剣闘大会

tabuchimidori

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6戦目

エレアVSミスト:前編

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 決闘当日。朝起きてからりりィに事情を説明して、今日はいつもの訓練は後回しにして決闘を見届けるように伝えた。別に見なくてもとりあえず疲れが溜まっているみたいだったから午前中は休んでてもらおうかと思ったけど。
「エレアさんの戦いなら見逃せませんし、それが本気の戦いならなおさらです!」
 戦いの経緯はよく分かっていないけど、エレアさんが戦うなら止めないし見逃さないと強い意思を示したので、一緒に訓練場までやってきた。
「おはようございます、エレアさん、リリィさん」
 道場にはすでにスギヤさんとミストさんの二人がいたが、挨拶をしたのはスギヤさんだけで、ミストさんはすでにバトルフィールドの上に立ってこちらを見据えていた。
 ちなみに朝食はいつも通り食堂で食べたけど時間帯が違ったのか二人と今この場で会うのが今日初めてである。
「おはようございます」
 私とリリィはいつも通りスギヤさんに挨拶を返す。いつもなら今日の訓練内容を確認してから実際の訓練に入る所だけど、今回はスギヤさんから決闘のルール説明をしてもらった。
「鍛冶屋杯や本戦と同じルールです。バトルフィールド場外に出ればリングアウトとして負けになります。クリティカル判定に関しても同じように設定してあります。思う存分戦ってきたください」
「わざわざありがとうございます」
 訓練場に入ってからすでにこっちも怒りが沸々と湧き出してきていたので、それが表に出ないようにスギヤさんに返答してすぐにフィールドに向かう。
 ――ルール説明すらもスギヤさんに任せるとか、随分と自分勝手ね……!
 フィールドに上ると魔力場が私の魔力剣を感知して微かに音が鳴る。これでもう私もミストさんも剣闘士として戦う準備が、決闘の準備ができた事になる。
「待ち遠しかったわよ。あなたとはいつかこうやって戦うって決めてたから」
 私がマチカゼ道場に来てからはまだ一ヶ月程度。それでも彼女の中での私への怒りはかなり積み重なっているみたいだった。
 ――私もあなたには言いたい事が一杯あるのよ!
 第二回剣闘大会とは違う。明確に敵意を持って、ミストさんの神経を逆撫でする事にした。
「私は第一回剣闘大会でスロ三の魔力剣を手に入れて、そこには『力』と『火炎』を入れたわ」
 私が喋り始めたので訝しんだ表情をしているが、特に止める素振りは無かった。むしろ今何でその話をしているのか疑問だっただろう。
「もう一つ何を入れようかずっと悩んでたけど、ここに来て決めたの。スギヤさんに倣って『変化』を入れる事にしたの」
 その答えが私の魔力剣にあって、彼女の怒りは頂点に達した。
「あんたがその魔力を使うな!」
 ミストは腰から剣を抜くと同時に『岩石』の魔力で私に岩を飛ばしてきた。それを躱して私も戦闘態勢に入る。
「まだ開始の合図は……」
「これで良いんです! 止めないでください!」
 スギヤさんからすればあまりにもいきなりの開戦だったと思うけど、こうなると予想していた私としては不意打ちでも何でもないので止める必要はないと叫ぶ。
「その魔力を使う暇なんて与えない!」
 そんなやり取りが入っていないかのように暴れまわるミストは、フィールド上に次から次へと岩を落としたり地面から生やしたりして、次から次へと私に攻撃してくる。
 ――『岩石』で発動してる岩の数が多いから、多分『数』も入ってるね。だとすれば……。
 岩による攻撃をできるだけ余裕をもって回避していたが、一つだけ地面から生えてくる棘上の岩だけは、剣で受け止めてから別の場所に移動した。
「ちっ……」
 岩の裏からはっきりと聞こえてきた舌打ちは、間違いなくミストのだろう。岩石による攻撃で私の位置を誘導して、そこから自分でも剣で攻撃しようとしたのが失敗に終わったのを悔やんでいたのだ。
 ――バレてんのに、止める気はないのね。
 しかし一度失敗したからと言って岩石による岩の追加は留まる事を知らない。すでにフィールド上には大小様々な岩が転がっている状態で、外から見ている二人でも私とミストの姿を見る事は困難になっているほどだ。
 それでも私の足音で位置がバレているのか、的確に私を狙って岩を飛ばしてきている。
 ――それくらいの事ができるからって調子に乗らないで!
 相手の位置を予測するのはこっちにだってできる。岩の着地による音で紛れさせていても、着実にこっちに向かってきているのは私にも分かる。
 地面から岩が私の身体を貫こうと飛び出てきたので、私はそれを飛び上がって回避した。そしてそのまま目の前にあった岩をよじ登って、裏手にいるミストの頭上から攻撃を仕掛ける。
「なっ!」
 影ができた事でいち早く私の接近に気付いたミストは、何とか横に転がって私の攻撃を躱した。しかしこの距離にまで近づいてしまえば、もう私のペースだ。
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