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一章 信頼できるパートナー
信頼できるパートナー 1
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突然、前世の記憶が脳内に押し寄せたので、ぼくは取り乱してしまった。
あんなにひどかった頭痛がなくなっている。記憶が戻る予兆だったのかもしれない。
ぼくは「やれやれ」というように、額の冷や汗を手の甲で拭いながらベッドから下りた。
迅速に、生き残るための作戦を立てなければ。
そのためにも現状の確認をしよう。
ぼくは改めて部屋を見回した。
魔王は魔族のトップだけあって、モノトーンを基調とした部屋は豪奢だった。
床は白と黒の格子柄だ。おそらく、黒曜石と大理石なのではないか。
繊細なレリーフが施された黒いマントルピースの上には、大きな龍の彫刻が飾ってある。それはぼくが、魔王であるアーシェンが龍神族だからだろう。
龍神族は強大な魔力を持つ希少種で、そのなかでもアーシェンはずば抜けた才能を持つ。
だから何百年も魔王に君臨しているんだ。
魔族のヒエラルキーはものすごく単純で、強い者が上に行く。だから、ぼくに加えた四天王が、魔族のトップ五ということだ。
カツカツとヒールの音を響かせながら、ぼくは部屋を眺めて回り、姿見の前で足をとめた。
「おぉ、やっぱりイケメンだな」
頬に触れると、二十代前半くらいに見える鏡の中のイケメンも頬を押さえた。
艶っぽい三重と長い睫毛の奥に、宝石のようなサファイア色の瞳が光っている。白い肌は陶器のようで、造りものめいていた。耳の先はとがっている。
サラリとした前髪やサイドの黒髪は長めにカットされ、後ろ髪は腰近くまであった。
頭部には羊の先祖と言われるフロンのような、渦巻き状の大きな角が二本生えていた。その角は黒く、指先の爪も同じ色をしている。臀部からは、爬虫類のような尻尾も揺れていた。龍神だからね。
服装は、黒い燕尾服を変形させたようなスタイリッシュなスーツに、膝まである黒いロングブーツ。内側がワインレッドの黒いマントを羽織っている。
「そういえば魔王は、性別や種族を問わず魅了するほどの美貌だって説明されていたような」
これがぼくかあ、と思わずウットリとしてしまう。これではナルシストだ。
魔族はみんな容姿がいいんだっけ? と考えて、幹部たちの顔を思い出した。
そんなことはなかった。
獰猛な獣のような魔族もいたじゃないか。
ただ、四天王はみんな人型だし、容姿も整っていた。ゲームの主人公たち、つまり勇者パーティとライバル関係にあるため、見目麗しい設定にしたに違いない。
「足、長いなあ」
ヒールの高いブーツを履いているのを抜きにしても、身長は百七十センチ後半だろう。
やや中性的な顔つきだけど、長身なので女性には見えない。
前世のぼくは百六十センチちょっとしかなかったし、ガリガリだった。
「そう、前のぼくは……」
ぼくは左胸に両手を当てた。
生まれた時から心臓が弱くて、入退院を繰り返していた。学校なんて、数えるほどしか通えなかった。発作を起こすことを心配されて、外にもほとんど出られなかった。
だから友達は、本やゲームだったんだ。
そうやって大人しくしていたのに、結局ぼくは心不全で十八年の人生を終えた。
でも、あの頃のぼくは、いつ死んでもいいと思っていた。
だって、ぼくが生きている限り、両親に迷惑をかけてしまうから。お金も時間も、ぼくのためにたくさん使ってくれていた。
病院にいる時も、ナースコールを押したら看護師さんに申し訳ないと思って、いつも痛みを我慢していた。
ぼく自身、そんな生活に疲れていたんだ。
だから、いつもと違う胸の痛みに意識が遠のいた時、これで解放されると思った。
みんなも、ぼくも、ぼくという存在から解放されるんだ――。
そう思っていたのに。
魔王に転生するなんて!
あんなにひどかった頭痛がなくなっている。記憶が戻る予兆だったのかもしれない。
ぼくは「やれやれ」というように、額の冷や汗を手の甲で拭いながらベッドから下りた。
迅速に、生き残るための作戦を立てなければ。
そのためにも現状の確認をしよう。
ぼくは改めて部屋を見回した。
魔王は魔族のトップだけあって、モノトーンを基調とした部屋は豪奢だった。
床は白と黒の格子柄だ。おそらく、黒曜石と大理石なのではないか。
繊細なレリーフが施された黒いマントルピースの上には、大きな龍の彫刻が飾ってある。それはぼくが、魔王であるアーシェンが龍神族だからだろう。
龍神族は強大な魔力を持つ希少種で、そのなかでもアーシェンはずば抜けた才能を持つ。
だから何百年も魔王に君臨しているんだ。
魔族のヒエラルキーはものすごく単純で、強い者が上に行く。だから、ぼくに加えた四天王が、魔族のトップ五ということだ。
カツカツとヒールの音を響かせながら、ぼくは部屋を眺めて回り、姿見の前で足をとめた。
「おぉ、やっぱりイケメンだな」
頬に触れると、二十代前半くらいに見える鏡の中のイケメンも頬を押さえた。
艶っぽい三重と長い睫毛の奥に、宝石のようなサファイア色の瞳が光っている。白い肌は陶器のようで、造りものめいていた。耳の先はとがっている。
サラリとした前髪やサイドの黒髪は長めにカットされ、後ろ髪は腰近くまであった。
頭部には羊の先祖と言われるフロンのような、渦巻き状の大きな角が二本生えていた。その角は黒く、指先の爪も同じ色をしている。臀部からは、爬虫類のような尻尾も揺れていた。龍神だからね。
服装は、黒い燕尾服を変形させたようなスタイリッシュなスーツに、膝まである黒いロングブーツ。内側がワインレッドの黒いマントを羽織っている。
「そういえば魔王は、性別や種族を問わず魅了するほどの美貌だって説明されていたような」
これがぼくかあ、と思わずウットリとしてしまう。これではナルシストだ。
魔族はみんな容姿がいいんだっけ? と考えて、幹部たちの顔を思い出した。
そんなことはなかった。
獰猛な獣のような魔族もいたじゃないか。
ただ、四天王はみんな人型だし、容姿も整っていた。ゲームの主人公たち、つまり勇者パーティとライバル関係にあるため、見目麗しい設定にしたに違いない。
「足、長いなあ」
ヒールの高いブーツを履いているのを抜きにしても、身長は百七十センチ後半だろう。
やや中性的な顔つきだけど、長身なので女性には見えない。
前世のぼくは百六十センチちょっとしかなかったし、ガリガリだった。
「そう、前のぼくは……」
ぼくは左胸に両手を当てた。
生まれた時から心臓が弱くて、入退院を繰り返していた。学校なんて、数えるほどしか通えなかった。発作を起こすことを心配されて、外にもほとんど出られなかった。
だから友達は、本やゲームだったんだ。
そうやって大人しくしていたのに、結局ぼくは心不全で十八年の人生を終えた。
でも、あの頃のぼくは、いつ死んでもいいと思っていた。
だって、ぼくが生きている限り、両親に迷惑をかけてしまうから。お金も時間も、ぼくのためにたくさん使ってくれていた。
病院にいる時も、ナースコールを押したら看護師さんに申し訳ないと思って、いつも痛みを我慢していた。
ぼく自身、そんな生活に疲れていたんだ。
だから、いつもと違う胸の痛みに意識が遠のいた時、これで解放されると思った。
みんなも、ぼくも、ぼくという存在から解放されるんだ――。
そう思っていたのに。
魔王に転生するなんて!
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