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6戦目
防御主軸
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マチカゼ道場からミーレーの街までは三日ほどかかるので、あの話し合いから数日後には『ワンアタック』のメンバーのほとんどが道場から出発した。今ここにいるのは私とスギヤさんとリリィ、それ以外にはほんの数人だけになった。
リリィの訓練に付き合ってくれていた剣闘士たちもミーレーに向かったのでリリィの訓練を私とスギヤさんとでやろうと考えていたのだが……。
「無理です無理です! エレアさんもスギヤさんもそもそも一対一でも勝てないのに二対一とか訓練にならないですよ!」
「ハンデを付けたとしても、リリィさんの訓練になるとは思えませんし、私もそれはさすがに止めておいた方が良いと思います」
リリィは精神的にやれる状態じゃないし、スギやさんにも却下されたのでそれは止める事にした。ついでにスギヤさんに何をさせれば良いかと聞いてみたら、基礎訓練で体力を付けるようにしてはとアドバイスを受けたのでそうする事にした。確かに訓練も一日にできる数が体力の少ないリリィには限られているので、この機会に体力をもっとつけてもらおうと思った。リリィにしても思う所があったのか特に不満をいう事なく、むしろ自分から大剣を担ぎながら走り込みますとストイックに基礎訓練をするやる気に満ち溢れていた。
――剣術とか戦闘経験よりも、そもそもの体力的な問題が一番の課題だったか。
自分はあまり基礎訓練をやらなくても十分訓練できていたので、そういった問題がある事に気付けなかった。これに関してはスギヤさんに感謝だ。ここに誘ってくれた事は、私にとってもリリィにとってもかなりプラスに働いている。今後もできる限りここにいよう。
――だとすると、正式な『ワンアタック』のメンバーになった方が良いのかな。
今後の事を思案していると、スギヤさんから質問された。
「エレアさんは今日はどうするつもりですか?」
リリィはすでにその場にいなくなっていて、だだっ広い訓練場には私とスギヤさんしかいなかった。
「もしよろしければ今日もお相手願いたいですが……」
もうかれこれ何度も訓練をしているのに、スギヤさんはあくまでも謙虚に相手の都合を考えた上でお願いする。他にまともな訓練相手がいないのはお互い様なのに、念のため確認を取る徹底した謙虚さに内心微笑ましくなる。
――この人は本当に礼儀正しいというか大人というか、必ず相手を立てる人だな。
「もちろんですよ。今日こそは勝ち越しますからね!」
私に何度も勝っていて、純粋な剣技なら間違いなく上のスギヤさんとの戦いは、私にとって超えるべき壁の一つなのは間違いないと確信している。だから訓練はできる限り多くやっておきたい。本選に勝ちあがるためにも。
キィンと金属と金属のぶつかり合う音が幾度も訓練場に鳴り響く。いつもならそれと同じく人の声も混じって喧騒に近い騒がしさのある訓練場だが、今は他に人がいないためいつも以上に耳に残る響きになっていた。
しかし私はそんな音に構っていられないほどに集中していた。
右に左にと足を使ってスギヤさんの態勢を崩そうと、何とか隙を付こうと駆け回る。しかし私が大きく動くのに対してスギヤさんは最小限の動きで私と対面できるように体の向きを変えるだけである。それは右手に剣を持ち、左手に盾を持っているから、私が攻めてきた時に盾で防ぎやすくするためである。
『盾』
魔力の中には物体を生み出す魔力もあり、その中で『盾』は最も有名な魔力の一つ。基本的に魔力剣だけで戦う剣闘大会において、非常に優秀な守りの装備を手に入れる事ができるからである。しかし鍛冶屋杯などの多人数でのバトルロワイヤル形式では勝ち残りにくい装備なのであまり人気はない。一人の攻撃を防いでも後ろから攻撃される可能性が高いからだ。
しかし目の前にいる熟練の剣闘士にとっては、それは鉄壁と言うに相応しい装備になっている。もちろん一対一だからという理由もあるが、それ以上に盾を軸にした戦い方が完成されているのだ。
敵の攻撃を防いで反撃する。その戦い方は言うまでもなく相手の攻撃が先にある。スギヤさんはこれまでに多くの剣闘士の戦い方を間近で見て、そして受け止めてきたのだろう。だから本当の意味で隙が見つからない。見つかる気すらしない。正に鉄壁と言うに相応しかった。
左右に振っても、飛び上がって立体的に攻めても、フェイントを入れても、必ず私とスギヤさんの間には体を覆えるほどの大きな盾が割って入ってくる。
――まだだ、こんなんじゃまだ遅い!
