剣闘大会

tabuchimidori

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3戦目

エレアVSゴウ

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「良いね、その剣はあの子のだよね?」
 ゴウはステージの外にいるセキヤを視界の端に捉える。エレアはゴウから視線を逸らさずにその質問をはぐらかす。
「さぁ、どうでしょうか。セキヤから魔力を分けてもらったかもしれませんよ?」
 エレアは傍目には冷静に、そして少し余裕すら感じられる笑みを浮かべながらゴウと話す。しかしセキヤと同じようにゴウからのプレッシャーに負けないように精一杯の虚勢を張っているだけであった。
 ――セキヤから聞いてたけど、これはちょっと、違うわね……。
 スギヤ、ミスト、モリの三人の初撃をきれいに弾き返したことで、改めて『反射』の魔力の強さを感じ取っていた。それなのに、目の前にいるゴウには通用しないと思わされてしまうほどに強烈なプレッシャーだった。
 そのプレッシャーにエレアは低く短い息をフッと吐いて気持ちを切り替えることで少しでも抗う。
 ――負けて元々、やれるだけやるんだ!
 その意識の切り替えを見てゴウは笑顔の表情のまま、魔力を開放する。
「その魔力があるなら、こっちとしては本気を出さないとね」
 ゴウは『分身』の魔力で二人になってから剣を構える。両手で剣を持ち、まっすぐにエレアを見つめる視線が増える。エレアはゴウからのプレッシャーがさらに激しく増すのを感じていた。そのプレッシャーの形が変わっているのも感じ取り、エレアはその理由を探る。
 ――これも……、違う!
 プレッシャーに押しつぶされていれば、エレアは間違いなくそのまま物理的にも潰されていたであろう。違和感の正体に気付いたエレアは右手側に転がって回避する。そのすぐ後にエレアのいた地点にゴウが剣と共に降り立つ。その地響きが、ゴウがどれだけ高い所から落ちてきたかを物語る。
「ヒュー、やるねぇ!」
 着地の時に壊されたステージの石つぶてを食らいながらもすぐに態勢を立て直して、三人のゴウを視界に収める。特に上から降ってきたゴウに注目した。
「何で気付いたの?」
「いつもと構えが違ったのと、『数』の魔力があったものですから」
 三人が構えている剣は前回の鍛冶屋杯で手に入れたスロ三の剣で、前回の魔力の組み合わせに『数』が加わっていた。ゴウが『分身』の魔力を扱う事は有名だが、その彼をもってしても三体を同時に扱う事は今までに一度もなかった。だからこそこの現状は観客にとっても驚きの声で一杯だった。
「やっぱりその剣が相手だとちょっと本気を出さないといけないから、悪いけど本気で行くよ?」
 その観客の声がさらに湧き上がる。ゴウの分身体がさらに増えて全部で八体になったからだ。八体のゴウはエレアに対して扇状に並び、今度はいつも通りの構え、右手で剣を持って上半身を地面すれすれに屈む構えでエレアに対する。エレアはその構えが完成しきるよりも先に、その扇状の中心に向かって走り出す。エレアの方からゴウへと攻め入ったのである。ゴウはその攻撃を躱して一気に距離を空ける。その時点ですでにゴウの分身体は一体も残っていなかった。
「わかっていた……、わけじゃないんだね」
 ゴウはエレアのアクションが最適解だったことに驚いたが、エレアのしてやったりの笑顔を見てただの勘だと気付いた。
「確信はなかったです。でも多分ゴウさんでも八体は動かせないだろうと思ったんです。だから止まってるよりかは動いた方が良いかと思って」
「戦闘のセンスは赤い髪の子が一番な気がしてたけど、君も十分過ぎるくらいあるね。良いね、良いよ!」
 本気を出すのに躊躇いがいらなくなるねと大声で喜びを表す。そして再びゴウは分身体を作って二人でエレアに襲いかかる。エレアの持つ『反射』の力の対策として、必ず二人同時に別方向から攻撃をするようにしていた。エレアがどちらか片方の剣を『反射』させようと攻勢に出れば、ゴウは引く。エレアが距離を空ければゴウが攻めに転じる。正に一進一退の攻防だったが、それも長続きはしなかった。エレアが徐々にゴウのスピードについていけなくなったのである。
 ――何で、何でどんどん早くなるの!?
 エレアの戸惑いは必然であった。セキヤとの戦いの時と戦闘が開始してからのゴウの速さは全く同じだったからだ。それもゴウの作戦の内だったのである。セキヤが自分の剣の魔力を隠していたように、ゴウもまた自分の力を鍛冶屋杯では全て出さないようにセーブしていたのである。しかも実力を隠していただけではなく、そこから少しずつ変化を与えることでより効果的に速さを演出したのである。最初から最速の動きを見せると段々と慣れていくので、逆に速度に変化を付けることでゴウの動きに目が慣れない様にしたのである。
 それでもエレアは勝利に対する執念でゴウの速さに食らいつく。すぐに頭を切り替えて冷静に一つずつ捌いていく。だからこそ決定打だけはなんとか避けることができた。しかし一発、また一発とゴウの攻撃を受け続けて、そしてエレアのダメージ過多によるリングアウト判定で戦闘はフェードアウトした。
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