剣闘大会

tabuchimidori

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7戦目

第四回鍛冶屋杯:前編

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 岩石や石の棘が次々にフィールド上の剣闘士に襲い掛かる。
 ――前よりも攻め方が上手くなってる。多分エレアがしごいたんだろうけど、二週間でここまで変わるのかな。まあ何かエレアとあったっぽいし、それで劇的に変わったのかも。
 前よりも動きが良くなったミストさんの戦い方を見て研究する。『ワンアタック』にエレアが加入した事には驚いたけど、多分その影響がミストさんにもあったのだろうと予想する。

「その程度では私の『盾』は越えられませんよ」
 次の戦闘ではスギヤさんが盾を使って大勢の剣闘士の攻撃を防ぎきって勝利していた。
 ――スギヤさんの戦い方は初めて見たけど、これは確かに強い。『盾』を使いこなしている人ってここまで盤石な戦い方ができるのか。
 『盾』の魔力に対する評価を改めながらスギヤさんの強さをしっかりと頭に刻みこむ。ちょっとした搦め手くらいではゴウさんに通用しなかったのと同じように、やはり一定以上のレベルでは純粋な強さが重要になりそうだと考える。

「これで終わりね!」
 エレアはいつもと全く変わらない安定した素早さを活かした戦い方で勝利に近づいていた。そこまでは確かにいつも通りだったけど、残り一人の剣闘士との一騎打ちになるといつもとは違った攻撃を仕掛けた。
 ――『分裂』!? いやでもあれは……。
 『分裂』によって二体に増えたエレアに何も手出しできずあっけなく残った剣闘士はクリティカルを受けて敗北していた。

「いやー、実戦で使うとちょっと勝手が違うわね」
 魔力剣を受け取ってこっちに戻ってきたエレアが笑顔で話しかけてきた。ここには僕とクヌーとスギヤさん以下『ワンアタック』のメンバーが集まっていた。
「別に無理に使わなくても良かったじゃない。まだ出してちょっとしか動かせない未熟も良いとこなんだから」
 ミストさんがエレアに返答していた。前に見た時は大分険悪ムードだったはずだけど、今は言葉こそ厳しいけど棘がある感じではなくなっていた。
「折角だしチラ見せしとくって言ったでしょ。別に負けたわけじゃないし」
「そうやって油断してると知らない剣闘士にあっさり負けるわよ」
 和気藹々ではないにしても、分け隔てなく会話できてる感じで、ほんの少しだけ、ほんのちょっとだけ羨ましいと思える部分もあった。
 ――エレアが他の人と仲良くなるのは、別に良い事じゃんか。
 そんな考えは表に微塵も出さず、未だにミストさんとあれこれ言っているエレアに注意を促す。
「言い合ってる場合か、リリィが次に出るんじゃなかったか?」
「あ、そうだわ。思い出させてくれてありがとう。ミストと無駄話している場合じゃなかった」
「無駄話じゃなかったでしょうに!」
 ミストさんが騒ぎ立てようとしたのをスギヤさんが抑えていた。バランスの良い三人組になってるなと感じた。
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