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7戦目
帰路
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第四回鍛冶屋杯が終わった翌日、街の出口には僕やエレアたち『ワンアタック』メンバーが集まっていた。
「それじゃあ次は第五回かしら?」
「僕の予定はそうだけど、そっちこそ来るんだろうね?」
「ダイジョブダイジョブ、次回からは『分身』の実践練習もしたいから参加するわよ」
「まあこっちとしてはライバルが少ない方が良いんだけど」
「素直じゃないんだからー。定期的に寂しいって言えばいいのに」
「耳腐ってるの? どこをどう取ったらそう聞こえるのさ」
「しっかし、もう一人の弟はどこで何してるのやらね?」
エレアと簡単に挨拶だけ済ましてカナイに戻るつもりだったが、話が二転三転して何だかんだそこそこの時間喋ってしまっている。僕としてもそろそろ切り上げようとしていたのだが、話がヒリューの事に移る。
第一回鍛冶屋杯で別れてからまだ一度もヒリューとは合流していない。二ヶ月程行方知らずと言う状態なので、さすがに僕も心配とまではいかないにしても何をしているのかは気になっていた。
――と言っても今ここにいない以上何してるかなんて想像できないんだけど。
エレアはまだ大体何を考えているのか分かるけど、ヒリューは分からない。僕としては何も考えていないから考えが読めないと本気で思っているから、行動を予想するなんて無駄な事だと切り捨てている。
「別に何してたって良いでしょ。野垂れ死になってる事だけは絶対にあり得ないし」
「あ、やっぱりそう思うわよね」
エレアが僕の答えに何故かニヤニヤしている。多分僕と同じ考えだったから嬉しくなったとかその辺りだと思う。
「ま、ヒリューならその内ひょこっと出てくるでしょう。その時に負けないようにしないとね」
「『分身』使っててエレアに下手くそって言うかもね」
「うわ、それは嫌だわ。絶対に負けられない。うん、やる気めっちゃ出てきたわ」
――ヒリューが他人の真似をするはずはないんだけど、まあこう言っておいた方が、やる気になるからな。
「それじゃまた一ヶ月後の鍛冶屋杯で会いましょ!」
こうしちゃいられない、早く帰って訓練に戻らないとと言わんばかりに駆け足で『ワンアタック』のメンバーの元に行って、そのまま街を出て行った。
「それじゃあ僕たちもカナイに戻りましょうか」
後ろで待たせていたクヌーとエリアスさんに声をかけて、僕たちも街を出る事にした。
「やっぱり寝込みを襲うくらいの肉食っぷりを見せるべきにゃのでは?」
「いやいやー、男の人ってそういう子はあんまり好きじゃないパターン多いんだよー」
クヌーが僕をどう落とそうかエリアスさんに相談している事が多く、会話の大半もそれ関係だった。僕は全く聞かないようにしつつ、道中ではどんな魔力を今後は調べていくか考える事にした。
「そう言えばー、もうカナイに帰っていいのー?」
ミーレーの街で次の街に行くための馬車を手配している最中、エリアスさんが僕に質問してきた。
「ミーレ―に来る時にー、雪山竜の山に行くとか言ってなかったけー」
「ああ、あの事ですか。ミーレーの街とかで有益な魔力の本が無かったら時間潰しに行こうと思ってただけです。クヌーのおかげもあって色々な本を読んで研究してるだけで時間無くなっちゃいましたから」
「おかげって言うにゃらご褒美が欲しいにゃ……」
「黙れ発情猫」
すっかりただの荷物になってしまった登山道具は、この旅で手に入った研究所や書物と一緒に僕の荷物に収まっている。ここに来るまでにクヌーに一度荷物を運んでもらっていたが、夜な夜な僕の荷物を漁って何かしようとしてたのでそれ以来は僕が自分で管理する事にした。全く油断も隙も無い。
「クヌーちゃんダメだよー。恋人同士でもプライベートな部分って言うのはちゃんと守らないとー」
「その意見には大賛成ですけど、そもそも恋人同士ではないです」
「恋人同士じゃないにゃらむしろプライベートに侵入して良いって事にゃ?」
「それだったら普通に警察なり自警団に通報するぞ」
「嘘にゃ、冗談にゃ、ジョークにゃ。……そんにゃに怒らないでにゃ」
――こいつ、本当に反省してるのか。
仕事を手伝ってもらってしかもエリアスさん以上に役立っている部分があるから少し甘やかしすぎたせいかと、これからのクヌーとの付き合い方を改める事にした。
「まあまあー、クヌーちゃんはこれからはちゃんとマナーを守る事ー。それはちゃんと分かったよねー」
「はいにゃ。これからはちゃんと許可を取ってから荷物を漁るにゃ!」
