヒリューはその名前と笑顔を一生忘れないようにしようと心に誓ったのであった。
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