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五章 閉ざされた扉
閉ざされた扉 4
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ネイサンから説明を受けてから、操舵輪のある船尾甲板に向かう。舵輪は少し高い位置にあり、眺めがいいが潮風がダイレクトに当たる。舵輪の下に設置してある羅針盤と太陽の位置で、船の進んでいる方向を確認した。
風で髪を遊ばせながら、遠い地平線を見渡した。舵を切れば思うがままに船が進む。まるで海を独り占めしているようだ。アレクサンドラはずっとこの場に立っていたいと思った。
それから二日、ネイサンの代わりに操舵をつとめた。乗員の命を握るといっても過言ではない重要な役割をアレクサンドラがすることに不満を漏らす者もいたが、確かな腕前を見て、だんだん不平を言う者はいなくなった。
ネイサンが回復する三日間、アレクサンドラは立派に操舵手をつとめあげた。
それから一週間後の夜、ロバート海賊団は海賊島の港に戻ってきた。
商船から降りてきたエドワードは、人目もはばからずアレクサンドラを抱きしめた。
「ごめんエド、女だってばれて……」
「そんなことはどうでもいい。船底くぐりなんて無謀なことをして……。無事でよかった」
息が苦しくなるほど強く抱きしめられて、アレクサンドラは申し訳ない気持ちでいっぱいになった。どれだけ心配をかけたのだろうか。
「エド。伝えたいことがあるんだ」
身体を離し、アレクサンドラはエドワードの青い瞳を真っ直ぐに見つめた。声には決心が滲んでいる。
「……わかった。宿屋の部屋に行こう」
エドワードは唇を引き締めて、言葉少なく返事をした。
航海のない時に利用している宿屋の四階の部屋に二人はやってきた。シングルベッドが二つと丸テーブルがあるだけの簡素な狭い部屋だ。
「私は海賊団に残って、航海士になりたい」
ベッドに腰かけるなりアレクサンドラが率直に伝えると、エドワードはわずかに瞠目したあと、眉間にしわを寄せて眼光を強めた。
「……アレックス。自分がなにを言っているのかわかっているのか」
狭い部屋で、二人はお互いを威圧するように向き合っていた。
「おまえは祖国を裏切ると言っているんだぞ」
「私にはロバートを殺せない。むしろ守らねばならない人物だと確信している」
「俺がいない間に骨抜きにされたか。なにをされた」
「別に、なにも」
船底での口づけを思い出し、アレクサンドラの頬が微かに朱に染まった。
「とうとうロバートに惚れたのか」
隠しごとのできないエレクサンドラの表情が雄弁に語っていた。エドワードはアレクサンドラの両肩を掴み、勢いでベッドに押し倒した。
「やっ」
アレクサンドラはエドワードを突き放そうとした。しかしエドワードの逞しい身体は動かない。
「離してエド」
「……なぜ、俺じゃないんだ」
エドワードの端正な顔が苦しそうにゆがむ。アレクサンドラは顔をそらした。
「ごめん」
エドワードの気持ちは聞いていた。いつか結婚するかもしれないとも思っていた。
エドワードはずっと傍にいて、見守り、助けてくれた。大好きで大切な人。
しかし、アレクサンドラはロバートに出会ってしまったのだ。
共に航海をし、海図を作っていける人。
夢を共に追いかけられる人を。
風で髪を遊ばせながら、遠い地平線を見渡した。舵を切れば思うがままに船が進む。まるで海を独り占めしているようだ。アレクサンドラはずっとこの場に立っていたいと思った。
それから二日、ネイサンの代わりに操舵をつとめた。乗員の命を握るといっても過言ではない重要な役割をアレクサンドラがすることに不満を漏らす者もいたが、確かな腕前を見て、だんだん不平を言う者はいなくなった。
ネイサンが回復する三日間、アレクサンドラは立派に操舵手をつとめあげた。
それから一週間後の夜、ロバート海賊団は海賊島の港に戻ってきた。
商船から降りてきたエドワードは、人目もはばからずアレクサンドラを抱きしめた。
「ごめんエド、女だってばれて……」
「そんなことはどうでもいい。船底くぐりなんて無謀なことをして……。無事でよかった」
息が苦しくなるほど強く抱きしめられて、アレクサンドラは申し訳ない気持ちでいっぱいになった。どれだけ心配をかけたのだろうか。
「エド。伝えたいことがあるんだ」
身体を離し、アレクサンドラはエドワードの青い瞳を真っ直ぐに見つめた。声には決心が滲んでいる。
「……わかった。宿屋の部屋に行こう」
エドワードは唇を引き締めて、言葉少なく返事をした。
航海のない時に利用している宿屋の四階の部屋に二人はやってきた。シングルベッドが二つと丸テーブルがあるだけの簡素な狭い部屋だ。
「私は海賊団に残って、航海士になりたい」
ベッドに腰かけるなりアレクサンドラが率直に伝えると、エドワードはわずかに瞠目したあと、眉間にしわを寄せて眼光を強めた。
「……アレックス。自分がなにを言っているのかわかっているのか」
狭い部屋で、二人はお互いを威圧するように向き合っていた。
「おまえは祖国を裏切ると言っているんだぞ」
「私にはロバートを殺せない。むしろ守らねばならない人物だと確信している」
「俺がいない間に骨抜きにされたか。なにをされた」
「別に、なにも」
船底での口づけを思い出し、アレクサンドラの頬が微かに朱に染まった。
「とうとうロバートに惚れたのか」
隠しごとのできないエレクサンドラの表情が雄弁に語っていた。エドワードはアレクサンドラの両肩を掴み、勢いでベッドに押し倒した。
「やっ」
アレクサンドラはエドワードを突き放そうとした。しかしエドワードの逞しい身体は動かない。
「離してエド」
「……なぜ、俺じゃないんだ」
エドワードの端正な顔が苦しそうにゆがむ。アレクサンドラは顔をそらした。
「ごめん」
エドワードの気持ちは聞いていた。いつか結婚するかもしれないとも思っていた。
エドワードはずっと傍にいて、見守り、助けてくれた。大好きで大切な人。
しかし、アレクサンドラはロバートに出会ってしまったのだ。
共に航海をし、海図を作っていける人。
夢を共に追いかけられる人を。
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