剣闘大会

tabuchimidori

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7戦目

クヌー加入

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「おう、おかえり。首尾は上々だったらしいな」
「ただいま戻りました」
「ただいまー。先パーイ、一人で寂しくなかったですかー?」
「寝言は寝てから言え」
 行きの時のような、不幸話の引き出しが増えそうな出来事も特になく、無事にカナイのハシモト研究所まで戻ってきた。魔力に関する本ばかり集める変な研究者という印象が強いハシモトさんだったけど、意外にちゃんと帰ってきた僕たちを出迎えてくれた。
 ――そういや生活習慣も意外と規則正しいんだよな。前にエリアスさんに寝坊助って怒ってたし。
 何故整理整頓だけができないのかちょっと疑問に思いつつ、今回の旅で新しく一人増えた事に話を移す。
「あ、こっちが手紙でも伝えておいたクヌーです」
 ほらちゃんと挨拶しなとクヌーを前に出す。人見知りはしないのか特に緊張している感じもなく、ズイッと前に出て朗らかに挨拶した。
「猫人族のクヌーにゃ! 猫を召喚して使役したり、野良猫と意思疎通できたり、後は『憑依』して人間の体の中に潜り込んで操る事もできるにゃ!」
「ほう、お前さんが噂のクヌーか。俺はハシモトだ。お前さんがセキヤの仕事を手伝っているのは聞いている。これからよろしくな」
 ハシモトさんはこれまた意外にも普通の対応をしてクヌーに手を差し伸べていた。クヌーはその手をじっと見るが、何をすればいいのか分からないといった顔をこっちに向けてきた。
「握手つって手を握り合うんだよ。これからよろしくって言ってんだろ?」
「ああ、そういう挨拶かにゃ! これからよろしくにゃ!」
 基本的に笑顔なクヌーだが握手の時はまた格別の笑顔になっていた。
 ――そういや元々人間の生活に憧れを持って盗み見ていたって言っていたな。握手もクヌーにとっては憧れの一つだったのかもれないのか。
 そんな事を考えていたら、ハシモトさんも何やら含みのある笑みを浮かべている事に気付いた。さっきのやたら友好的な態度と良い、何か裏があるのは間違いなさそうだ。
「ぶー。何で先パイはクヌーちゃんに対してそんなに優しいんですかー?」
 その態度が癪に障ったのか頬を膨らませてエリアスさんが質問する。
「『憑依』の魔力は結構レアなんだぞ。しかもまだ研究が完璧にはされていない魔力だ。セキヤには悪いけどしばらく俺の研究に借りるぞ」
 この人が嬉しそうにするなんて魔力関係だろうとは思ったけど、まさかいきなりクヌーを借りる宣言までするとは思わなかった。僕としてもこれからの予定があるので、それには反論した。
「ちょ、ちょっと待ってください。クヌーにはこれからみっちり勉強させるつもりだったんですよ」
「「「勉強?」」」
 その場にいる僕以外の全員が僕の方を向いて疑問を浮かべた。
「クヌーは猫人族で猫同様の機動力があります。猫を召喚したり近場の野良猫とも意思疎通できるため、街中の本屋を調べて回るのに非常に有力です」
 すでにその仕事の速さはミーレーで実証済みである。あの入り組んだ迷路のような街ですらクヌーにかかれば一日で自分の庭にできるのだから、どの街でどれだけ広かろうとも本屋などを探すのはたやすいはずだ。
「それはお前さんの手紙からも知っている。それと勉強がどう絡むんだ?」
 クヌーとエリアスさんは薄々勉強の意味に感づいているが、ハシモトさんだけは僕に質問してくる。
「クヌーは僕たちと会話はできますけど、読み書きができないんですよ。だから本屋に入ってどんな魔力の本があるかのチェックまではできないんです」
 ミーレーでは実際に僕が本屋まで足を運ぶ必要があった。しかし今後は僕はカナイで研究をする事も増えるし、剣闘士としての訓練の時間も作りたい。クヌーには各地に行って本を探す役割をそのまま任せたいのだ。そのために読みの勉強をさせようと思っていたのだ。
「鍛冶屋杯の開催場所に関しても毎回遠方ってわけじゃないですから、カナイにいる期間も剣闘大会全体で見ると長いです。だからその間にクヌーに手伝ってもらえれば良いなと思ってたんです」
 カナイに着いた後でクヌーに説明しようと思っていたので、いきなりではあるがとりあえず説明する機会がきて、まあ好都合だと思った。
 ハシモトさんにしっかりとクヌーの今後の予定を説明したら、ニヤッとさっきよりもさらに満面の笑みを浮かべた。
「安心しろ。そういう事なら俺の研究がむしろ役立つはずだ」
「「「?」」」
 今度はハシモトさん以外の三人が疑問を浮かべた。
 ――『憑依』とクヌーの勉強が一体どう関係するんだ?
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