海賊王と麗人海軍~海洋恋愛浪漫譚~

じゅん

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三章 無血の海賊王

無血の海賊王 9

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港に戻ると戦利品の分配が始まった。分配を仕切るのは副船長のネイサンだ。船から降ろした貨幣、宝石、絹織物などを一か所に集めて、囲うように全員が車座になっている。
アレクサンドラが驚いたのが配分の割合で、船長と、航海士を兼ねる副船長が三倍と破格なのだ。砲術長や甲板長、船医は一・五倍で、こちらは順当だと思われた。
「配当の不満はでないの?」
 アレクサンドラは隣にいる巨漢のブッチャーに尋ねてみた。
 甲板長のブッチャーは初期メンバーではないが、ロバート海賊団に三年所属する古参で、様々な海賊団にいたことから知識も豊富だった。厳つい容姿なので一見とっつきにくいが、親切で話しやすい人柄だ。
「それはねえな。海に出たからと言って、必ず獲物が見つかるとは限らねえ。ひもじい思いで三カ月航海して収穫ゼロってこともある。海戦で負けるときもあれば、勝っても戦利品が殆どないことだってある。だが俺が知る限りロバートは、航海をすれば必ず無傷で、大量のお宝を持ち帰る。こんなありがたい船にいて、文句を言うやつがいるわけねえよ」
「俺たちが来た日に欠員を補充していたが、なぜそんなありがたい船から降りる奴がいるんだ」
 そう尋ねたのはエドワードだ。
「独立して海賊団を結成するやつもいる。が、だいたい、これだろ」
 ブッチャーは指で女性のサインを出した。
「船にゃ女を連れ込めねえからな。ある程度金が貯まったら足を洗って堅気になるやつが多いのよ。生きるために仕方がなく海賊になった奴らばかりだからな。海は生もの、いくらロバートの船だからって、嵐に巻き込まれて座礁するかもしれねえし、命の保証はどこにもねえのさ」
――なぜ、こんなに海賊がいると思う? これしか生業がないからだ。飢えないために始めた奴が殆どだよ。つまり、豊かになれば減っていく。
 アレクサンドラは、ロバートの言葉を思い出した。
「ブッチャーさんは結婚しても海賊をやめないけどね」
 ピエールがブッチャーの膝の間に入り、会話に参加してきた。
アレクサンドラは少し驚いた。海賊たちは独身だと勝手なイメージがあったのだ。
「ロバートの船は居心地がいいからな。それにかなり自由がきくし、商売として割りもいい。以前はこういう陶磁器や香辛料は、別の国に行って売りさばく手間があった」
 ブッチャーは配当として配られた陶磁器に手を置いた。
「だがロバートのおかげで街が賑わって、貿易商の方からこの港にやってくる。俺たちゃ配当を持って、換金すればいいだけさ」
 ブッチャーの視線の先には、分配が終わるのを待っている様子の商人たちがいた。少しでもいい品を得ようと、わざわざ船着き場にまで集まって来ているのだ。
「今回の船は武器の輸送をしていたみたいだね。沈んで引き上げられなかったものもあるから、これでも少ない方なんだよ」
 そう言ったのはピエールだ。
「商船の方が割りはいいが、ロバートは軍艦を狙うことが多い。まあ、今回の報酬だって地道に稼ごうと思えば一年以上かかる」
 アレクサンドラは、ブッチャーの言葉が引っかかった。
「なぜわざわざ、実りが少なく危険な軍艦を狙うのだろうか。商船を襲う方が簡単だろう」
「さあ、聞いたことねえよ。ロバートにもこだわりがあるんだろ。……さて行くか」
 分配が終わり、海賊たちは戦利品を手にそれぞれの目的地に向かった。ロバートが戦利品をどこに運ぶのか注目していたのだが、ネイサンや船医と共にフォーチュン号の船長室に戻った。そして身軽になると酒場に向かうのだった。航海から戻ればアジトに足を運ぶだろうと踏んでいたアレクサンドラたちの思惑は外れた。
 こうしてまた三班に分かれて、ローテーションで当番をする日々が始まった。

「こんな便利な港町があるんだ。よく考えたら、ここ以外の拠点なんてないんじゃないかな」
 宿屋に戻ったアレクサンドラは、ベッドに腰掛けて嘆いた。アジトは見つかりそうもない。
「そうかもしれないな」
 エドワードも向かいのベッドに腰を下ろして長い脚を組んだ。
「だとしたら、やることはひとつだ」
 エドワードの言葉にアレクサンドラは動きを止め、ゆっくりと顔を上げた。
「エド、ロバートのことをどう思う?」
「どう、とはなんだ」
「罰せられるような人物かどうか」
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