ゴウさんと戦った時のあのスピードを思い出して、私はまた一つ攻め方を変えてみる。牽制として何度もスギヤさんに攻撃を繰り出し、盾に防がれる。スギヤさんからの反撃が来ない程度のスピードの連撃を繰り出して、そこから徐々にスピードを高める。攻撃スピードを常に最速にするのではなく、変化を付けて戦う事にした。
「むっ!?」
しかし私のその戦い方もすでに知っているようで、私の攻撃の速さが変化したタイミングですぐに盾を使って反撃してきた。
「くっ!」
軽い牽制のつもりでしていた速めの攻撃に対して、完璧なタイミングで盾を押し出してきた。剣を弾き返されて不安定な態勢になった私にスギヤさんの剣が迫る。その日の訓練も、やっぱり私の負けで始まった。
リリィの訓練に付き合ってくれていた剣闘士たちもミーレーに向かったのでリリィの訓練を私とスギヤさんとでやろうと考えていたのだが……。
「無理です無理です! エレアさんもスギヤさんもそもそも一対一でも勝てないのに二対一とか訓練にならないですよ!」
「ハンデを付けたとしても、リリィさんの訓練になるとは思えませんし、私もそれはさすがに止めておいた方が良いと思います」
リリィは精神的にやれる状態じゃないし、スギやさんにも却下されたのでそれは止める事にした。ついでにスギヤさんに何をさせれば良いかと聞いてみたら、基礎訓練で体力を付けるようにしてはとアドバイスを受けたのでそうする事にした。確かに訓練も一日にできる数が体力の少ないリリィには限られているので、この機会に体力をもっとつけてもらおうと思った。リリィにしても思う所があったのか特に不満をいう事なく、むしろ自分から大剣を担ぎながら走り込みますとストイックに基礎訓練をするやる気に満ち溢れていた。
――剣術とか戦闘経験よりも、そもそもの体力的な問題が一番の課題だったか。
自分はあまり基礎訓練をやらなくても十分訓練できていたので、そういった問題がある事に気付けなかった。これに関してはスギヤさんに感謝だ。ここに誘ってくれた事は、私にとってもリリィにとってもかなりプラスに働いている。今後もできる限りここにいよう。
――だとすると、正式な『ワンアタック』のメンバーになった方が良いのかな。
今後の事を思案していると、スギヤさんから質問された。
「エレアさんは今日はどうするつもりですか?」
リリィはすでにその場にいなくなっていて、だだっ広い訓練場には私とスギヤさんしかいなかった。
「もしよろしければ今日もお相手願いたいですが……」
もうかれこれ何度も訓練をしているのに、スギヤさんはあくまでも謙虚に相手の都合を考えた上でお願いする。他にまともな訓練相手がいないのはお互い様なのに、念のため確認を取る徹底した謙虚さに内心微笑ましくなる。
――この人は本当に礼儀正しいというか大人というか、必ず相手を立てる人だな。
「もちろんですよ。今日こそは勝ち越しますからね!」
私に何度も勝っていて、純粋な剣技なら間違いなく上のスギヤさんとの戦いは、私にとって超えるべき壁の一つなのは間違いないと確信している。だから訓練はできる限り多くやっておきたい。本選に勝ちあがるためにも。
キィンと金属と金属のぶつかり合う音が幾度も訓練場に鳴り響く。いつもならそれと同じく人の声も混じって喧騒に近い騒がしさのある訓練場だが、今は他に人がいないためいつも以上に耳に残る響きになっていた。
しかし私はそんな音に構っていられないほどに集中していた。
右に左にと足を使ってスギヤさんの態勢を崩そうと、何とか隙を付こうと駆け回る。しかし私が大きく動くのに対してスギヤさんは最小限の動きで私と対面できるように体の向きを変えるだけである。それは右手に剣を持ち、左手に盾を持っているから、私が攻めてきた時に盾で防ぎやすくするためである。
『盾』
魔力の中には物体を生み出す魔力もあり、その中で『盾』は最も有名な魔力の一つ。基本的に魔力剣だけで戦う剣闘大会において、非常に優秀な守りの装備を手に入れる事ができるからである。しかし鍛冶屋杯などの多人数でのバトルロワイヤル形式では勝ち残りにくい装備なのであまり人気はない。一人の攻撃を防いでも後ろから攻撃される可能性が高いからだ。
しかし目の前にいる熟練の剣闘士にとっては、それは鉄壁と言うに相応しい装備になっている。もちろん一対一だからという理由もあるが、それ以上に盾を軸にした戦い方が完成されているのだ。
敵の攻撃を防いで反撃する。その戦い方は言うまでもなく相手の攻撃が先にある。スギヤさんはこれまでに多くの剣闘士の戦い方を間近で見て、そして受け止めてきたのだろう。だから本当の意味で隙が見つからない。見つかる気すらしない。正に鉄壁と言うに相応しかった。
左右に振っても、飛び上がって立体的に攻めても、フェイントを入れても、必ず私とスギヤさんの間には体を覆えるほどの大きな盾が割って入ってくる。
――まだだ、こんなんじゃまだ遅い!
ゴウさんと戦った時のあのスピードを思い出して、私はまた一つ攻め方を変えてみる。牽制として何度もスギヤさんに攻撃を繰り出し、盾に防がれる。スギヤさんからの反撃が来ない程度のスピードの連撃を繰り出して、そこから徐々にスピードを高める。攻撃スピードを常に最速にするのではなく、変化を付けて戦う事にした。
「むっ!?」
しかし私のその戦い方もすでに知っているようで、私の攻撃の速さが変化したタイミングですぐに盾を使って反撃してきた。
「くっ!」
軽い牽制のつもりでしていた速めの攻撃に対して、完璧なタイミングで盾を押し出してきた。剣を弾き返されて不安定な態勢になった私にスギヤさんの剣が迫る。その日の訓練も、やっぱり私の負けで始まった。
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