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6戦目
対人訓練
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「はぁぁぁ!」
少女が力一杯の声を上げながら身の丈以上の大剣を振り回す。彼女の周りには他に三人の剣士が構えていて、その大剣に当たらないように動き、そして反撃に転じる。
「ふっ!」
大剣を振り回した遠心力に逆らわないようにステップを踏み、すぐに大剣を身体に引き寄せて防御の構えを作る。反撃のために一歩前に出た剣士がその構えを見て攻撃に行くのを止める。
「はっ!」
しかし三人中一人はそれでも構う事なく攻撃に踏み込んでいた。少女はその攻撃を大剣で防ぎ、大剣ごと相手を押し出して相手との距離を一旦作ろうとする。
すると今度は両脇から二人が同時に攻撃にやってくる。少女はそのままでは攻撃を躱しきれないと判断して、大剣を一度手放して右側からやってきた剣士の攻撃をギリギリで躱し、その勢いを利用して背負い投げを決める。その相手は左から来ていたもう一人の剣士にぶつかって、二人で転倒する形となった。
「やぁぁぁ!」
すぐに先ほど手放した大剣を持ち上げ、重なって地面に倒れている二人に大剣を振り下ろす。クリティカル判定が出現して、その剣士二人はリングアウトした。
――行け……るッ!
二人を退場にさせて後は一人だけだと油断したその隙に、後ろに回り込んでいたもう一人の剣士からの攻撃によって、今度はその少女がリングアウトしていた。
「うぅぅぅ……、やっぱりキツイですよ……」
三対一という不利な状況下でもなんとか二人を倒すところまでは頑張ったリリィが、三人目がどうしても倒せない事に苦悩していた。そばでその戦いを見ていたエレアがリリィにアドバイスを送る。
「まだまだ視野が狭いよ。二人を攻撃する前に三人目の居場所をちゃんと把握していれば良いだけだよ」
「そんな簡単な事みたいに言わないでくださいよ……」
「大丈夫だって。二対一だって初めは厳しいって思ってたでしょ。今回も行けるって」
「もう二週間近くこれだけやっても中々上手くいかないんですよ。もう少し何かアドバイスとか別の訓練とかは……」
「努力に勝る物はなし。クガさんも言ってたんだから楽しようとしない」
「うう……。ちょっと休憩したらもう一回挑戦します」
「うん、頑張れ!」
第二回鍛冶屋杯から三週間程度、セキヤがミーレーの街でクヌーをこき使っている時、エレアとリリィは中央部のとある村に滞在していた。そこは特に交流が多い場所でもない、自然が豊かなのどかな村であるが、その村の外れには一際大きな道場がある。
『マチカゼ剣術道場』
すでに剣術指導はしていないのだが、現在はスギヤ・マチカゼがこの道場の所有者であるため、『ワンアタック』の集会所兼訓練所になっていた。
第二回鍛冶屋杯の後にエレアの強さに惹かれたスギヤが是非うちに来て一緒に訓練をしてみませんかと誘ったのである。エレアとしては群れて訓練するのはどうかと思っていたのだが、リリィの対人戦闘における経験を増やす場としてはかなり良い場所になるのではと思って二人ともここにやってきたのである。
かれこれ二週間近くリリィにはとにかく多対一での対人戦の訓練を行い、自身も一対一での訓練を主にスギヤと行っていた。
「今日も精が出ますね」
その道場の主であり『ワンアタック』の責任者のスギヤが二人に話しかける。すぐ後ろにはミストも仏頂面で控えていた。
「スギヤさん。リリィの戦いを見て何かアドバイスはありますか?」
エレアは自分ではこれ以上具体的なアドバイスができないので、スギヤに助言を求める。
「そうですね、途中剣を手放して予測不能な行動を取ったのは良いです。ただやはり剣が無い状態を作るというのはかなり不利になってしまいます。次からはあまりしないようにしましょう」
「でもそれだと大剣の重さが……」
リリィの訓練ではリリィのみ『力』の魔力の使用を許可していて、周りの剣闘士たちは素の状態で戦っていた。まだ子供に近いリリィと他の剣闘士との体格の差を考えた上でのハンデだが、それでも大剣の重さはリリィにとってはまだまだ簡単に扱えるものではなかった。
「大剣の一撃の強さで火力をカバーしている以上、それを手放すのは矛盾してしまいます。確実に相手にクリティカルを与えられるよう隙を作る。それを大剣を使わずに狙ってみましょう」
「大剣を使わずに、ですか?」
「ええ、ここでの訓練の甲斐もあって前よりも大剣を持っている時の動きは清廉されています。あのステップを上手く使って相手を翻弄しましょう」
「?」
スギヤが途中で難解な言葉を使ったため、リリィはイマイチどうすれば良いか分からず首を傾げる。もうそういったやり取りは何回かやっているのでエレアがすかさずフォローする。
「大剣を振り回さないで動いたらって事。相手の攻撃の隙をつくようにするのよ」
「そういう事です」
「なるほど!」
さっきに比べるとまだ改良の余地があるアドバイスだったので、リリィはさっきよりもやる気を出してフィールドへと向かっていった。
「もう一回お願いします!」
敵の攻撃を躱すのに精一杯になってしまって、そのまま先に体力の限界がきて結局今度は一人もリングアウトできずに終わってしまったが。
少女が力一杯の声を上げながら身の丈以上の大剣を振り回す。彼女の周りには他に三人の剣士が構えていて、その大剣に当たらないように動き、そして反撃に転じる。
「ふっ!」
大剣を振り回した遠心力に逆らわないようにステップを踏み、すぐに大剣を身体に引き寄せて防御の構えを作る。反撃のために一歩前に出た剣士がその構えを見て攻撃に行くのを止める。
「はっ!」
しかし三人中一人はそれでも構う事なく攻撃に踏み込んでいた。少女はその攻撃を大剣で防ぎ、大剣ごと相手を押し出して相手との距離を一旦作ろうとする。
すると今度は両脇から二人が同時に攻撃にやってくる。少女はそのままでは攻撃を躱しきれないと判断して、大剣を一度手放して右側からやってきた剣士の攻撃をギリギリで躱し、その勢いを利用して背負い投げを決める。その相手は左から来ていたもう一人の剣士にぶつかって、二人で転倒する形となった。
「やぁぁぁ!」
すぐに先ほど手放した大剣を持ち上げ、重なって地面に倒れている二人に大剣を振り下ろす。クリティカル判定が出現して、その剣士二人はリングアウトした。
――行け……るッ!
