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三章 無血の海賊王
無血の海賊王 10
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「エド、ロバートのことをどう思う?」
「どう、とはなんだ」
「罰せられるような人物かどうか」
沈黙が下りた。二人は姿勢を正し、軍人の顔つきになっている。
「少なくても私は、暗殺をしていい人物だとは思えない」
「ならば我々は捕まえるまでにして、そのあとは本国にゆだねればいい。ロバートは海賊だ。罪人だ。法の下に裁かねばならん」
「多くの人々の暮らしを豊かにした」
「酌量の材料になるかもしれんが、それも罪を犯した上でのことだ。ルール違反だ。少なくても俺やおまえが判断することではない」
アレクサンドラは立ち上がった。興奮していたが、声を抑える理性は残っている。
「彼は人を殺めてはいない」
「そうとは言い切れまい。私財を根こそぎ奪われた商人、責任を取らされ処分された軍人。職や財産を奪われ、死の遠因になっている可能性は否定できない」
アレクサンドラは冷静なエドワードの表情を見つめ、息を整えて、再びベッドに座った。
ロバートの陽気な笑顔やロバートを慕う仲間たちを思い浮かべて、ブルネットの髪に手を差し入れて強く掴んだ。
「……俺がやろうか」
「やめてっ」
アレクサンドラは鋭く拒否した。
「では、一度本国に戻って報告するか。十分な成果だ、海軍卿だって納得するさ。そして作戦を立て、適切な者をまた寄越せばいい」
「そして私たちはお役御免か」
帝国に戻り、そして自分はエドワードと結婚するのだろうか。
ならばきっと、二度と航海に出ることはない。海図は空白のまま。しかし、波風のない穏やかな生活が待っているはずだ。
悪くはない。いや、幸せな一生を送れるだろうとアレクサンドラは思う。エドワードは自分にはもったいないほどの人物だ。
しかし。
「……」
敵も味方も血を流さない、無血の海賊王、ロバート。
彼が的確にターゲットの位置がわかるのはなぜなのか。軍艦ばかり狙うのはなぜなのか。そして、彼は何者なのか。
まだわからないことだらけだ。
「もう少し様子を見させてほしい」
もっとロバートを知りたい。
アレクサンドラの心を支配するのは、そんな思いだった。
「今すぐおまえを連れ帰りたい。……しかし、それではおまえは納得しないのだろうな」
アレクサンドラはうなずいた。エドワードは諦めたように息をはく。
「……おまえの任務だ。好きにするといい」
表情を緩めたエドワードがアレクサンドラの頭をなでる。アレクサンドラは肩の力を抜いた。
「感謝する、エド」
「おまえからは早く別の言葉を聞きたいものだ」
苦笑したエドワードは、アレクサンドラの額にキスをした。そしてアレクサンドラになにか言いかけて、思いとどまったように唇を閉じる。
「先に寝ていろ、俺は一杯飲んでくる」
エドワードは耐えるように眉を寄せ、部屋を出ていった。
「どう、とはなんだ」
「罰せられるような人物かどうか」
沈黙が下りた。二人は姿勢を正し、軍人の顔つきになっている。
「少なくても私は、暗殺をしていい人物だとは思えない」
「ならば我々は捕まえるまでにして、そのあとは本国にゆだねればいい。ロバートは海賊だ。罪人だ。法の下に裁かねばならん」
「多くの人々の暮らしを豊かにした」
「酌量の材料になるかもしれんが、それも罪を犯した上でのことだ。ルール違反だ。少なくても俺やおまえが判断することではない」
アレクサンドラは立ち上がった。興奮していたが、声を抑える理性は残っている。
「彼は人を殺めてはいない」
「そうとは言い切れまい。私財を根こそぎ奪われた商人、責任を取らされ処分された軍人。職や財産を奪われ、死の遠因になっている可能性は否定できない」
アレクサンドラは冷静なエドワードの表情を見つめ、息を整えて、再びベッドに座った。
ロバートの陽気な笑顔やロバートを慕う仲間たちを思い浮かべて、ブルネットの髪に手を差し入れて強く掴んだ。
「……俺がやろうか」
「やめてっ」
アレクサンドラは鋭く拒否した。
「では、一度本国に戻って報告するか。十分な成果だ、海軍卿だって納得するさ。そして作戦を立て、適切な者をまた寄越せばいい」
「そして私たちはお役御免か」
帝国に戻り、そして自分はエドワードと結婚するのだろうか。
ならばきっと、二度と航海に出ることはない。海図は空白のまま。しかし、波風のない穏やかな生活が待っているはずだ。
悪くはない。いや、幸せな一生を送れるだろうとアレクサンドラは思う。エドワードは自分にはもったいないほどの人物だ。
しかし。
「……」
敵も味方も血を流さない、無血の海賊王、ロバート。
彼が的確にターゲットの位置がわかるのはなぜなのか。軍艦ばかり狙うのはなぜなのか。そして、彼は何者なのか。
まだわからないことだらけだ。
「もう少し様子を見させてほしい」
もっとロバートを知りたい。
アレクサンドラの心を支配するのは、そんな思いだった。
「今すぐおまえを連れ帰りたい。……しかし、それではおまえは納得しないのだろうな」
アレクサンドラはうなずいた。エドワードは諦めたように息をはく。
「……おまえの任務だ。好きにするといい」
表情を緩めたエドワードがアレクサンドラの頭をなでる。アレクサンドラは肩の力を抜いた。
「感謝する、エド」
「おまえからは早く別の言葉を聞きたいものだ」
苦笑したエドワードは、アレクサンドラの額にキスをした。そしてアレクサンドラになにか言いかけて、思いとどまったように唇を閉じる。
「先に寝ていろ、俺は一杯飲んでくる」
エドワードは耐えるように眉を寄せ、部屋を出ていった。
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