【完結】遺棄事件と見えないドア

じゅん

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遺棄事件と見えないドア8

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「警察が探しても見つからないのに、私たちで見つけられるはずがないよ」
「そこなんだよね」
 涼子はチーズケーキを口に運んだ。
「警察は、ちゃんと調査してるのかな」
 そこを疑うのか。
「やってるでしょ、さすがに。ニュースになったくらいだもん」
「でもさ、こんな田舎とはいえ、町の防犯カメラが全くないってことはないと思うの。Nシステムで犯人の足取りを辿ったなんてことも聞くでしょ。涼子が車とか目撃した時間とかを警察に報告しているのに、いまだに犯人が特定できないってことは、本気で探してないんじゃないかな」
「手を抜いてるってこと?」
「手抜きというより、優先順位が低いとかさ」
 涼子は私の言葉に苦笑してから、クッションに座り直した。
「私、調べたって言ったでしょ。動物の遺棄って、大した罪にならないのよ」
「あんなに犬を死なせてるのに?」
「そう。今の法律だと、隣りの家のガラスを割るのと、隣りの家の犬を殺すのは、同じ器物損壊罪なのよ」
「ええっ!」
 私は身を乗り出した。
「さすがに全く同じ処罰にはならないと思うけど。動物は物扱いだってことは、間違いないんだよ」
 涼子は紅茶で濡れた小さな唇を、不本意そうに窄めた。
「しかも、ただ死なせているだけじゃないよ。“悪徳ブリーダー”で調べたら、もう泣いていいのか、怒っていいのか」
 涼子はその場でスマートフォンを操作する。そして画像付きのページを私に見せた。
 汚いケージが、人の背丈よりも高いところまで積み上げられ、その中に何匹もの犬が押し込められている写真だった。
「糞尿もそのまま、怪我や病気になっても放置。まともな栄養は出産間際にしか与えられず、年に二回の発情期には無理矢理出産させる。すると栄養不足で歯や骨が溶ける。産めなくなったら餓死させる……」
 私はぞっとしながら、ページを要約して声に出した。
「酷いでしょ。美央が見たオバサン、まだブリーダーを続けてるはずだよ。廃業させて、犬たちを救出しようよ」
「でも、どうやって?」
 私が首をひねると、涼子はちょっと得意そうな表情になった。
「遺棄された犬は四十頭強だから、そこそこ規模が大きい繁殖業者だと予想されるって報道されていたでしょ。犬の死体の状態から、かなり劣悪な環境のようだから相当臭うと思うし、一度や二度は通報されてると思うんだよね」
「通報されたら、捕まるんじゃないの?」
「詳しくは知らないけど、簡単に捕まえられないから、悪徳ブリーダーがなかなか減らないんじゃないかな」
「理不尽!」
 私は憤った。
「わたしが言いたかったのはね、通報されていれば、保健所とかに記録が残ってるんじゃないかってこと。今日はもう時間外になるから、明日一緒に行こうよ。ただ、役所だからね、個人情報とかなんとかで、教えてくれないかもしれないけど」
「教えてくれなかったら?」
「動物愛護団体かなあ。その時考えよう」
「分かった」
私は肯いた。
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