「その許可は一生出さないから安心しろ」
――やっぱり一回どこかで痛い目にでも合わせた方が良い気がする。
「それじゃあ次は第五回かしら?」
「僕の予定はそうだけど、そっちこそ来るんだろうね?」
「ダイジョブダイジョブ、次回からは『分身』の実践練習もしたいから参加するわよ」
「まあこっちとしてはライバルが少ない方が良いんだけど」
「素直じゃないんだからー。定期的に寂しいって言えばいいのに」
「耳腐ってるの? どこをどう取ったらそう聞こえるのさ」
「しっかし、もう一人の弟はどこで何してるのやらね?」
エレアと簡単に挨拶だけ済ましてカナイに戻るつもりだったが、話が二転三転して何だかんだそこそこの時間喋ってしまっている。僕としてもそろそろ切り上げようとしていたのだが、話がヒリューの事に移る。
第一回鍛冶屋杯で別れてからまだ一度もヒリューとは合流していない。二ヶ月程行方知らずと言う状態なので、さすがに僕も心配とまではいかないにしても何をしているのかは気になっていた。
――と言っても今ここにいない以上何してるかなんて想像できないんだけど。
エレアはまだ大体何を考えているのか分かるけど、ヒリューは分からない。僕としては何も考えていないから考えが読めないと本気で思っているから、行動を予想するなんて無駄な事だと切り捨てている。
「別に何してたって良いでしょ。野垂れ死になってる事だけは絶対にあり得ないし」
「あ、やっぱりそう思うわよね」
エレアが僕の答えに何故かニヤニヤしている。多分僕と同じ考えだったから嬉しくなったとかその辺りだと思う。
「ま、ヒリューならその内ひょこっと出てくるでしょう。その時に負けないようにしないとね」
「『分身』使っててエレアに下手くそって言うかもね」
「うわ、それは嫌だわ。絶対に負けられない。うん、やる気めっちゃ出てきたわ」
――ヒリューが他人の真似をするはずはないんだけど、まあこう言っておいた方が、やる気になるからな。
「それじゃまた一ヶ月後の鍛冶屋杯で会いましょ!」
こうしちゃいられない、早く帰って訓練に戻らないとと言わんばかりに駆け足で『ワンアタック』のメンバーの元に行って、そのまま街を出て行った。
「それじゃあ僕たちもカナイに戻りましょうか」
後ろで待たせていたクヌーとエリアスさんに声をかけて、僕たちも街を出る事にした。
「やっぱり寝込みを襲うくらいの肉食っぷりを見せるべきにゃのでは?」
「いやいやー、男の人ってそういう子はあんまり好きじゃないパターン多いんだよー」
クヌーが僕をどう落とそうかエリアスさんに相談している事が多く、会話の大半もそれ関係だった。僕は全く聞かないようにしつつ、道中ではどんな魔力を今後は調べていくか考える事にした。
「そう言えばー、もうカナイに帰っていいのー?」
ミーレーの街で次の街に行くための馬車を手配している最中、エリアスさんが僕に質問してきた。
「ミーレ―に来る時にー、雪山竜の山に行くとか言ってなかったけー」
「ああ、あの事ですか。ミーレーの街とかで有益な魔力の本が無かったら時間潰しに行こうと思ってただけです。クヌーのおかげもあって色々な本を読んで研究してるだけで時間無くなっちゃいましたから」
「おかげって言うにゃらご褒美が欲しいにゃ……」
「黙れ発情猫」
すっかりただの荷物になってしまった登山道具は、この旅で手に入った研究所や書物と一緒に僕の荷物に収まっている。ここに来るまでにクヌーに一度荷物を運んでもらっていたが、夜な夜な僕の荷物を漁って何かしようとしてたのでそれ以来は僕が自分で管理する事にした。全く油断も隙も無い。
「クヌーちゃんダメだよー。恋人同士でもプライベートな部分って言うのはちゃんと守らないとー」
「その意見には大賛成ですけど、そもそも恋人同士ではないです」
「恋人同士じゃないにゃらむしろプライベートに侵入して良いって事にゃ?」
「それだったら普通に警察なり自警団に通報するぞ」
「嘘にゃ、冗談にゃ、ジョークにゃ。……そんにゃに怒らないでにゃ」
――こいつ、本当に反省してるのか。
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「まあまあー、クヌーちゃんはこれからはちゃんとマナーを守る事ー。それはちゃんと分かったよねー」
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「その許可は一生出さないから安心しろ」
――やっぱり一回どこかで痛い目にでも合わせた方が良い気がする。
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