剣闘大会

tabuchimidori

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4戦目

勝てない戦い

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 それから一週間ほどはアムーリヤから護衛の仕事を斡旋してもらい、フリティアの街周辺を行ったり来たりしていた。ヒリューとしては一刻も早くテレランの街の三人組のおっさんたちに復讐してやりたい衝動に駆られていたが、仕事でテレランに行く事はなかった。
 しかし一週間後のある日、遂にヒリューは再びテレランの街へと行くキャラバンに同行させてもらえる事になったので、歓喜しながらその仕事に取り組む事となった。
 前回同様護衛の仕事ではある物の具体的に魔物を追い払ったりする事もなく、平和そのものの五時間を過ごし、テレランの街へと到着する。
 これまた前回同様昼過ぎに到着し、フリティアへ向かうキャラバンの出発は五時前と時間に余裕があるため、ヒリューはその時間をフルに使って三人組のおっさんたちを見付けようと躍起になった。
 首都のお膝元であり、北部、中央部、南部全てに繋がる交易路の終着点であるテレランの街は、ヒリューが想像しているよりも遥かに大きく、当然だが一人で適当に人探ししても見つかるはずがない。
 しかしそんな道理はヒリューには元々なく、とにかくまた同じ場所付近を歩いていれば見つかるはずだと超楽観的な思考で、前回と同じレストランで昼食を取ってからその周辺を歩き回る事にする。
 運が良いのか悪いのか、偶然にも『眠』の魔力を付与していった三人組を見付ける事に成功する。
「あ! お前ら!」
 ヒリューはもちろん見付けたと同時に大きな声を上げて怒りの形相で三人の元へと駆けつける。道行く人にぶつからないように気を付けていたが、やはり途中から怒りの度合いが強くなってしまって周りが見えなくなる。今回はそれによる二次被害は無かったが、すでにこの時点でヒリューは冷静な判断ができない状態になっていた。
「やい! よくも騙してくれたな!」
 逃げようとするもあっけなくヒリューに追いつかれて、後ろから首根っこを掴まれたのは、三人組の中で一番小さい、ヒリューの剣に直接『眠』の魔力を入れたおっさんだった。
「待ってくれ待ってくれ! その件に関しては俺たちもあんたに謝ろうとしててんだ!」
「何?」
 地面にうつ伏せに倒されてヒリューが体を乗せて逃げられないように拘束している状態のおっさんが話を聞いてくれと懇願する。ヒリューの姿を見た後に一旦逃げようとした段階で真っ黒なのは間違いないのだが、ヒリューはそれに気づく事無くおっさんの主張を聞こうとする。
「『眠』の魔力に欠陥があるのは俺らもあの後に知ったんだよ! それでどうにかできないかと別の魔力との組み合わせを色々考えてたんだ!」
 魔力剣に付与する魔力は単体で効果を発揮する物が多いが、中には組み合わせを前提とした魔力も存在する。一度に使用可能な個数や発動数を増やす『数』の魔力や、『分裂』や『猫』と言った召喚系の魔力との組み合わせが前提の『意志』の魔力などがそれに該当する。
「それで探したら『増強』の魔力が組み合わせとして使えるって気づいたんだよ!」
「『増強』?」
「魔力の純粋な性能を向上させる魔力さ! これを『眠』と組み合わせれば、本来なら効かない剣闘士相手でも効果を発揮する事ができるんだ!」
 そしてそれを自分でも作れるようになったと小さいおっさんは腰にある小剣を指差す。ヒリューはその動きを見ておっさんの小剣を手に取って魔力を確認する。確かにそこには『眠』と『増強』の魔力が付与されていた。
「『増強』は他の魔力とも組み合わせられるから入れといて損はない魔力だ。加えて本来なら使い物にならない『眠』も活用できるようになるんだから、入れないなんてあり得ない話だよな!」
 小さいおっさんはヒリューの力が緩んだのを確認して捲し立てる。ヒリューは正直この魔力がもらえるんならこないだの事はチャラにしても良いのでは思い始めていたのだ。
「そうそう! この魔力を見付けたからあんたにも教えようとこの辺で待ってたのさ!」
「いやー、あんたにまた会えて本当にホッとしたよ!」
 周りにいて何もできずに突っ立っていただけの他の二人も話を合わせる。それがヒリューには違和感に感じられなかった。
「その『増強』の魔力を俺の剣にも入れてくれるんだよな?」
「もちろんだ! 言ったろ、あんたの事を応援してるって!」
 ヒリューはそれまでの怒りがいつの間にか消えている事に気付き、小さいおっさんの上から退いて、そして再び剣に魔力を入れてもらう事にしたのだった。
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