二人を退場にさせて後は一人だけだと油断したその隙に、後ろに回り込んでいたもう一人の剣士からの攻撃によって、今度はその少女がリングアウトしていた。
「うぅぅぅ……、やっぱりキツイですよ……」
三対一という不利な状況下でもなんとか二人を倒すところまでは頑張ったリリィが、三人目がどうしても倒せない事に苦悩していた。そばでその戦いを見ていたエレアがリリィにアドバイスを送る。
「まだまだ視野が狭いよ。二人を攻撃する前に三人目の居場所をちゃんと把握していれば良いだけだよ」
「そんな簡単な事みたいに言わないでくださいよ……」
「大丈夫だって。二対一だって初めは厳しいって思ってたでしょ。今回も行けるって」
「もう二週間近くこれだけやっても中々上手くいかないんですよ。もう少し何かアドバイスとか別の訓練とかは……」
「努力に勝る物はなし。クガさんも言ってたんだから楽しようとしない」
「うう……。ちょっと休憩したらもう一回挑戦します」
「うん、頑張れ!」
第二回鍛冶屋杯から三週間程度、セキヤがミーレーの街でクヌーをこき使っている時、エレアとリリィは中央部のとある村に滞在していた。そこは特に交流が多い場所でもない、自然が豊かなのどかな村であるが、その村の外れには一際大きな道場がある。
『マチカゼ剣術道場』
すでに剣術指導はしていないのだが、現在はスギヤ・マチカゼがこの道場の所有者であるため、『ワンアタック』の集会所兼訓練所になっていた。
第二回鍛冶屋杯の後にエレアの強さに惹かれたスギヤが是非うちに来て一緒に訓練をしてみませんかと誘ったのである。エレアとしては群れて訓練するのはどうかと思っていたのだが、リリィの対人戦闘における経験を増やす場としてはかなり良い場所になるのではと思って二人ともここにやってきたのである。
かれこれ二週間近くリリィにはとにかく多対一での対人戦の訓練を行い、自身も一対一での訓練を主にスギヤと行っていた。
「今日も精が出ますね」
その道場の主であり『ワンアタック』の責任者のスギヤが二人に話しかける。すぐ後ろにはミストも仏頂面で控えていた。
「スギヤさん。リリィの戦いを見て何かアドバイスはありますか?」
エレアは自分ではこれ以上具体的なアドバイスができないので、スギヤに助言を求める。
「そうですね、途中剣を手放して予測不能な行動を取ったのは良いです。ただやはり剣が無い状態を作るというのはかなり不利になってしまいます。次からはあまりしないようにしましょう」
「でもそれだと大剣の重さが……」
リリィの訓練ではリリィのみ『力』の魔力の使用を許可していて、周りの剣闘士たちは素の状態で戦っていた。まだ子供に近いリリィと他の剣闘士との体格の差を考えた上でのハンデだが、それでも大剣の重さはリリィにとってはまだまだ簡単に扱えるものではなかった。
「大剣の一撃の強さで火力をカバーしている以上、それを手放すのは矛盾してしまいます。確実に相手にクリティカルを与えられるよう隙を作る。それを大剣を使わずに狙ってみましょう」
「大剣を使わずに、ですか?」
「ええ、ここでの訓練の甲斐もあって前よりも大剣を持っている時の動きは清廉されています。あのステップを上手く使って相手を翻弄しましょう」
「?」
スギヤが途中で難解な言葉を使ったため、リリィはイマイチどうすれば良いか分からず首を傾げる。もうそういったやり取りは何回かやっているのでエレアがすかさずフォローする。
「大剣を振り回さないで動いたらって事。相手の攻撃の隙をつくようにするのよ」
「そういう事です」
「なるほど!」
さっきに比べるとまだ改良の余地があるアドバイスだったので、リリィはさっきよりもやる気を出してフィールドへと向かっていった。
「もう一回お願いします!」
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