剣闘大会

tabuchimidori

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6戦目

和気藹々

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「……つまりこの『変化』を使う事で、相手の予測外の攻撃が複数できるようになるのです」
「一つの魔力で戦い方に幅ができるんですね。なるほど、私もそれを使おうかな」
「ぜひ使ってみてください。おそらくエレアさんの戦い方なら使い方は私よりもさらに広がると思いますよ」
「はぁ……、はぁ……、二人とも、よく喋りながら、走れますね」
 スギヤさんと仲良くなった翌日、私はこれ以上戦闘訓練をしても勝ち目がないと思ったのでリリィと同じ基礎訓練をする事に決めた。するとスギヤさんも暇を持て余す事になってしまうのでと一緒に走り込む事になった。
 だったらついでに魔力に関する話をいくつかしたいなと思ったので、こうして三人で並走しながら魔力についてスギヤさんから色々と話を聞いているのである。
 第一回、第二回と剣闘大会を戦い続けているだけあって魔力の話は次から次へと出てきたので、私としてはすでにどの魔力を今後使おうか悩ましくなるほどだった。
「リリィもちゃんと考えておくのよ。魔力はそれこそ数えきれないほど多いんだから、その知識をある程度は把握しておかないと」
「分かってますって。……でも、わざわざ走りながら、勉強しなくても、良くないですか?」
「ダメダメ。私たちは新参者なんだから、上にいる人たちに追いつくためにも人一倍頑張らないと」
 スギヤさんと手合わせしてそれを散々思い知った。過去二回の大会で戦ってきた経験の差はすぐに埋まる様な事は絶対にない。だからもっと努力しなければならないんだ。
「エレアさんの言う通りですよ。身体を動かしつつ頭も動かす。戦闘においても相手の戦い方を常に考えながら行動する必要があるので、この並行作業は普段から慣れておいた方が良いですよ」
 スギヤさんからの賛同もあって私の考えは間違ってなかったと少し嬉しくなる。リリィにも同じように強くなってもらいたいから、多少キツいと感じても諦めず頑張って欲しい。
「は、はーい……」
 リリィは肩で呼吸をしながらも何とか私たちに食らいつき、話もちゃんと聞いている。体力だけでなく知識も身に付くこの体制の走り込みは今後もちょくちょく取り入れるようにしよう。
 ――最終的にはリリィと話しながらあれこれイメトレできると良いけど、さすがにそれはまだかな。
 横で辛そうにしているリリィの背中を叩いて励ましつつ、スギヤさんとの魔力話の続きを進める事にする。
「『変化』の魔力込みのスギヤさんとも戦ってみたいけどなー。先に私が『変化』でどんな事できるか試してからの方が良いかしら?」
「私はいつでも構いませんよ。何ならこの後でも」
 スギヤさんが珍しく自信ありげな笑みを浮かべる。普段の微笑みのような笑いではなく、ニヤリとちょっと悪っぽい印象を伺える笑みで、よっぽど『変化』を使った戦い方に自信があるんだと分かる表情だった。
「いやいや。そういう事言うって事はそれだけ『盾』と『変化』のコンビネーションに自信があるって事ですよね。もうさすがにこれ以上は負けたくないです」
「負けて得る物もあると思いますよ」
 ――スギヤさんがそれを言うと説得力ありまくりですけど!
「負け前提で話してるじゃないですか!?」
 いくらためになると言っても、昨日まで散々負けて力不足を改めて痛感しているのに余計に力の差を感じるなんて絶対に嫌だ。
 そんな私とスギヤさんの話を聞いているだけだったリリィが、ぼそっと呟いた。
「……何か随分と、砕けた感じになってますね?」
 リリィが私たちの会話を聞いて不思議そうな顔をした。それを聞いてスギヤさんの方をチラ見すると一瞬目が合った。思わず笑いそうになったけど何とか堪えて、リリィに返答する。
「そうかしら? 別に変わらないですよね?」
「ええ、特に話し方を変えたつもりはないですよ?」
「いや二人の間の空気が何か穏やかな感じになってるので、良いなぁって思っただけです。お互いの事を認め合っている感じがして、良いなぁ……」
 まるで遠いところにいる人間を見るかのようにうっとりとした表情をリリィがしたので、リリィも私たちの輪に入れると励ます。
「ふふ、リリィも頑張れば同じようになれるわよ」
「さらっと言いますけど、それが難しいんですよ……。今だって、純粋な体力でも、まだまだ差がありますし」
「それもこれからです。めげずに日々精進していきましょう」
「はーい」
 私とスギヤさんでリリィを励ましていたが、さっきから少し気になっていた部分があったのでリリィに指摘する。
「リリィ、伸ばさないで『はい』って短く言うようにしましょう」
「うわ、エレアさんがお母さんと同じような事言った!」
「それってそんなにショック!?」
 リリィはまるで信じられないといったリアクションで大声を出したので、思わずこっちもビックリしてしまった。
「エレアさんまでお母さんみたいに厳しくなるのは嫌だなぁ……」
 厳しい母親から離れて暮らすようになって、伸び伸びと剣士としての訓練ができる今の状況にかなり満足してしまったのだろう。だからこそ嫌な物や嫌な人とはあまり一緒にいたくない、そういう単純な考えが出来上がりつつあるのかもと、リリィの言動を危険視した。
「そう? それじゃあ午後の訓練は厳しく二対一でやりましょうかね」
 『ワンアタック』のメンバーはリリィが子供という事でかなり手加減しているし、接する時もかなり優しくしているので、こうなったら私は厳しくした方が良いのだろうと思った。
「良いですね。リリィさんも基礎訓練ばかりで飽きてくる頃でしょうし、一回くらい気分転換にやりましょうか」
 スギヤさんも同じ意見なのか、単純にリリィの訓練スケジュールに気を使ってなのかは分からないが、またも私の意見に賛同してきた。
「息ピッタリじゃないですか! やっぱり昨日何かありましたよね!?」
 リリィは私とスギヤさんとの話の合わせ方に驚きを隠せない様子だった。
「ちょっと仲良く話した程度よ。それくらいの事で大声出さないの」
「エレアさんどうしますか? リリィさんとの訓練前に『変化』んの魔力を付与しておきますか?」
「あ、いいわね」
「二人して全力で私を倒そうとしないでください。十秒持たないですから!」
 午後の厳しい訓練模様を想像してリリィは顔を青ざめていたが、私とスギヤさんはすでにすっかりそのつもりになってしまったので、実際に『変化』をどう使うのが良いか話し合っていた。
「二人とも勘弁してくださーい!」
「嫌よ」「嫌です」
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