新潟 独り酒

天龍大好き

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ガラス張りのBARでクラフトビール

ギロチン 燻製レバー カスラーのステーキ

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燻製レバーが届く頃にはすっかりビールは空になり、お通しのチキンは骨だけになっていた。次はどれにしようかなとメニューをめくってみるが、どれもおいしそうで、一度迷いだすと、どうも時間がかかる。メニューをめくりながらも届いたばかりの燻製レバーもかまってやる。表面の燻製された皮のようになった部分と内側のねちっとした触感、そして燻されて醸し出す香りのせいでぱくぱくと燻製レバーを爪楊枝で口に放り込んでいってしまう。合間にオリーブをはさみ口の中をリフレッシュさせる。いや、オリーブといえど、塩漬けされていてはどうにも喉が乾いてくる。やはり飲み物が必要だ。

 「すいません、ギロチン下さい。後このカスラーのステーキも」
 結局頼んだのはギロチンと言う名前のベルギービールだった。ハードコアからギロチン、なんだか地獄のミサでも始まりそうだ。ギロチンのボトルは下半分は白くボトルネックの辺りから赤く染まっていてラベルには大きな刃が描かれていた。今回も店員さんに注いでもらう。なんだか泡が多めだが、そういうビールらしい。白くたっぷりと佇む泡は研ぎ澄まされたギロチンの刃のように見えた。
 ハードコアに比べてあっさりした味でアルコール度が9%もあるとは思えない程飲みやすい。もう酔っていて何でも飲みやすくなっているのかも。
カスラーとやらが届くまでふわふわした視線で店内を見回す。入店したばかりの時よりは若干客は増えたか。カウンターの後ろの棚には色々な洋酒が並んでいる。そこから斜め右上に目線を向けるとアッ!と思った。
店の名前を象徴するキャラのフィギュアが置いてある。カウンターから斜め右上の棚に同じ漫画のフィギュアが何種類かあった。全然そんな要素がないと思ったらあんな所に謙虚に佇んでいるではないか。店内の雰囲気を壊さないようこっそりとした主張になんだかほっこりする。

「お待たせしましたカスラーのステーキです」
 届いたのはローストビーフのような見た目のミディアムレアに焼かれた豚肉だった。カスラーという響きがなんとなくおいしそうだったから頼んだが、見た目も十分に食欲をそそる。一口で食べれるように切り分けられたそれを早速口に運ぶとローストビーフと言うよりはミディアムレアのステーキ、カスラーのステーキと言うのだから当たり前か。だがこれが豚肉と言うのが驚きだ。しっかりした歯ごたえに牛に負けないうまみ。味付けが薄めだったので口の中にオリーブを足し、そこにクリーミーなレバーも加える。カスラー、オリーブ、レバー、ギロチン、オリーブ、ギロチン、カスラー、レバー、様々なコンビネーションで味を楽しんだ。
 フードがいよいよ無くなった所で会計を頼んだ。店員さんが会計の準備をしている間にそこに溜まったギロチンの残りを飲み干す。一服しようと思ったが、手際よく領収書が届いたので支払いの準備をする。思ったより金額は安く、すぐに会計は済んだ。
、、、それにしても安すぎる。
どうにも腑に落ちない僕はじっと領収書を見つめ店員さんを呼んだ。
「ねえ、これギロチンの分入ってないよ?大丈夫?」

 領収書には2杯目のビールの値段が入っていなかったのだ。一杯1000円もするのだから、付け忘れなんてしたら大変だと思うのだが。
ともかく自己申告したおかげでしっかりとその分の料金を払い店を後にする。
かっこつけたせいで財布の中身は余計に軽くなったが心も幾分か軽かったように思う。
今日はこの後、どこに行こうか。強めのクラフトビールは飲みやすい癖に、
しっかりと足元に届いていて、僕はふわふわとした足取りで、
新潟駅前を歩いて行くのだった。
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