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五章 マナの樹
マナの樹 5
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「実際、お前の涙がオレの肌に触れて、魔力が増幅した。まあ、またマナの樹に吸い取られるんだけど」
ザックが苦笑する。
(あっ!)
アレクサンドラは閃いた。
「私の力で、ザックの魔力が回復するのね?」
「そうだな」
「じゃ、ずっとキスしていれば、ザックは死なない?」
「……はあ?」
ザックは素っ頓狂な声を上げた。
「まあ、確かに、そうか?」
アレクサンドラは瞳を輝かせた。ザックを助ける糸口が見えた気がした。
「そんなこと、いつまで続けるんだよ。一生か。オレはここから抜けられないんだぞ」
「一生でもいいけど」
アレクサンドラは顔を赤らめた。
「マナの樹は、元気な頃は人を襲わなかったんでしょ? 増幅したザックの魔力をたくさん取りこんで元気になれば、ザックを解放してくれるんじゃないかな」
「そう上手くいくのか」
ザックは首をひねる。
「試してみなきゃ分らないわよ」
アレクサンドラは両手を伸ばして、少し高い位置にあるザックの頬を包んだ。ザックは完全にマナの樹に囚われて動けないので、アレクサンドラから口づけるしかない。
ザックは切れ長の目を閉じている。
(自分から口づけるの初めてだから、どうしていいのか分からない)
唇を近づけたはいいが、どの角度で触れたらいいのか迷ってしまう。ザックの吐息が唇に当たり、くすぐったく感じた。それはザックも同じだろう。そのまま、ああでもないこうでもないと悩んでいると、ザックが片目を開けた。
「オレ、焦らされてる?」
「えっ、違っ……!」
ドキドキしながら、アレクサンドラは思い切ってザックの薄い唇に、唇を寄せた。今朝されたキスを思い出して、小さな舌を差し入れてみる。ザックの歯が舌先に当たった。歯列を割って、更に奥に侵入する。アレクサンドラは懸命に舌先を動かすが、ザックの舌が見つからない。口づけの深さが足りないようだ。
「んっ……ん……」
アレクサンドラはザックの肩と頬に手を添えて、背伸びをした。
口づけをしたまま角度を変えて、できるだけ奥まで舌を伸ばす。ようやく柔らかいものに触れた。長時間囚われていたせいか、ザックの口内は乾いている。潤すように、アレクサンドラは丹念に舌を絡めた。
――しばらくして、アレクサンドラは一旦唇を離した。
(難しい……。これでいいのかな)
ザックを見ると、頬に赤みが差し、顔色が戻っていた。アレクサンドラはほっとして、ザックの顔をなでた。
ザックはニヤリと笑う。
「こんなに必死にキスされるのも珍しい。初々しい感じもアリか」
アレクサンドラはムッとした。こっちは恥ずかしさを押して、必死で慣れないキスをしているというのに。
「茶化すなら、もうしてあげない」
「悪かったって」
ザックは誘うような笑みを浮かべた。
「もっとくれよ、アレクサンドラ」
ドキリとする。
(もう、ずるいんだから)
アレクサンドラは背伸びをして、少し慣れた仕草でザックに口づけた。今度はすぐに、ザックの弾力のある舌が、アレクサンドラに侵入してくる。
「あっ……」
アレクサンドラは驚いて、身を引いてしまった。
「逃げるなよ。もっと深く」
ザックはアレクサンドラの薄桃色の唇をついばみながらねだった。
ザックが苦笑する。
(あっ!)
アレクサンドラは閃いた。
「私の力で、ザックの魔力が回復するのね?」
「そうだな」
「じゃ、ずっとキスしていれば、ザックは死なない?」
「……はあ?」
ザックは素っ頓狂な声を上げた。
「まあ、確かに、そうか?」
アレクサンドラは瞳を輝かせた。ザックを助ける糸口が見えた気がした。
「そんなこと、いつまで続けるんだよ。一生か。オレはここから抜けられないんだぞ」
「一生でもいいけど」
アレクサンドラは顔を赤らめた。
「マナの樹は、元気な頃は人を襲わなかったんでしょ? 増幅したザックの魔力をたくさん取りこんで元気になれば、ザックを解放してくれるんじゃないかな」
「そう上手くいくのか」
ザックは首をひねる。
「試してみなきゃ分らないわよ」
アレクサンドラは両手を伸ばして、少し高い位置にあるザックの頬を包んだ。ザックは完全にマナの樹に囚われて動けないので、アレクサンドラから口づけるしかない。
ザックは切れ長の目を閉じている。
(自分から口づけるの初めてだから、どうしていいのか分からない)
唇を近づけたはいいが、どの角度で触れたらいいのか迷ってしまう。ザックの吐息が唇に当たり、くすぐったく感じた。それはザックも同じだろう。そのまま、ああでもないこうでもないと悩んでいると、ザックが片目を開けた。
「オレ、焦らされてる?」
「えっ、違っ……!」
ドキドキしながら、アレクサンドラは思い切ってザックの薄い唇に、唇を寄せた。今朝されたキスを思い出して、小さな舌を差し入れてみる。ザックの歯が舌先に当たった。歯列を割って、更に奥に侵入する。アレクサンドラは懸命に舌先を動かすが、ザックの舌が見つからない。口づけの深さが足りないようだ。
「んっ……ん……」
アレクサンドラはザックの肩と頬に手を添えて、背伸びをした。
口づけをしたまま角度を変えて、できるだけ奥まで舌を伸ばす。ようやく柔らかいものに触れた。長時間囚われていたせいか、ザックの口内は乾いている。潤すように、アレクサンドラは丹念に舌を絡めた。
――しばらくして、アレクサンドラは一旦唇を離した。
(難しい……。これでいいのかな)
ザックを見ると、頬に赤みが差し、顔色が戻っていた。アレクサンドラはほっとして、ザックの顔をなでた。
ザックはニヤリと笑う。
「こんなに必死にキスされるのも珍しい。初々しい感じもアリか」
アレクサンドラはムッとした。こっちは恥ずかしさを押して、必死で慣れないキスをしているというのに。
「茶化すなら、もうしてあげない」
「悪かったって」
ザックは誘うような笑みを浮かべた。
「もっとくれよ、アレクサンドラ」
ドキリとする。
(もう、ずるいんだから)
アレクサンドラは背伸びをして、少し慣れた仕草でザックに口づけた。今度はすぐに、ザックの弾力のある舌が、アレクサンドラに侵入してくる。
「あっ……」
アレクサンドラは驚いて、身を引いてしまった。
「逃げるなよ。もっと深く」
ザックはアレクサンドラの薄桃色の唇をついばみながらねだった。
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